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知の創発を目指した 学会活動の確立に向けて

知の創発を目指した 学会活動の確立に向けて. 情報コミュニケーション学会 第 1 回全国大会基調講演 2004 年 2 月 28 日 園田学園女子大学 30 周年記念館 明治大学法学部 阪井 和男 sakai@isc.meiji.ac.jp. Contents. 進化はヒトに何をもたらしたか? ヒトの進化 → 社会の構成 個人が社会を変えられるか? Yes !  → どんなときに? ブレークスルーはいかにもたらされるか? 問題解決 って? →  スキーマ の役割 組織文化はいかに創発されるか? 組織のスキーマ → 新文化の 創発

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知の創発を目指した 学会活動の確立に向けて

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  1. 知の創発を目指した学会活動の確立に向けて 情報コミュニケーション学会 第1回全国大会基調講演 2004年2月28日 園田学園女子大学30周年記念館 明治大学法学部 阪井 和男 sakai@isc.meiji.ac.jp

  2. Contents • 進化はヒトに何をもたらしたか? • ヒトの進化 → 社会の構成 • 個人が社会を変えられるか? • Yes! → どんなときに? • ブレークスルーはいかにもたらされるか? • 問題解決って? → スキーマの役割 • 組織文化はいかに創発されるか? • 組織のスキーマ → 新文化の創発 • ブレークスルーはマネジメントできるか? • 従来方法 → 新提案 • 創発的な学会活動のために • 参考文献 明治大学 阪井和男

  3. 1. 進化はヒトに何をもたらしたか? 1.1 人間の進化? • 生命の進化,脳の発生,爬虫類の進化 • 体温ホメオスタシス,哺乳類の進化 • 前脳の拡大と記憶,霊長類の進化,ヒトの進化 1.2 社会の進化 • 採集・狩猟生活,農耕生活,都市生活 1.3 社会の発達は何をもたらしたか? • 身体機能の拡大,脳機能の拡大 1.4 情動の進化的意味 • 家族の絆としての「愛情」「温かさ」 • 情動の生物学的機能 1.5 脳の進化的意味 • 飼い馴らしによる脳の縮小,脳への進化的圧力 明治大学 阪井和男

  4. 1.1 人間の進化 • 宇宙の誕生 • 150億年前:ビッグバンによる宇宙生成 • 生命の進化 • 46億年前:地球が生成 • 40億年前:原始生命が誕生  → 情報の意味=生きること • 35億年前:バクテリア誕生 • 栄養素・エネルギー源・毒素に対する高度に発達した感覚系 • 12億年前:動物と植物の共通の先祖が誕生 「地球の誕生と人間の歴史」(宇宙情報センター) http://spaceboy.nasda.go.jp/note/shikumi/j/shi04_j.html • 脳の発生? 明治大学 阪井和男

  5. 脳の発生 • 6億年前:哺乳類と昆虫の先祖が分岐 • 5億3000万年前:カンブリア紀の生物爆発 • 属の数が600を超える • 5億年前:脳の起源 • 4億7000万年前:最も原始的な脊椎動物=円口類(無顎類) • 中脳:視覚系 • 神経冠:顎,歯,頭蓋骨,末梢神経系へと進化 • 終脳:嗅覚系 • 匂いを使ったコミュニケーション e.g.フェロモン • 小脳:後脳の最上部から発生。眼の筋肉を綿密に調整 • ヘモグロビン:4重の重複で酸素の効率的な供給 • ミエリン:神経軸索を包む絶縁物質 • 跳躍伝導の効果によってエネルギー効率アップ • 混戦が起きない→神経網の高密度化 • 爬虫類の進化? 明治大学 阪井和男

  6. 爬虫類の進化 • 3億7000万年前:最初の両生類が水から陸へ • 光を通さない水からきらめく光の世界へ • めまぐるしい温度変化の世界へ • 3億年前:哺乳類と鳥類の先祖が分岐 • 最初の爬虫類が出現 • 体長約20cmの捕食動物,昆虫を獲物 • 陸へ産める卵→水辺から内陸への移動 • 革新的な脊椎動物で,適応拡散により分岐 • 単弓類:盤竜→獣弓類※ ※→大型草食動物→絶滅 ※→槽歯類→鳥類・恐竜 ※→キノドン類(犬歯類)→哺乳類 • 無弓類→カメ • 双弓類→爬虫類 (オールマン,2001年,pp. 20-21, pp. 57-59) • 体温ホメオスタシス? 明治大学 阪井和男

