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霞ヶ浦におけるケイ素濃度の長期上昇と 懸濁物質及び湖底底質からの ケイ素溶出

地球研  FS 勉強会. 霞ヶ浦におけるケイ素濃度の長期上昇と 懸濁物質及び湖底底質からの ケイ素溶出. 荒居博之(筑波大学生命環境科学研究科). Arai H, Fukushima T, Komatsu K (in press) Japanese Journal of Limnology : DOI 10.1007/s10201-011-0358-0. 水界生態系におけるケイ素. 珪藻( SiO 2 の被 殻)  ⇒ ケイ素は必須元素 沿岸域へのケイ素流出の減少

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霞ヶ浦におけるケイ素濃度の長期上昇と 懸濁物質及び湖底底質からの ケイ素溶出

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Presentation Transcript


  1. 地球研 FS勉強会 霞ヶ浦におけるケイ素濃度の長期上昇と懸濁物質及び湖底底質からのケイ素溶出 荒居博之(筑波大学生命環境科学研究科) Arai H, Fukushima T, Komatsu K (in press) Japanese Journal of Limnology: DOI 10.1007/s10201-011-0358-0

  2. 水界生態系におけるケイ素 • 珪藻(SiO2の被殻)  ⇒ ケイ素は必須元素 • 沿岸域へのケイ素流出の減少 (Humborg et al. 1997; Duan et al. 2007; Li et al. 2007) • ダムの増加 ⇒ 珪藻の堆積 • 他の栄養元素(窒素、リン)に比べて観測例少 (河川環境管理財団、2007)  ⇒ ケイ素動態の知見不足 N ダム・湖沼 Si補給 (風化溶出) 珪藻 P Si堆積 沿岸域 珪藻 非珪藻 (有害種)

  3.  湖心のケイ素濃度の長期変化 • 1980~2007年度の毎月の定期観測に基づくデータベースを使用 • 溶存態ケイ素濃度*1(DSi; 比色法により測定) • 生物態ケイ素濃度(BSi; 珪藻濃度*2×平均的な珪藻のケイ素密度) • 鉱物態ケイ素濃度(LSi; 全ケイ素*1-溶存態・生物態ケイ素) • *1: 霞ヶ浦河川事務所の観測による • *2: 国立環境研究所の観測による DSi 1980年代:1.3 mg l-1 2000年代:4.0 mg l-1 上昇 霞ヶ浦湖心における溶存態・生物態・鉱物態ケイ素濃度の年平均値の変化

  4. 内部負荷? 国立環境研究所によって観測された、過去30年間の霞ヶ浦のDSi濃度の時間的・空間的分布 • 広域で上昇傾向だが、流入河川の河口付近では上昇せず • 流入河川のDSi濃度は、1994年度と2007年度で増加傾向なし 濃度上昇と同時期に底質由来の懸濁物質(SS)増加     ⇒ SS中の珪藻被殻からのケイ素溶出?

  5. 懸濁物質(SS)からのケイ素溶出実験 2008年8月:A3、B3、C1    同11月:B0 2009年6月:C1    同10月:C1 霞ヶ浦の湖水・底質サンプリング 溶出実験(ろ過した湖水中で底質を攪拌、暗所・好気的条件) 水 水温 C1 混合水 B0 25℃ 1℃ 15℃ 蒸留水 採水・ろ過(実験開始時、1週間後まで1~2日間隔、1カ月後まで2~7日間隔) 分析(吸光光度法で溶存態ケイ素濃度を定量) 底質採取地点 SS 濃度 (mg l-1) 50 100 200 350 A3 B3 C1

  6. 底質・湖水サンプリング地点 湖心

  7. ケイ素溶出への影響因子 ① 懸濁物質(SS)濃度 • 溶存態ケイ素濃度はSS濃度にほぼ比例 C: 溶存態ケイ素濃度 (mg l-1) t: 時間(day) SS: SS濃度 (g l-1) RSS: ケイ素溶出速度 (mg g-1 day-1) • 底質採取地点によるケイ素溶出速度の違いは小さい(±20%以内) • →  湖心(C1)の底質のケイ素溶出速度で湖沼全体を代表 • 湖水中のケイ素溶出速度は蒸留水中より大きい • → 水中のカチオンによる触媒効果? • (Loucaides et al. 2008) SS濃度と溶存態ケイ素濃度の関係

