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2005 年 12 月 8 日(木) 第18回国立大学図書館協会シンポジウム. 機関リポジトリの背景について 海外の動向:研究者との連携. 常磐大学人間科学部現代社会学科 栗山 正光. 学術雑誌の危機 Serials [pricing] crisis. “ Philosophical Transactions of the Royal Society of London” (1665 年創刊 ) 以来、 学術コミュニケーションの中心は学術雑誌 査読による品質保証など重要な特質
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2005年12月8日(木) 第18回国立大学図書館協会シンポジウム 機関リポジトリの背景について海外の動向:研究者との連携 常磐大学人間科学部現代社会学科 栗山 正光
学術雑誌の危機Serials [pricing] crisis • “Philosophical Transactions of the Royal Society of London” (1665年創刊)以来、学術コミュニケーションの中心は学術雑誌 • 査読による品質保証など重要な特質 • 1990年から2000年の間に科学、技術、医学系(STM) 学術雑誌の価格は年11%の割合で上昇 • 学術雑誌出版社の買収による統廃合も進む
電子ジャーナルの登場 • ADONIS(CD-ROMでの提供)(1989) • TULIP(The University Licensing Program) • Elsevier社とアメリカの数大学との共同実験(1993) • Red Sage (UCSF, Springer, AT&Tベル研)、Muse(ジョンズ・ホプキンズ大)などの実験プロジェクト • WWWとPDFの普及に伴い急速に実用化、普及 • 雑誌の値下がりにはつながらず、むしろ特別な予算措置が必要に
SPARCScholarly Publishing and Academic Resources Coalition • 北米研究図書館協会(ARL: Association of Research Libraries)を中心に1998年設立 • 現在、世界中で300近くの図書館等が参加 • SPARC Europe(2002年~) • 国立情報学研究所「国際学術情報流通基盤整備事業 (SPARC/JAPAN)」(2003年~) • 高額商業誌に対抗する競合誌刊行 • Organic Lettersの成功 • しかし商業誌の価格は下がらない
SPARCと機関リポジトリ • 2002年、SPARCのシニア・コンサルタントRaym Crowが二つの文書を発表 • 『機関リポジトリ擁護論:SPARC声明書(The Case for Institutional Repositories: A SPARC Position Paper) 』 • 『学術機関リポジトリ チェックリストおよびリソースガイド(InstitutionalRepository Checklist & Resource Guide )』 • 以後、「機関リポジトリ」に注目が集まる
機関リポジトリとは(『機関リポジトリ擁護論』による)機関リポジトリとは(『機関リポジトリ擁護論』による) • 単独あるいは複数の大学コミュニティの知的生産物を入手・保存する電子的コレクション • その情報内容は • 機関で範囲限定(専門分野別ではない) • 学術的 • 累積的かつ永続的 • オープンで相互運用可能(→OAI-PMH)
機関リポジトリの意義(『機関リポジトリ擁護論』による)機関リポジトリの意義(『機関リポジトリ擁護論』による) • 学術コミュニケーション改造の中心的構成要素 • 分散型出版構造での革新を促す • 著者は学術論文をいろいろなリポジトリ(機関リポジトリはその一つ)に寄託 • 複数ルートからの検索、評価 • 学術機関の質の具体的指標 • 機関の可視性、名声、価値を高める
機関リポジトリの例(1) • Institutional Archives Registryには548のアーカイブ(リポジトリ)が登録 (2005.12.7現在) • DSpace • MIT図書館とヒューレット・パッカード社がソフトウェアを共同開発→フリーソフトとして公開 • https://dspace.mit.edu/index.jspで、MITの研究成果を発信(2002年より) • ケンブリッジ大学、香港科技大学など他機関でもソフトとして採用→DSpace連合を形成
機関リポジトリの例(2) • Caltech Collection of Open Digital Archives (CODA) • カリフォルニア工科大学図書館のリポジトリ • 2000年開始 • 十数種のアーカイブに別けて公開 • ソフトウェアはEPrints(サウサンプトン大学開発) • CaltechETDだけはETD-db(バージニア工科大開発)
e-プリント・アーカイブ • プレプリント • 学術雑誌に投稿した論文を査読終了前に配布するもの *ポストプリント=査読を通過した論文の最終形 • arXiv.org e-Print archive • 1991年Paul Ginspargが創設 • 現在、コーネル大が運営。日本にもミラーサーバ • 物理、数学、コンピュータ・サイエンス等の分野のプレプリントを蓄積 • 他にもCogPrints(認知科学)、RePEc(経済学)など