  7. 体温ホメオスタシス • 変温動物から恒温動物への進化 • 体温ホメオスタシス=体温恒常性 • 生物を外気温から守る緩衝材 • 非常にコストがかかる • 5~10倍のエネルギー:エネルギーの大半を体温維持に • 筋肉の活動:体を暖めたり冷やしたり • 体を丸めて寝る:体温を保持しやすい姿勢 • 子育てをする • 体外から食べ物(母乳)と温かさを与える • 乳幼児の体温ホメオスタシスを確保する • 呼吸系の進化 • 鼻甲介:口腔と鼻腔を隔てる薄い骨 • 窒息せず,食べ物を飲み込むことと呼吸を同時に • 横隔膜:胸腔と腹腔を隔てる筋肉 • 活発な呼吸 (オールマン,2001年,pp. 59-52) • 哺乳類の進化? 明治大学 阪井和男

  8. 哺乳類の進化 • 2億4800年前:シベリアの火山噴火による大絶滅 • 全動物種のうち,95%が絶滅 • 150km^3の玄武岩が流出 • 大噴火の噴煙で気球規模の寒冷化 • 2億2000年前:最初の真の哺乳類 • キノドン類(体重1kg)を祖先とし,夜行性できわめて活動的 • 体重30g弱,脳と聴覚系,歯は発達したが,視覚系は衰退 • 聴覚の発達 • 外有毛細胞の発生で10万ヘルツを超える周波数まで • マウスの赤ん坊は2万5000ヘルツで泣く • 爬虫類や鳥類は1万ヘルツまでしか聞こえない • 捕食者には聞き取れないコミュニケーション法を獲得 (オールマン,2001年,pp. 63-66) • 前脳の拡大と記憶? 明治大学 阪井和男

  9. 前脳の拡大と記憶 • 脳の新皮質の発生 • 前脳の拡大による学習と記憶 • 子育ての学習 • 親の子育てを子が見て学ぶ • 遺伝子に頼らずに情報伝達するシステムが確立 • 遊び • 前脳の発達に不可欠な行為 • 鳥類と哺乳類の子どもはしばしば遊びにふける • 遊びを通して世界を体験し,前脳ネットワークを訓練 (オールマン,2001年,pp. 73-74) • 温血のパラドックス • 短命:祖先のキノドン類より短い • 常に飢餓の危険にさらされていた • 成功までの長い待機 • 恐竜が絶滅するまでの数百万年間(6500万年前の大量絶滅まで) (オールマン,2001年,p. 75) • 霊長類の進化? 明治大学 阪井和男

  10. 霊長類の進化 • 7000万年前:ヒトを含む霊長類とその他の哺乳類が分岐 (オールマン,2001年,pp. 20-21) • 6500万年前:大量絶滅 • 大隕石(直径10km)の落下による地球規模の大寒波 • 5500万年前:初期霊長類が熱帯雨林で繁殖 • 体重数十グラムで,熱帯雨林の木々の枝先にしがみついて生活 • 視覚より嗅覚への依存度が高い (オールマン,2001年,p. 77) • 4000万年前:三原色を感知可能に • 網膜の錐体色素の遺伝子に重複発生 • 顔の表情を使った感情伝達システムが発達 • 嗅覚によるコミュニケーションは衰退 (オールマン,2001年,pp. 77-78) • ヒトの進化? 明治大学 阪井和男

  11. ヒトの進化 • 1500万年前:アフリカに、様々な種類の類人猿 • 600万年前:新しい方向へ進化、ヒトの祖先 • 200万年前(第1期脳拡大)ヒトの脳が飛躍的に増大 • 100~50万年前:調理や暖をとるため火を利用(24%拡大) • 70万年前(第2期脳拡大)寒冷地にもヒトが移住 • 30万年前:ヒトの発話が発達←舌下神経管の拡大 • 14万年前:新人(現人類)の起源 • 14万年前のアフリカの一女性(DNA鑑定) • 細胞中のミトコンドリアのDNAを分析すると特定の人物の母系をさかのぼることができる • 新人の誕生 http://www.kahaku.go.jp/special/past/japanese/ipix/1/1-07.html • 1.2 社会の進化? 明治大学 阪井和男