  8. ケイ素溶出への影響因子 ① 懸濁物質(SS)濃度 • 溶存態ケイ素濃度はSS濃度にほぼ比例 C: 溶存態ケイ素濃度 (mg l-1) t: 時間(day) SS: SS濃度 (g l-1) RSS: ケイ素溶出速度 (mg g-1 day-1) α: 底質へのケイ素吸着量 (mg g-1 ) β: 底質中の生物態ケイ素 (mg g-1 ) ② 吸着 • 0~1日目のケイ素溶出速度は、水中の溶存態ケイ素濃度と負の相関 • 1日目以降はケイ素濃度に依存せず • → 実験開始時は非平衡、1日後以降は吸着平衡 吸着 + 珪藻被殻の溶解 吸着平衡時、 γ = 0.12 l g-1 溶存態ケイ素濃度とケイ素溶出速度の関係

  9. ケイ素溶出への影響因子 ③ 珪藻被殻 • ケイ素溶解速度は1週間後まで減少 • → 溶けやすい新鮮な珪藻被殻が1週間程度で溶け切った? 新鮮な珪藻被殻の溶解速度 比較的古い珪藻被殻の溶解速度 ケイ素溶解速度の変化 A= 1.1–1.4 mg g-1day-1 k= 1.2–1.3 day-1 B= 0.16–0.24 mg g-1day-1 ④ 水温 • ケイ素溶解速度は水温と正の相関 a= (4.1–4.4)×103K T: 水温 (K) 水温とケイ素溶解速度の関係

  10. 湖底底質からのケイ素溶出実験 2009年6月:C1    同10月:C1 霞ヶ浦の湖水・底質サンプリング 溶出実験(ろ過した湖水中で底質を静置、暗所・好気的条件) ★実験開始から90日目、104日目に水を入れ替え 1℃ 15℃ 1℃ 15℃ ★ 25℃ 25℃ 水量 700 ml 採水・ろ過(実験開始時、1カ月後まで2~7日間隔、その後は200日後まで10回程度) ★ ★ 底質の厚さ  2 cm 4 cm 6 cm 分析(吸光光度法で溶存態ケイ素濃度を定量) 25℃

  11. ケイ素溶出への影響因子 • 溶存態ケイ素濃度は時間をかけて一定値(平衡濃度Ce)へと漸近 溶存態ケイ素濃度の変化(a) 水を入れ替えない場合 • 平衡濃度Ceは水温の関数 水温と平衡濃度の関係

  12. ケイ素溶出への影響因子 溶存態ケイ素濃度の変化 (b) 90、104日目に水を入れ替えた場合 「平衡濃度と水中のケイ素濃度の差」とケイ素溶出速度の関係 C • 新しい水に入れ替えると、ケイ素溶出速度は実験開始時程度にまで回復 → 溶出速度の減少は主に水質変化に起因 • ケイ素溶出速度は、「平衡濃度Ceと水中のケイ素濃度Cの差」と相関 → 溶出速度は濃度勾配によって律速(拡散) Ce R’bottom:ケイ素溶出速度(g m-2 day-1) T: 水温 (K) Ce: 平衡濃度 (mg l-1)

  13. 霞ヶ浦の溶存態・生物態ケイ素収支の推定 湖水中の物質量の変化 流入 流出 溶出 堆積 データベース 室内溶出実験 SSからの溶出 湖底底質からの溶出 年スケールでは ΔM: 湖水中の物質量変化(g y-1) IDSi: 溶存態ケイ素流入負荷量 (g y-1) ODSi: 溶存態ケイ素流出負荷量 (g y-1) OBSi: 生物態ケイ素流出負荷量 (g y-1) R: 溶存態ケイ素溶出負荷量 (g y-1) RSS: 懸濁物質からのケイ素溶出負荷量 (g y-1) Rbottom: 湖底底質からのケイ素溶出負荷量 (g y-1) S: 生物態ケイ素総堆積負荷量 (g y-1) A: 湖面積 (m2) Z: 生物態ケイ素純堆積負荷量 (g y-1) 生物態ケイ素総堆積負荷量 生物態ケイ素純堆積負荷量

