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生命情報学 (9) 代謝ネットワーク. 阿久津 達也 京都大学 化学研究所 バイオインフォマティクスセンター. 本日の講義内容. 代謝ネットワーク ミカエリスメンテン式 代謝流束解析 階層型スケールフリーモデル. 代謝ネットワーク. 代謝. 生体内における 化学反応 物質代謝 :化合物(生体高分子を含む)の合成、分解、変換 エネルギー代謝 :エネルギーの出入りや変換 代謝経路の例 解糖系 :糖を分解してピルビン酸などを生成 TCA 回路 (クエン酸回路):ピルビン酸などから ATP や NADH を生成 カルビン回路 :光合成により糖を生成
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生命情報学 (9)代謝ネットワーク 阿久津 達也 京都大学 化学研究所 バイオインフォマティクスセンター
本日の講義内容 • 代謝ネットワーク • ミカエリスメンテン式 • 代謝流束解析 • 階層型スケールフリーモデル
代謝 • 生体内における化学反応 • 物質代謝:化合物(生体高分子を含む)の合成、分解、変換 • エネルギー代謝:エネルギーの出入りや変換 • 代謝経路の例 • 解糖系:糖を分解してピルビン酸などを生成 • TCA回路(クエン酸回路):ピルビン酸などからATPやNADHを生成 • カルビン回路:光合成により糖を生成 • 多くの代謝反応は酵素(≒タンパク質)により触媒される
化学反応の微分方程式による記述例 • 例:分子Aが1個と分子Bが1個が反応して、分子ABが1個できる • 分子Xの濃度を[X]とした時の、ABの濃度変化 • 平衡状態におけるAの全体量に対するABの比率 k1 A + B AB k2
ヒル式 • 分子Aが1個と分子Bがn個が反応して、分子A(nB)が1個できる • 平衡状態におけるA(nB)の比率 k1 A + nB A(nB) k2
ヒル式の様子 • K=10の場合 • [B]が増えるに従い1に近づく • n が大きいと、K の付近で急速に0から1へと変化 (⇒スイッチの役割)
ミカエリス・メンテン式 (1) • 基質をS、 酵素をE、 その複合体をES、さらに、ESから生成物Pができるとする k1 k3 E + S ES E + P k2 基質(S) 生成物(P) 活性部位 酵素(E) 酵素-基質複合体 (ES) 酵素(E)
ミカエリス・メンテン式 (2) k1 k3 E + S ES E + P k2
ミカエリス・メンテン式 (3) k1 k3 E + S ES E + P k2
ミカエリス・メンテン式 (4) (酵素反応の)特徴 • [S]が小さい時は、生成速度は ほぼ線形に増加 • [S]が大きくなると頭打ち
代謝流束解析(1) • 定常状態を対象 • 化合物の生成量と消費量のバランスを一次式で表現 v1 X1 v2 v6 v3 X2 X3 v4 v5 X4
代謝流束解析(2) v1 X1 v2 v6 v3 X2 X3 v4 v5 X4
代謝流束解析(3) • 解は一意に決まらない • しかし、v1, v6 を指定すれば一意に決定 ⇒外部状態(v1,v6)から、内部状態を推定可能 v1 X1 v2 v6 v3 X2 X3 v4 v5 X4
代謝流束解析(4) • v2, v3, v4, v5に制約がある場合に、X2の生成量を最大化したい ⇒ 線形計画問題 ⇒ 微生物工学などへの応用
基準モードと極値パスウェイ(1) • 代謝流量を基本的な流れの重ね合わせで表現 • 基準モード • 定常状態を維持する流れ • 極小数の反応で構成 • 極値パスウェイ • 他のモードの非負係数の線形結合で表わされない基準モードの集合 • 「どの酵素群を不活性化させれば、特定の化合物を合成不可能にできるか」やネットワークのロバスト性の解析に有用 v4 v1 v5 A B A B v3 v2 C C v6 代謝 ネットワーク 基準モード の例
基準モードと極値パスウェイ(2) A B M1 M2 A B • M1,M2,M3,M4はすべて基準モード • 極値パスウェイは M1, M2, M3 C C A B A B M3 M4 C C
基準モードの応用(1) B B Bext Bext E E Eext Eext C C Aext A Aext A D Dext D Dext B Bext B Bext E Eext E Eext C Aext A C Aext A D Dext D Dext B B Bext Bext E E Eext Eext C C Aext A Aext A D Dext D Dext
基準モードの応用(2) B Bext E Eext C Aext A • Eextを生成せずに、Dextのみを生成のは不可 • 一方、ある反応を不活性化することによりEextのみを生成可 D Dext B Bext B Bext E Eext E Eext C Aext A C Aext A D Dext D Dext B B Bext Bext E E Eext Eext C C Aext A Aext A D Dext D Dext
階層型スケールフリーネットワーク • 優先的選択法によるスケールフリーネットワーク • クラスター係数の平均値( )が小さい() • 実際の代謝ネットワーク • クラスター係数の平均値が大きい • 階層的な構造をしていると考えられる ⇒ クラスター係数が大きな階層的スケールフリーネットワークの構成法
階層型ネットワークの構成法 [Ravasz et al, Nature, 2002] • 再帰的、かつ、決定的(乱数を使わず)に構成 • フラクタル的 • L角形を使うと • クラスター係数 は定数オーダー
L+Mモデル • Barabasi のモデルの拡張 • 2より大きな任意の値にいくらでも近いγを持つネットワークを構成可能 (Barabasi モデルでは γ<2.58 ) (M=2) (L=2)
Barabasiらの階層モデルの解釈 • Barabasi らの階層スケールフリーモデル ⇒ L+Mモデルにおける M=1の場合に相当 L=3, M=1
まとめ • 代謝 • 生体内における化学反応 • ミカエリス・メンテン式 • 酵素反応による生成物の生成速度 • 代謝流束解析 • 基質と生成物のバランスを一次式で表現 • 基準モード、極値パスウェイ • 階層型スケールフリーネットワーク • クラスター係数が大きなスケールフリーネットワーク • 再帰的構成法 [参考文献:江口至洋著:細胞のシステム生物学、共立出版、2008. 田口精一編:生命システム工学、化学同人、2012]