  12. 1.2 社会の進化 • 進化論的な意味 • 生存の優位性を確保するため • 採集・狩猟生活? • →拡大家族 • 農耕生活 • →農業社会 • 都市生活 • →工業社会 明治大学 阪井和男

  13. 採集・狩猟生活(1) • 採集生活 • 数千万年前:食糧確保は身近にある木の実を採集 • 狩猟生活 • オスがチームを組んで狩猟 • 13万5千年前:オオカミとの出会い (オールマン,2001年,pp. 124-127) • イヌとの拡大家族を構成:アフリカからアジアへ渡り出会う • 他集団と争う上で極めて有利に • ヒトの食料獲得を助ける • イヌの鋭い嗅覚と聴覚が,ヒトの感覚力を補完 • ヒトは子犬に食べ物を運んでくれる群れの仲間 • イヌの出産回数:1回/年→2回/年へ • 採集・狩猟生活(2)? 明治大学 阪井和男

  14. 採集・狩猟生活(2) • 狩猟生活 • オオカミとヒトとの共通点 • 頻繁な移住 • 協力して狩りをする捕食者 • 声を利用したコミュニケーション • 拡大家族 • オスメスともに子どもの世話をする • 哺乳類ではきわめて珍しい社会構造 • 5万年前:新人が世界中に拡散 • 世界中へひろがっていった新人 http://www.kahaku.go.jp/special/past/japanese/ipix/1/1-12.html • 新人の世界進出 http://www.kahaku.go.jp/special/past/japanese/ipix/1/1-14.html • 農耕生活? 明治大学 阪井和男

  15. 農耕生活 • 農耕生活→農業社会 • 1万年前 • 農耕生活により定住 • 約8000年前 • ヒツジに突然変異→羊毛をまとう • ヒトが環境変化から身を守る新たな手法を入手 • 牧畜 • イヌが群れの移動を支配 • ヒツジが肉の供給源に (オールマン,2001年,p. 127) • 都市国家? 明治大学 阪井和男

  16. 都市国家 • 紀元前3500年:シュメール人による都市国家 • 紀元前3世紀:ローマ時代 • インフラ:道路 • 10メートルの幅と1メートル以上の深さ • 幹線8万キロ,支線までで15万キロ • 500年間かけて敷設 (塩野七生,2001年,p. 23) 古代ローマ(augustus)http://www.augustus.to/ • 中世国家? 明治大学 阪井和男

  17. 中世国家 • 15世紀末~16世紀初:大航海時代 「大航海時代」(金岡新) http://www.geocities.jp/timeway/kougi-54.html ポルトガル,スペイン,オランダ,イギリス • 1492年 • コロンブスによるアメリカ大陸再発見(スペイン) • 1498年 • ヴァスコ=ダ=ガマによるインド航路の発見(ポルトガル) • インフラ:船舶建造と航海技術 • 近代国家? 明治大学 阪井和男

  18. 近代国家 • 18世紀後半:産業革命(イギリス) • インフラ:科学と技術の融合 • 19世紀:近代主権国家の成立 • インフラ:鉄道と電気通信 • 19世紀後半:東アジア唯一の主権国家「日本」 • 現代の都市生活 • 高度に発達した交通網・情報通信網 • 多種多様な商品と販売網 • テレビを初めとするマスメディアの発展 • 1.3 社会の発達は何をもたらしたのか? 明治大学 阪井和男

  19. 1.3 社会の発達は何をもたらしたか? • 人類の歴史 • 技術や文化の向上を通じて,生死に直接関わる危機を排除しようとする歴史 (遠藤利彦,1996年,p. 117) • 豊かな物質生活! • ものがあふれている • 豊かな感情生活? • 人口が集中した都会の生活環境 • 閉塞感・孤立感・無力感などなど • なぜ? • 社会から提供される身体機能と脳機能とのアンバランス!? • 身体機能の拡大? 明治大学 阪井和男