  14. 霞ヶ浦の溶存態・生物態ケイ素収支 2000年代 1980年代 流出2×109 g y-1 DSi1.4×109g y-1 BSi0.4 ×109 g y-1 流出6×109g y-1 DSi4.4×109g y-1 BSi 1.2 ×109 g y-1 流入 DSi (8–12)×109 g y-1 流入 DSi (8–12)×109 g y-1 DSi2.7×109g BSi 0.7 ×109 g DSi0.9×109g BSi0.3×109g 堆積・埋没 (2–6)×109 g y-1 堆積・埋没 (6–10)× 109g y-1 4×109g y-1............湖底底質からの溶出...……..... 4×109g y-1 0 g y-1 ……..…........ 懸濁物質(SS)からの溶出……..... (1–3)×109 g y-1 • インプット:河川流入(60~70%)、底質からの溶出(30~40%) • アウトプット:珪藻の堆積(70~90%)、河川流出(10~30%) • 2000年代におけるSSからのケイ素溶出量 •      =溶存態ケイ素流出負荷量の増加分(3.0×109gy-1)の30~100% • SSからのケイ素溶出負荷量 = 湖内の全溶出負荷量の20~40%

  15. 底質中の生物態ケイ素の鉛直分布 底質コア 1980年~2007年:(1.9~2.5)×1011 g 収支残差 1980年~2007年:2.3×1011 g

  16. まとめ ① 霞ヶ浦の底質・湖水を用いた室内実験の結果、現地のケイ素上昇の30~100%を懸濁物質からのケイ素溶出で説明できた。 ② 懸濁物質からのケイ素溶出量は、湖底底質からの溶出量の2~4倍程度であった。 ③データベースから推定された過去30年間の霞ヶ浦のケイ素収支は、底質中の生物態ケイ素堆積量と比較的よく一致した。

  17. 湖沼底質中の色素分析による藻類組成変化の復元湖沼底質中の色素分析による藻類組成変化の復元

  18. 藻類は種に固有な光合成補助色素 (carotenoids)を有する zeaxanthin lutein 藍藻 Cyanobacteria 緑藻 Green algae alloxanthin クリプト藻 Cryptophytes diatoxanthin 珪藻 Diatoms fucoxanthin 底質中の色素を特定藻類の生物指標 (biomarker)として解析 (例えばSoma et al. 1995) peridinin 渦鞭毛藻 Dinoflagellates 湖沼において、底質中での色素の分解速度やその色素間での違いを評価した研究は少ない。

  19. 木崎湖 霞ヶ浦 研究対象湖沼と底質コア採取地点 琵琶湖 諏訪湖 霞ヶ浦 (2009年7月)、諏訪湖及び木崎湖 (同年9月)で はダイバーがアクリル筒を用いて (上図)、琵琶湖 (2010年7月)では不攪乱柱状採泥器を用いて行われた。

  20. ■底質堆積速度の推定■ 霞ヶ浦、諏訪湖、木崎湖・・・見かけ密度のピークを過去の洪水記録と照合して推定 (Fukushima et al. 2010) 琵琶湖・・・太井子・奥田 (1989)の報告値 (0.52 kg m-2 y-1)を引用 ■色素分析■ HPLCで試料中の色素を分離 (参考: Gijsbert et al. 1992) → フォトダイオードアレイUV検出器で検出 凍結乾燥試料150 mg + アセトン4 ml 超音波処理 (2分)濾過(0.2 μmフィルター) 濃縮 (約20倍、窒素ガス使用) chl-a分解産物 peridinin fucoxanthin alloxanthin phaeophytina chlorophyll a diatoxanthin phaeophorbidea lutein 655 nm zeaxanthin 450 nm min ■検証用データ■ 過去30年間の霞ヶ浦湖心*1(水深0~2 m、月1回)及び琵琶湖今津沖中央*2(水深0.5 m、月1~2回)における水中藻類濃度及びchlorophyll a濃度を使用 *1: 国立環境研究所、*2: 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター

