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主観的幸福度と緑被率の関係. 南山大学 鶴見 哲也研究会. 問題意識. 既存概念 幸福度には GDP が強く 関連している ◎ 国民の幸せ ◎ 国の豊かさ 測りきれないのではないか?. 我々の考え 緑が増えることにより個人の幸福度は高まる !! 幸福度 緑被率 支払意思額を算出 緑を重視 緑を重視しない. But. 高. 低. 現状分析. GDP の欠点 公害や地球温暖化 反映されない しかし・・・ 途上国だけでなく先進国も経済優先. 最近の動向. 国連持続可能な 開発 会議. 現状分析.
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主観的幸福度と緑被率の関係 南山大学 鶴見哲也研究会
問題意識 • 既存概念 幸福度にはGDPが強く 関連している ◎国民の幸せ ◎国の豊かさ 測りきれないのではないか? • 我々の考え 緑が増えることにより個人の幸福度は高まる!! 幸福度緑被率 支払意思額を算出 緑を重視 緑を重視しない But 高 低
現状分析 • GDPの欠点 公害や地球温暖化 反映されない しかし・・・ 途上国だけでなく先進国も経済優先 最近の動向 国連持続可能な開発会議
現状分析 • 森林の機能 ★地球環境保全 ★土砂災害防止機能森林を守る必要がある! ★レクリエーション機能 現在、森林の価値は過小評価されている さらに非市場財は無視されがち ◎外部費用の内部化が重要 But
幸福研究の信頼性 幸福研究の弱点 ・かなり新しい研究領域である ・幸福度は主観的なアンケートの回答から得るため、 回答者が偽りの回答,控えめな回答,過大な回答をする可能性が否めない 統計的手法により、正確さを欠く回答をある程度取り除く 正確さを欠く回答とは? ・同じ質問に対する回答がその時々で大きく変わる ・質問の順序やその場の一時的な気分に影響された回答 たとえば、頭痛のするときや失恋のあとなどは幸福度を低く評価する可能性がある
*正確さを欠く回答を取り除くために 個人属性 年齢、性別、結婚、健康度等 性格を表す指標 時間割引率(せっかち),危険回避度(心配性),競争心 加えて、 過去5年間に経験した衝撃的な出来事の回数 以上の回答を得て それぞれが幸福度に及ぼす影響を配慮して分析 さらに… これらの回答を省くことで、より信憑性の高い分析を目指している ・あまりに他の回答者とかけ離れた回答 ・現実味のない回答の数値
政策立案において重要なのは 幸福の自己評価が完全かどうか 人々の選好、意見、ニーズを測る最善の可能な手段として 正確かどうか さらに 妥当と思われる一連の政策案の中で 限りある資金をどのように配分するのが最善か考える際… ある政策が他よりも大きな満足を生む傾向があることを示す幸福研究は 政策の優先順位を決める上でも大変有益である
先行研究 • 主観的幸福度の経済学分野での先駆的研究 Easterlin(1974) 「幸福のパラドックス」 所得水準と主観的幸福度の間に必ずしも相関 関係ないとする考え
主観的幸福度に関して所得以外の要因を検証している研究主観的幸福度に関して所得以外の要因を検証している研究 ①Tella et al(2001) 失業率が幸福度を下げることを示した ②Blanchflower and Oswald(2004) 男性の方が女性より幸福度が低く、年齢については 加齢に伴い、幸福度は逆U字型の傾向があることを 示した
③Peiro(2006) 健康不安について統計的に有意に幸福度を低下さ せることを示した ④筒井(2009) 加齢とともに幸福度は低下、未婚者あるいは配偶者 と死別した人は、結婚している人よりも幸福度が低い ことを示した
主観的幸福度と大気汚染の関係性を検証した先行研究主観的幸福度と大気汚染の関係性を検証した先行研究 ①Welsch(2002, 2006) 環境汚染について検証を行った最初の研究。2002年 の研究では、1990年代前半の54カ国の環境汚染データと各国の平均の主観的幸福度との関係を示した 2006年の研究では、汚染別データを用いて分析を行い、NO2と鉛が統計的に有意に幸福度を低下させることを示した
本稿の位置づけ 緑地がストレスや健康によい影響を与えるという研究 Lafortezza et al (2009) Gidlof-Gunnarsson and Ohstrom (2007) 高柳(2008) 緑が人々に癒しの効果を与える可能性!