  20. 身体機能の拡大 • 身体機能の拡大 • 足:歩行  → 電車・バス・エスカレータ・エレベータ • 手:運搬  → 宅配便・郵便 • 耳:娯楽  → CD・MD • 口:食料  → 店舗・コンビニ • 目耳:娯楽 → テレビ・映画 • 口耳:会話 → 電話・携帯電話・補聴器・マイク • 脳機能の拡大? 明治大学 阪井和男

  21. 脳機能の拡大 • 脳機能の拡大 • 記憶 → 本・CD・DVD・録音機・写真・ビデオカメラ • 文字情報からマルチメディア情報まで膨大なツールがある • 思考 → コンピュータ • 定型処理的な作業なら,OKだが,準備が大変 • 非定型処理的な作業は,使いこなす人なら何とか • まだまだ,思考のツールというほど使いやすくはない • 情動 → 娯楽・ヒーリング・熱帯魚 • 都市生活は自然環境から遠ざかっている • 日常の中で,安らぎと満足,温かさを得ることに努力が必要 • 「情動」と「思考」が置いてけぼりに! • 1.4 情動の進化的意味? 明治大学 阪井和男

  22. 1.4 情動の進化的意味 • 情動(emotion) • 「環境への適応をかけた生き残りを高度に保障する合理的な機能システム」(遠藤利彦,1996年,p. v) • 起源の異なる三種の脳 • 反射脳:爬虫類から受け継いだR複合体 • 情動脳:加藤哺乳類から受け継いだ大脳辺縁系 • 「摂食,逃走,闘争,性交などを,反射よりもはるかに柔軟で確実に遂行させるシステム」(遠藤利彦,1996年,p. 20) • 固定的で反射的な行動パターンと完全無欠の合理性との間を埋める生き残りシステム(ジョンソン=レアードとオートレイ,1992年) • 理性脳;高等哺乳類,霊長類以降に飛躍的に進化した大脳新皮質 (遠藤利彦,1996年,pp. 20-21) • 家族の絆としての「愛情」「温かさ」? 明治大学 阪井和男

  23. 家族の絆としての「愛情」「温かさ」 • ヒトの種で独自の進化 • オスとメスとの排他的関係を長期間安定化(マクドナルド,1992年,(遠藤利彦,1996年,pp. 25-28)) • 脳ホルモン:オキシトシンとアルギニン・バソプレッシン • 乳房からのミルクの分泌促進 • 出産時の子宮収縮 • 母親と乳飲み子の絆を確立 • 性交時のオルガズム • 夫婦間の強い愛着 (オールマン,2001年,p. 123) • 情動の生物学的機能? 明治大学 阪井和男

  24. 情動の生物学的機能 「切羽詰ったときの応急措置システム」(遠藤利彦,1996年,pp. 24, 31-35) • 内的情感の側面 いてもたってもいられない状態におき,何らかの行為に強く駆り立てる。 • 「果実」→「スズメバチ」→「恐れ」→「とっさに逃げる」 • 何を優先すべきかを自動的に判断させ,注意をとっさに移し変える。 • 神経生理学的な側面 ある行為を起こすために必要になる最適な身体状態を瞬時に整える。 • 「全身がかっと熱くなる」「心拍が速くなる」「青ざめる」「鳥肌が立つ」 • 表出的な側面 個体間の重要な情報伝達,コミュニケーションを進行させる。 • 怒りや威嚇の姿勢 • 警告を発し,無用な闘争を回避 • 悲しみ • 重要なものを失ったことを知らせ,保護や慰撫を引き出す • 1.5 脳の進化的意味? 明治大学 阪井和男