  21. 底質中色素の鉛直分布 多くの色素は深度とともに減少傾向 (p < 0.05)

  22. 色素の分解速度は diatoxanthin(10-3 y-1)  <他の色素 (10-2 y-1)   <chlorophyll a (10-2–10-1 y-1) X: 底質中色素濃度 (μg g-1) X0: 初期色素濃度 (μg g-1) A: 水中藻類濃度 (μm3 m-3) a: 係数 (g μm3 μg-1 m-3 ) k: 分解速度係数 (y-1) dX/dt = – kXと仮定 ⇒ X = X0 exp (– kt) LN (X/A) = LN[X/ aX0] = – kt – LN(a) 霞ヶ浦、琵琶湖における底質中色素濃度と対応藻類の水中濃度の比の分布

  23. 底質中色素濃度とSoma et al. (1993)の藻類色素/chlorophyll a比から推定 全藻類 増加(p < 0.05) chlorophyll a増加 (p < 0.001) データベースとの比較によって得られた分解速度の平均値を適用 藍藻、緑藻 減少(p < 0.001) chlorophyll a減少 (p < 0.001) 検証用データ (水中藻類データベース) 藍藻 減少、珪藻 増加(p < 0.05) chlorophyll a減少 (p < 0.05) 霞ヶ浦における過去30年間の藻類量分布

  24. 底質中色素濃度とSoma et al. (1993)の藻類色素/chlorophyll a比から推定 クリプト藻 増加(p < 0.05) データベースとの比較によって得られた分解速度の平均値を適用 藍藻、緑藻 減少(p < 0.001) 珪藻、クリプト藻 増加(p < 0.01) 検証用データ (水中藻類データベース) 藍藻 減少(p < 0.05) 珪藻 増加(p < 0.01) 霞ヶ浦における平均的な藻類組成割合

  25. データベースのない地域における 過去の藻類組成変化の推定 諏訪湖: 珪藻の量・割合 増加 藍藻・緑藻の量・割合 減少 ⇒ 花里・朴 (2008)の報告と整合 木崎湖: 珪藻の割合 増加 藍藻・緑藻・クリプト藍の量 減少 底質中色素、色素/chlorophyll a比及び色素分解速度から推定された諏訪湖、木崎湖の過去の藻類量変化

  26. まとめ ① 色素の分解速度はdiatoxanthin (~10-3 y-1) <他の色素 (~ 10-2 y-1) <chlorophyll a (10-2–10-1 y-1)であった。 ② 分解速度を評価することで、過去の藻類組成割合の変化傾向をよりよく推定できた。

  27. 参考文献 DeMaster (1981) GeochimCosmochimActa45:1715–1732 DuanS, Xu F, Wang LJ (2007) Biogeochemistry 85:215–234 Fukushima T, Kamiya K, Onda Y, Imai A Matsushige K (2010) FundamApplLimnol, Arch Hydrobiol 177:177–188 HumborgC, Ittekkot V, Cociasu A, Bodungen B (1997) Nature 386:385–388 Li M, Xu K, Watanabe M, Chen Z (2007)Estuar Coast Shelf Sci 71:3–12 Loucaides S, Van Cappellen P, Behrends T (2008) Limnol Oceanogr 53:1614–1621 Kraay G, Zapata M, Veldhuis MJW (1992) J Phycol28:708–712 Soma Y, Imaizumi T, Yagi K, Kasuga S (1993) Can J Fish AquatSci50:1142–1146 Soma Y, Tanaka A, Soma M (1995) Geochemical Journal 29:107–113 河川環境管理財団 (2007) 河川におけるケイ酸など無機溶存物質の流出機構に関する研究 太井子・奥田 (1989) 京都大学防災研究所年報 32:259–278 花里・朴 (2008) 日本プランクトン学会報 55:48–51

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