RIBF における不安定核反応実験のための 高効率中性子検出器の開発

1. RIBFにおける不安定核反応実験のための 高効率中性子検出器の開発 東工大　理工　中村研究室 田中佳奈　中村隆司　佐藤義輝　小林信之 日本物理学会 2008年秋季大会　実験核物理領域

2. For the future RIBF エネルギーE[MeV/n] 従来 RIKEN 不安定核ビームの質量数A RIBFにおける不安定核ビームの高エネルギー化・大強度化 中性子検出器NEBULA （開発・建設中、2008~2011年） @理化学研究所 SRC fRC E/A=350MeV BigRIPS IRC エネルギーE[MeV/n] 従来の施設 新施設RIBF (RIBeam Factory) 2007年完成 A＜50 E~100MeV/n A＜238 , E~350MeV/n 世界最大強度1013個/s

3. Pn Pn 14Be(2+) PBe 12Be+2n Ex S2n 14Be(0+) 例：14Beの非弾性散乱[1] 励起・崩壊 n 14Be(2+) n 14Be(0+) n 12Be 12Be 不安定核 ビーム 12Be n n n 放出粒子 （中性子など） を検出 ref.[1] T.Sugimoto et al. Phys.Lett.B 654,160(2007) ‘The first 2+ state of 14Be’ 12C target 不安定核ビームを用いた実験 中性子ドリップライン近傍の原子核の非束縛準位の特定：不変質量法 放出粒子の運動量Pの測定→非束縛準位のエネルギーExの特定

4. [cm] 1m 実験装置のアップグレード RIBFで計画されている実験装置 高エネルギーの放出粒子を 高効率で検出する検出器 中性子検出器 NEBULA 従来の施設での実験装置 中性子 （30～100MeV） 中性子 （100～350MeV） n n 核 荷電粒子 や陽子 検出効率 （20%→70%） アクセプタンス （鉛直方向±5°） 質量分解能の向上 （質量数20→100） target 1m n 不安定核ビーム (~350MeV/n) 核 不安定核ビーム (~100MeV/n) n 高エネルギー化

5. 中性子検出器NEBULA (NEutron-detection system for Breakup of Unstable-nuclei with Large Acceptance) ・Vetoカウンタと複数面の中性子検出器 ・各面プラスチックシンチレータ（12W×180H×10Dcm3）×30本 と両読みのフォトマル ・中性子の位置と飛行時間（TOF）を測定 特徴・目標値 ・高効率：20%→ 70% ・大きなアクセプタンス 水平方向±10°,鉛直方向±5° ・複数個の中性子の検出効率の向上 2nの場合：(20%)2=4%→(70%)2=49% ・不変質量分解能：従来の水準 （相対エネルギー1MeVで200keV） またはそれ以上 1.8m 3.6m Vetoカウンタ Ⅰ計算コードDEMONSによるシミュレーション Ⅱプロトタイプ検出器によるオフラインでの時間分解能の測定 位置・飛行時間を測定 中性子

6. 散乱3 散乱2 中性子 散乱1 n p 12C Ⅰ-1 中性子の検出方法 中性子→直接検出不可能 n En ①プラスチックシンチレータ中の水素や炭素と反応 θ p n n Ep n+p　→　n+p n+12C　→　n+12C エネルギー移行率 @ 弾性散乱 M：標的核の質量数 En：中性子のエネルギー E：反跳核のエネルギー θ：反跳核の散乱角 ①プラスチックシンチレータ中の水素や炭素と反応 ②中性子は荷電粒子にエネルギーを移行 ③荷電粒子による発光を検出 検出 発光量が少ない散乱 →中性子はほとんど検出されない →後方で検出される中性子の位置・時間分解能の低下 プラスチックシンチレータ x z 発光効率：荷電粒子の質量によって異なる y （En=250MeV、正面衝突の時） （En=250MeV、正面衝突の時）