  25. 1.5 脳の進化的意味 • 環境の変化に対処 • 消化管に入るものを管理する → 口の近くに脳がある • 脳は消化器官を犠牲にして大きくなる • 動物の消費エネルギーは体重で決まる • 脳のエネルギーが増加すると消化器官をリストラ • どこにでもあるが消化しにくいものより,希少だが栄養に富む食料を得る能力を発達 • 社会の複雑化と脳 • 脳重と集団規模:相関なし • 新皮質の割合と集団規模:相関あり • 神経生理学的な変化による性格形成の可能性 • ヒト上科特有のプロモーター配列の発見 • セロトニン輸送体の発現を調整 (オールマン,2001年,pp. 106-107) • 飼い馴らしによる脳の縮小? 明治大学 阪井和男

  26. 飼い馴らしによる脳の縮小 • イヌの脳 • オオカミ > イヌ → 2/3 • 家畜の脳 • 近縁の野生種 > 家畜 • ヨーロッパヤマネコ > イエネコ • 網膜神経線維が40%少ない • 飼い馴らし→アポトーシス(プログラム細胞死) • ヒトの脳 • 初期ホモサピエンス > 現代のヒト • 過去3万5千年で,1450g → 1300g(1割減) • 文化のあらゆる面で急速に発達 • 物質界に対する支配力は増した • 環境の変化に対する大きな緩衝材の役割 → 自分たち自身を飼い慣らした!(オールマン,2001年,p. 127) • 表:脳の拡大? 明治大学 阪井和男

  27. 表:脳の拡大 明治大学 阪井和男

  28. 図:脳重の推移 明治大学 阪井和男

  29. 図:脳重と体重の相関 農耕・定住 世界中に移住 オオカミと出会う 現代人 新人の起源(イブ) 発話が発達 気候の大変動期* *10年ほどの間に,過去6500万年のうち最も寒くなった。 原始的な石器を作る 火の使用 • 脳への進化的圧力? 明治大学 阪井和男

  30. 脳への進化的圧力 • 200万年前:第1期脳拡大 • 原始的な石器を作る • 50万年前:第2期脳拡大(40%増) • 気候の大変動期 • 10年ほどの間に、過去6500万年のうち最も寒くなった。 • 3万5千年前:脳縮小(10%減) • 旧石器時代→農耕による定住→現代 • 100年前:体重増加に転じる • 産業革命→工業社会:社会の複雑化 • 過去3万5千年間、脳重は体重と正の相関あり • ふたたび脳拡大の可能性あり • 脳を使い倒している? • 脳の進化を伴うか? • 新皮質の割合増加? • 新セロトニン機能の発現で性格形成に変化? • 2. 個人が社会を変えられるか? 明治大学 阪井和男

  31. 2. 個人が社会を変えられるか? • 個人の働きかけ<<社会の活動 • 個人は「ゆらぎ」でしかないのか? • 個人は組織にとって機械の歯車か? • 社会の成熟とともに組織と社会制度が確立されてきた。 • 個人の無力感が増大 • 機械モデルとしての組織デザイン • 最適設計の神話:組織は目的のために最適に設計すべしという神話 • 資源の有効利用:組織の資源をもっとも有効に用いることができる • 創造的な破壊:組織の創造的な壊し方がわからない • 最適設計した組織の作り直しには,組織の存亡がかかっている • 事故・失敗の多発→情報化のために隠蔽できない時代へ • 機械モデルから生物モデルへ • 生物進化から学べること • 多様性を取り込むメカニズム • 機能の重複→独自の機能へ:脊椎,遺伝子 • 2.1 個人の働きかけは社会に影響するか? 明治大学 阪井和男

  32. 2.1 個人の働きかけは社会に影響するか? • 個人=ゆらぎ • 個人の社会への働きかけは,社会の中に起こったゆらぎみたいなもの。 • ゆらぎ→社会? • ゆらぎが社会全体のシステムに影響を与えるほど成長することはあるか? あなたは次のどれが当てはまると思うか? • No • ゆらぎはシステム全体に拡大しない。 →社会は安定である。 • それなり • ゆらぎはゆらぎのままであり,システム全体から見ると埃みたいなもの。 →社会は無安定である。 • Yes • ゆらぎはシステム全体に拡大する。 →社会は不安定である。 • 安定性のシミュレーション? 明治大学 阪井和男