人々の暮らしの状況 • 交通手段 快適な生活を • 利用可能なお店 送るためには重要! • 緑の一部である公園 「森林だけではなく公園などの身近な存在も緑として定義し、この緑と人々との関係性を基に、幸福であふれた 社会を目標とする!」 政策提言
Ambrey and Fleming (2011) 回帰分析を用いて、幸福度と「居住地と公園との距離」との関係を示した 本稿では…! ①居住地域と緑までの距離 ②緑への愛着度 緑の金銭価値を行った ③緑の希少性
本稿の位置づけのまとめ ①幸福度に緑化率がどのように影響しているかを回帰に より分析した ②緑に対する人々の支払意思額を算出した ※支払意思額が高いほど、緑に重きを置いており、 低いほど緑に対してそれほど重きを置いていない
分析 • アンケート調査を行いLSAを用いて分析する ◎LSAとは Life Satisfaction Approach LSAはこれらの問題を回避できると言われている。 <具体的には> 所得と非市場財それぞれの限界効用を算出し、その代替率を計算することで、非市場財の金銭価値を算出するものである
先行研究に基づく指標 ①所得 ②失業 ③年齢 ④性別 ⑤子どもの有無 ⑥健康不安 ⑦時間割引率 ⑧競争心 ⑨危険回避度 ⑩利他性
本研究の独自指標 ・地理情報システム(GIS)を用いて独自に計算を行った居住地の緑被率 ・GISでは把握しきれない緑の量(主観的な量) ・居住地での緑とのふれあい経験量 ・過去の緑とふれあい経験量 ・現在の居住地の緑に対する愛着の度合い ・緑一般に対する愛着の度合い ・森林の機能に関する知識量 ・人口密度 ・緑の質
モデル式(1) <予想される各パラメーターの符号>
主観的幸福度関数 (ⅰ) SWB = f (x, y, θ’z) 被説明変数説明変数 x:環境状態 y:所得 θ’z: x,y以外の要因と設定する
ΔSWB = 0と置いて微分すると (ⅱ) MWTP= (Δf/Δx)/(Δf/Δy) 限界支払意思額 ⇒1単位環境が変化したことに対する支払意思額 Δ主観的幸福度 ――――――――― Δ環境状態 Δ所得 Δ環境状態 = Δ主観的幸福度 Δ所得
MWTP= (Δf/Δx)/(Δf/Δy) x (環境状態)と y(所得)が同じレベルで変化したときの 幸福度を分析して価値を評価する 例 環境状態 が 1% 悪化 ⇒ 幸福度 1% down 所 得 が 1% 減少 ⇒ 幸福度 0.5% down 環境状態 1%= 所得2% 幸福感 環境状態が1%悪化すると 所得2%分の価値を失う! 26
都市・農山村連携モデル *横浜モデル 山梨県 都市 (企業) 人,資金 情報 道志村 森林整備 CSR活動 *連携までの流れ 平成16年 「友好交流協定」 締結 平成20年7月 「地球温暖化に関する三者合同研究会」 設立 経済 都市部 農山村地域 道志村 人的資源 技術 森林資源 森林整備 観光 スポーツ 交流 環境 県境を越えた事業展開や交流人口拡大による地域活性化
「どうし森づくり基金」 創設 集まった基金で ・民有林の森林整備を実施 ・「どうし森づくり事業」を開始 ⇒森林所有者、支援企業等、役場で「森林整備協定」を締結 森林整備・保全活動を行う 活動例 ・横浜市の市民ボランティアによる間伐作業 ・小中学生による森林整備活動 「道志・森づくりネットワーク」を設立 ⇒都市住民と道志村をつなぐ様々な活動を支援 • 都市と地域との機能的な • 横連携によるモデル
政策提言の方向性 緑の増加に対する幸福度の上昇は地方より都市の弾力性が高い 同じ面積の緑でも、都市の緑の方がより価値や希少性がある 注意 緑被率と幸福度の関係は逆U字型 緑被率38%程度までは緑被率の増大が幸福度を高め、 それ以上の緑被率では幸福度を低下させてしまう 人々の幸福度を高めるためには ある程度まで緑化を促進 その緑の質を維持、あるいは向上させる さらに緑に対する愛着を高めていく
政策提言 • 既存の政策 横浜市の都市農山村連携事業の普及を提案する。 横浜市・山梨県道志村・山梨県の連携事業 【概要】 三者が連携し森林整備・環境教育などを実施 低炭素社会を目指す
横浜モデル + 分析の結果を踏まえ 【幸福度上げるには】 ・環境教育 ・間伐の推進 ・都市の緑化(公園、植樹帯、街路樹)が必要!!