e-プリント・アーカイブと機関リポジトリ • e-プリント・アーカイブは学問分野、主題領域ごとに存在 • プレプリント交換の伝統がない分野では、e-プリント・アーカイブも未発達 • 機関リポジトリは分野に関係なく自機関の研究成果を収録→e-プリント・アーカイブと機関リポジトリは相互補完関係 • ともに分散型学術出版システムの重要な構成要素
オープン・アクセス • 1994年、Stevan Harnadが、学術論文の著者はプレプリント(あるいはポストプリント)をインターネット上で無料公開すべきと主張→Ginspargらと電子メールで議論 • Scholarly Journals at the Crossroads: A Subversive Proposal for Electronic Publishing • 動機:無料公開(オープン・アクセス)した方が大勢の研究者に読まれ、論文の被引用数が上がる
オープン・アクセスへの二つの道 • セルフ・アーカイビング(グリーンの道) • 自分のWebサイト、専門領域のe-プリント・アーカイブ、機関リポジトリ等で無料公開すること • 75%の学術出版社がセルフ・アーカイビングに青(グリーン)信号を出している cf. http://romeo.eprints.org/stats.php • オープン・アクセス誌(ゴールドの道) • 読者から購読料を取らない(著者が払う) • Directory of Open Access Journals
セルフ・アーカイビングの現況調査より(1)セルフ・アーカイビングの現況調査より(1) • Swan and Brown "Open access self-archiving: An author study" Technical Report, JISC. 2005 • 2004年10〜12月に調査 • 世界中の研究者1,296人が回答 • セルフ・アーカイブ経験者は49%(過去3年間) • Webサイト27%、機関リポジトリ20%、主題領域リポジトリ12% • 機関リポジトリ利用者は10ヶ月前に比べ倍増 • 論文数が多い人ほどセルフ・アーカイブを行う
セルフ・アーカイビングの現況調査より(2)セルフ・アーカイビングの現況調査より(2) • セルフ・アーカイブしていない人の71%が、こういうオプションがあることを知らない • 全体では、51%の71%なので、36% • 初めてリポジトリに登録する際、20%の人が難しさを感じるが、2回目以降は9%に減る • 出版社の許諾が必要かどうかわからないままセルフ・アーカイブした人が36% • オープン・アクセスが義務づけられた場合、81%:喜んで従う、13%:しぶしぶ、5%:従わない
オープン・アクセスの義務付けをめぐって • イギリスの下院科学技術特別委員会では、公的な補助金を受けた研究の成果はオープンアクセスのリポジトリへ寄託することを義務づける勧告 • しかし政府は拒否 • http://www.biomedcentral.com/news/20041109/02 • アメリカでは、NIHの補助金による研究成果のPubMed Centralへの登録義務化の提案 • 2005年2月の最終方針は、出版後12ヶ月以内に登録するよう要請するというもの(義務ではない) • しかし、Public Access Working Group (PAWG)が11月の会議で、義務に戻すことを決定(猶予期間も6ヶ月に) • cf. SPARC Open Access Newsletter, issue #92
帝国の逆襲(1) • Scirus • Swan and Brownの調査ではオープン・アクセス論文を探すツールとして最もよく利用されている(p. 25) • 電子ジャーナルのOAオプション • Springer Open Choice ($3,000) • Blackwell Online Open ($2,500) • 一定期間後のオープンアクセス化 • PNAS
帝国の逆襲(2) • 発展途上国への電子ジャーナル無料化 • AGORA(800誌・農学関係) • HINARI(3,000誌以上・医学関係) • PNAS • 学会による掲載予定原稿の無料提供 • Endocrine SocietyのRapid Electronic Publication (REP) • cf. NIH – New Policy for Authors • Royal SocietyによるOAへの懸念
オープン・アクセスと機関リポジトリ • 機関リポジトリは査読済み論文のセルフ・アーカイビングの場 • グリーンの道での連携 • ゴールドの道とは直接の関係なし • 機関リポジトリのそれ以外のコンテンツ(学位論文、教育資料など)、コレクション管理、長期保存などの要素はオープン・アクセス運動とは無関係 • しかし、図書館にとっては重要 • 学術出版システムの変革に対しても温度差 • 従来の査読に代わる新しい評価システムが必要か?
まとめ • 学術雑誌の危機と電子ジャーナルの登場を背景にSPARC設立 • 2002年以来、 SPARCは大学の知的成果を保存・提供する機関リポジトリの推進を提唱 • e-プリント・アーカイブと機関リポジトリは分散型学術出版システムの構成要素 • 機関リポジトリはオープン・アクセス運動のグリーンの道(セルフ・アーカイビング)の場を提供 • 学術出版の変革に関する認識のずれ