  33. 車の運転によるアナロジー • 安定な車: • ハンドルがブレても,車の進路がブレない。 • ブレないときの進路に,引き込まれる。 • ゆらぎが減衰 • 無安定な車: • ハンドルがブレると,車の進路がちょっとだけずれる。 • ブレないときの進路と,そう違わない。 • ゆらぎはゆらぎのまま • 不安定な車: • ハンドルがブレると,その向きに車の進路が大きくブレる。 • ブレないときの進路とは,大きく変わってしまう。 • ゆらぎは全体に及ぶ • 一目でわかる安定性? 明治大学 阪井和男

  34. 一目でわかる安定性 ハンドルのブレで進路がブレるか? • 車の運転モデル • 進路←車(ハンドル) • 人(進路)→ハンドル ひとつながりにして • 進路←車(人(進路)) まとめて • 進路←自動車(進路) • ブレの有無で進路がどうなるか? • 進路?←自動車(進路+ブレ) • 安定な自動車の進路? 明治大学 阪井和男

  35. 3%のブレ 進路はブレない ゆらぎは減衰 無安定な自動車の進路? 安定な自動車の進路 明治大学 阪井和男

  36. 3%のブレ 進路は少しブレる ゆらぎはそのまま 不安定な自動車の進路? 無安定な自動車の進路 明治大学 阪井和男

  37. 運転が非常に困難 3%のブレ 進路は大きくブレる ゆらぎが全体に及ぶ 無安定ってなに? 不安定な自動車の進路 明治大学 阪井和男

  38. 無安定ってなに? • ブレはやっぱりブレってこと • 進路?←自動車(進路+ブレ) • 荒っぽいけど、簡単にしたい! • 進路?=自動車(進路)+自動車(ブレ) • つまり • 自動車(進路+ブレ)=自動車(進路)+自動車(ブレ) • どの自動車にも成り立つか? • 安定な自動車 × • 無安定な自動車 ○ • 不安定な自動車 × • 要素に還元できるということ? 明治大学 阪井和男

  39. 要素に還元できるということ • デカルトの要素還元論 全体は部分の和からなるとすると,全体の効果は,部分の効果を別々に調べ,あとで和をとったものに等しい。 • 全体とは, • 全体=部分ア+部分イ • 全体の効果は, • 効果(全体)=効果(部分ア+部分イ) • それぞれの効果の和だから, • 効果(部分ア+部分イ)=効果(部分ア)+効果(部分イ) • 結局, • 効果(全体)=効果(部分ア)+効果(部分イ) • 要素還元論の神話? 明治大学 阪井和男

  40. 要素還元論の神話 複雑なものは,部分に分け別々に調べてから,まとめればよい。 • 生物に使えるか? • 生物=骨格+筋肉+内臓+神経+血管+・・・ • ばらばらにしたら,死んでしまう → 使えない! • 生物の特徴 • 要素がそれぞれ密接に関係している! • 生物の活動は,相手があれば,引き込みや反発がある。 • 要素還元論は無生物の世界の話! • 引き込みも反発もない世界 • 相手がいても関係ない • 高校までに習った数学が使える世界 • 無安定の便利な道具がいっぱいある! • 線形代数 • ゆらぎが生かせる世界とは? 明治大学 阪井和男

  41. ゆらぎが生かせる世界とは • 安定性のまとめ • 安定 • 生物によく見られる引き込み現象 • 無安定 • 厳密に計算できるため予測可能 • 不安定 • 発散か崩壊,カオスかのいずれか • 社会のゆらぎ もし「社会に不安定性がある」ならば, それを生かすとゆらぎでも全体に影響 • 個人でも社会を変えることができる! • 個人の努力が報われる可能性  → 「勤勉」に努力しましょ! • ブレークスルーのレベル? 明治大学 阪井和男

  42. ブレークスルーのレベル • 人間(ミクロ)のブレークスルー • 発見,創造 • 認識と行動の変化 • 人間の思考(問題解決,意思決定)がベース • スキーマ=人間の思考の枠組 • 組織(メゾ)のブレークスルー • 戦略の創造,組織文化の変容 • 組織の行動様式の変化 • 組織は「人間の活動」の集合 • 社会(マクロ)のブレークスルー • パラダイム転換 • 社会における認識の変化 • パラダイム=科学史上一時代の支配的なものの見方の枠組 • トーマス・クーン:「科学革命の構造」(みすず書房) • 3. ブレークスルーはいかにもたらされるか? 明治大学 阪井和男