7. [cm] Ⅰ-2 計算コードDEMONSによるシミュレーション 計算コードDEMONS --検出器のジオメトリ、標的での入射中性子の位置・エネルギー等を入力 --中性子の軌跡を追うモンカルロシミュレーション 検出 中性子 250MeV pencil beam (x,y,z), t (x0,y0,z0), t0 「中性子が最初に検出されるまでの散乱回数」に注目 --検出効率の厚さ依存性 　　　　　 スレッショルド：6MeVee --位置分解能の厚さ依存性 　　　　　　位置分解能：⊿x=x-x0,⊿y=y-y0,⊿z=z-z0 Intrinsicな時間の不確定性：σ=130psを付加 x z 180cm 12cm y 検出効率の厚さ依存性 位置分解能（y方向）の厚さ依存性 100 80 60 40 20 0 検出効率 3回目以上 70% 1回目の散乱で検出 2回目 2回目 3回目以上 1回目の散乱で検出 100cm z[cm]（後方の面） 厚さ12[cm]×N面

8. Pn Pn PBe [MeV] Ⅰ-3 計算コードDEMONSによるシミュレーション 相対エネルギー分解能の厚さ依存性 --32Ne(E=250MeV/n、Erel=1MeV)→30Ne+n+n --1回目に検出された中性子×2個、荷電粒子→Erel 放射中性子 220~280MeV n n 30Ne 250MeV/n pencil beam n n 32Ne 82Pb target 30Ne 運動量分解能 =p/700を付加 z 中性子検出器 NEBULA 相対エネルギー分解能の厚さ依存性 z[cm]（後方の面）

9. Ⅱ-1　プロトタイプ検出器による時間分解能の測定Ⅱ-1　プロトタイプ検出器による時間分解能の測定 実験セットアップ 宇宙線 中性子検出器 plastic scintillator(EJ200) 180W×10H×12Dcm3 light guide φ4.6×10H×12Dcm3 Tu TL TR Td A.2”12段H7195 B.3”12段H6559 ①12段H7195 ②10段R7724ASSY 　　　（ライトガイド有無） ③12段XP2262B スタートカウンター plastic scintillator(EJ200) 15W×1H×3Dcm3 --宇宙線を特定するための 3重コインシデンス --スタート（CFD）： 　　時間分解能(σ)～50ps 　 ストップ（Leading edge）： --左側：2”,3”、セメントで固定 右側：グリス＋固定具 --ライトガイド：UVT、ルサイト --スレッショルド-30mV～-200mV 右側：固定具の様子 スタートカウンター 12段XP2262B ・ADC：full range 1000pC=4000ch ・TDC：full range 100ns=4000ch

10. ①ADCスペクトルにゲート 　　→ノイズを除去 ②スルー補正 ③ のヒストグラム 　　→ガウス関数をフィット TDC( ) ns TDC( ) ns TDC( ) ns Ⅱ-2　解析方法 宇宙線 count ① 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ノイズ 除去 0 500 1000 1500 2000 ADC count ② ③ 0 -1 -2 -3 -4 -5 0 -1 -2 -3 -4 -5 60 50 40 30 20 10 0 ガウス関数を フィット 　　　↓ 時間分解能1σ スルー補正 0 500 1000 1500 2000 0 500 1000 1500 2000 -3 -2 -1 0 1 ADC ADC

11. [ps] [ps] 102 101 時間 [ns] 100 Ⅱ-3　時間分解能のHV依存性 ①12段H7195 ②10段R7724ASSY ③12段XP2262B 時間分解能（片読み）： ①104.2±3.8ps ②105.2±4.3ps ③128.6±5.0ps 　　相対エネルギー 　　分解能（DEMONS） ①165keV ②165keV ③166keV 時間分解能（片読み）： ①②110ps ③130ps 　　相対エネルギー 　　分解能（DEMONS） ①②165keV ③166keV TTS 1000 1500 2000 2500 3000 -HV[V] HAMAMATSU