政策提言 都市と地方の 相乗効果が さらに得られる *提案モデル 県 都市 (企業) 人,資金 情報,モノ 村 森林整備(間伐) CSR活動 苗育成 緑化 ・地方で苗を育成し、その苗を都市に植える ・緑に対する愛着を高められる活動計画の提案
地方 幸福な社会を目指すために有益な手段 ~緑の質,緑に対する愛着を高める~ 地方 ・間伐を定期的に実施(緑の質の向上) ・地方に住む人々が間伐に参加することで、 緑に対する愛着を高める 都市(企業) ・人材を派遣 ・資金面で援助 都市 ~緑化促進,緑の質の向上~ 都市 ・地方で育成した苗を都市の植樹帯に植える ・質の高い植樹帯を増やす 地方 ・植物の苗を育成 (緑に対する愛着を高める) 地方と都市の両方の緑の価値を高めていく 質が高く愛着のある緑が増えると幸福度は高まる ※緑が多ければ多いほど幸福になるわけではない点に注意
財源確保 財源の確保には住民の賛同が必要 分析で得られた支払意思額=賛同の指標 緑の質,緑への愛着を高める政策をすすめることで 緑に対する支払意思額は増大 *森林環境税 現状 森林環境税はどの自治体でも不十分な水準 少額の森林環境税を財源として「緑の質を高める」 「緑への愛着を高める」事業に重点的に割り当てる 将来 より適切な額の森林環境税を徴収することが可能
*効果的な利用方法 各自治体の森林環境税を自治体の枠を超えて共有 森林環境税 ハード事業に使う 「森林整備そのものに使う」 ソフト事業に限って使う 「森林の公益的機能の啓蒙・教育・ 広報活動に限って使う」 ※この方法は現在多くの自治体で導入または検討が進んでいる 都市と地方が協力 互いに緑の質や愛着を高めていく試みを進展 限られた予算でも幸福度を高められる
課題と展望 • 政策を実施するための財源=税金 • 支払意思額に対する説得力を増すため 国民の理解を得る必要 幸福度研究に対する理解を高める必要
*現状 幸福度という分野の話題は国民に浸透しているとは言えない *今後 幸福度を拠り所にした議論を行うためには… →幸福度指標の有用性や信頼性といった 幸福度についての知識を広めていかなければならない • 幸福度研究を発展・普及させていく • 必要がある
*連携モデルの問題点 ・ 横浜市は道志村の三分の一の私有林を管理 ・ NPOのインストラクターと共に比較的道に近い場所で 間伐を実施していること ・ 費用は全て横浜市側が負担していること *現在の実施状況 山の奥地ではボランティア団体が間伐を実施するのが難しく未だ間伐のされていない箇所も少なくない • 間伐を担う技術者集団を • 確実に育成する必要がある
おわりに *本稿の貢献 緑の質や量によって 幸福度が変化することが実証されたこと *我々が提言した政策によって… 少しでも暮らしの質が高まり 「幸福にあふれた日本」が実現できるよう 期待していきたい
参考文献 • 佐藤正弘(2012)「到来するグリーンエコノミー~世界が本気に なり始めたポストGDP」『日経エコロジー』155号 • 高柳和江(2008)「都市空間における緑陰の効果-生理的、心理的、 身体的析-」『日本補完代替医療学会誌』5(2) • 藤田香(2011)「リオ+20への提出文書出そろう」『日経エコロジー』151号 • 毎日新聞朝刊『リオ+20:会議の評価と今後の課題を聞く』(2012.07.02) • 林野庁HP『森林の有する多面的機能』http://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/tamenteki/con_1.html (2012.08.08) • Bruno S. Frey, Simon Luechinger, and AloisStutzer (2009) “The Life Satisfaction Approach to Environmental Valuation” IZA Discussion Paper No. 4478 • Christopher L. Ambrey1 and Christopher M. Fleming (2012) “Public greenspace and life satisfaction in urban Australia”