  43. 3.1 問題解決のプロセス 「問題発生」 問題が発生する 「問題定義」 問題を捉え認識する 「問題解決」 問題解決手法を発掘・発見・開発して適用する 戦略の決定 「問題発生」→「問題定義」 戦術の決定 「問題定義」→「問題解決」 三つのパス [F] 放置する 見過ごし・やり過ごし [A] やってはみた 未解決・不十分な解決 [B] 勤勉に工夫 見事な解決→飛躍的発展 ブレークスルー 図:問題解決のプロセス? 3. ブレークスルーはいかにもたらされるか? 明治大学 阪井和男

  44. 三つのパスを,よく用いられる順に並べよ。 問題解決の三つのパス? 図:問題解決のプロセス 明治大学 阪井和男

  45. 問題解決の三つのパス • パスF:日常的に発生 「問題」→「放置する」→「見過ごし・やり過ごし」→問題が消えてしまった • やり過ごし比率=53.4% • 日本企業延べ51社7903人のホワイトカラー(1991~1999年)「指示が出されても,やり過ごしているうちに,立ち消えになることがある」 • 人材の育成と選別の機能 • 上司の指示を黙々とこなすだけではよい上司になれない • 優先順位をつけると不可避的に発生 • 組織の機能的破綻を回避する機能 (高橋伸夫,2000年,p. 22) • パスA:よくあるケース 「問題」→「やってはみた」→「未解決・不十分な解決」→不満が残る • パスB:ブレークスルーにいたる珍しいケース 「問題」→「勤勉に工夫」→「見事な解決」→飛躍的な発展 • ブレークスルー・パスの探索? 明治大学 阪井和男

  46. ブレークスルー・パスの探索 • 必須条件 • 「戦略」と「戦術」の両方の意思決定に成功 • もし「パスA」で行き詰まったら? • 後方探索:逆に戻る • アンラーニングして戻り, • 新しく問題を捉えなおし, • 新戦略を決定しなおす。 • 前方探索:ひたすら前へ • 思考の発散・収束モデルを応用し, • 複数の多様な戦略を熟慮し煮詰めて, • 新戦略を発見する。 • 後方探索の問題点? 明治大学 阪井和男

  47. 後方探索の問題点 • アンラーニングができるか? スキーマを消し去るのは不可能! • 「問題定義」は問題の捉え方=認識の仕方 • 認知枠組みとしての「スキーマ」による無意識的なもの • 脳の生理的変化による記憶の機能と対応 • どの戦略を選べばよいかわからない! あなたが決めよ。でも,迷ってしまう! • 合理的意思決定者が仮定されている • 戦略は非合理的に決定されたり • 選択の余地なく偶然決まることが多い。 • 英国病時代のコンサルティング・ミス • 前方探索の問題点? 明治大学 阪井和男

  48. 前方探索の問題点 • 衆知を集めて考え抜けるか? 考え抜くのはつらくて疲れる! • 工夫し考え抜く作業は,前頭前野を使い倒すため,猛烈にくたびれる。 • 飛び移るべき新パスは本当にあるのか? 複数の多様な戦略がなければ大変! • 工夫し考え抜いても,必ずしも新しいパスに飛び移れるとは限らない。 • 他のスキーマに飛び移れる条件がわからない。 • 前方探索の利点 • おのずと決まる。迷うな! • 前方探索のイメージ? 明治大学 阪井和男

  49. 思考の発散・収束モデルとの類似性 (印南一路,2002年,第11章,p. 302) 3.2 自動装置としてのスキーマ? 前方探索のイメージ 明治大学 阪井和男

  50. 3.2 自動装置としてのスキーマ • 認識・理解・思考するためには • 枠組(スキーマ)が必要! • 人間はスキーマで自動的に考えている ということは・・・ • スキーマがなければ,理解できない? 実験してみよう! • 次の文を読んでください. →スキーマとテキスト理解 明治大学 阪井和男

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