12. [ps] [ps] Ⅱ-4　ライトガイドの有無による時間分解能の違い ②10段R7724ASSY ライトガイドありの方が 高い時間分解能が得られた Ⅱ-5　光電面の径による時間分解能の違い A. 2”H7195 B. 3”H6559 2”の方が高い時間 分解能が得られた TTS（FWHM）：1.1ns TTS（FWHM）：1.5ns 条件：セメントで固定

13. まとめ ⅠDEMONS 　・厚さ100cmで検出効率70％以上を実現。 　・後方の面で検出される中性子→位置・時間・相対エネルギー分解能が低下 Ⅱ　プロトタイプ検出器 　・オフラインで宇宙線を検出。片読みで110、130psの時間分解能が得られた。 　　　→相対エネルギー分解能はほとんど変わらない 今後 ⅠDEMONS 　・中性子検出器の配置の工夫→クロストーク現象に関する考察 Ⅱ　プロトタイプ検出器 　・高エネルギーの陽子ビームを用いた7Li(p,n)7Be反応による中性子検出器のテスト

14. 終わり

15. TDC( ) ns TDC( ) ns スルー補正について 観測時刻＝真の時刻＋スルーの効果 0 -1 -2 -3 -4 -5 0 -1 -2 -3 -4 -5 スルー補正 0 500 1000 1500 2000 0 500 1000 1500 2000 ADC ADC

16. 時間分解能のADCピーク依存性

17. 時間分解能の電荷量依存性

18. 時間分解能の位置依存性 検出位置との距離が短い →高い時間分解能

19. 時間分解能のHV依存性（スレッショルド=30mVの時）時間分解能のHV依存性（スレッショルド=30mVの時） 高いHV→TTS等が短くなる→高い時間分解能 さらに高いHV→プラトーな領域を超え、ノイズが増える→時間分解能悪化 count/s スレッショルド 30mV 120mV 200mV 1000 100 10 プラトー領域 プラトー領域に入るようにHV・スレッショルドをかける

20. 時間分解能 [ps] 固定の仕方による時間分解能の違い フォトマル：H7195　　条件：オプティカルセメントorグリス＋固定具 A.オプティカルセメント ①グリス＋固定具 100ps 110ps セメントの方が10%程度高い時間分解能が得られた。

21. TDCキャリブレーション HVとLeak電流の関係

22. 102 101 時間 [ns] 100 HVとADCピークchの関係 時間分解能のHV依存性 TTS 1000 1500 2000 2500 3000 -HV[V] HAMAMATSU

23. 200ns delay 100ns delay 100ns delay G.G. G.G. CFD CFD CFD CFD Discri. Discri. Discri. Discri. 回路図 Trigger 40mV Width 80ns 30ns delay ch1 Width 50ns ch2 スタート カウンター TDC start ch3 ch4 Delay THRU Width 200ns Width 50ns Width 50ns ADC gate ch5 start Output Reg. Width 50ns 中性子 検出器 ch6 stop VETO Delay THRU Width LATCH ch7 ch8 Trigger 30mV Width 150ns TDC full range 100ns ch1~8 analog ADC full range 1000pC

24. 宇宙線のFlux 地上 200c/h 10cm 10cm 10cm 100c/h 12cm 12cm

25. ②γ線による発光の排除が目的 ③炭素との弾性散乱が極端に減少 →検出されず分解能低下の原因 1回目に検出される散乱 全ての散乱 count 反応番号 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦

26. A3 A2 中性子 A1 C1 x z y 各面の位置・時間分解能 3回目以上の散乱で検出 2回目 中性子が最初に 検出されるまでの 散乱回数n ごと 1回目の散乱で検出 後方の面で位置・時間分解能の低下

27. 検出効率の厚さ依存性（z×8面） 相対エネルギー分解能を求めた際の検出効率（面ごと）

28. 粒子が持つエネルギーと発光量の関係 陽子が運動エネルギーTp[MeV]を持つ時の発光量[MeVee] 炭素が運動エネルギーTC[MeV]を持つ時の発光量[MeVee]