710 likes | 804 Vues
ヒッグス粒子探索の最前線. 物理学セミナー 2010 年 10 月 13 日 佐 藤構二. 目次. イントロダクション ヒッグス粒子とは? ← 標 準理論のヒッグス粒子 高エネルギー加速器実験 CDF実験 実験装置、どうやって粒子を検出しているか 最新のヒッグス粒子探索 LHC実験 新しく運転を開始した最高エネルギー加速器 ヒッグス粒子探索のポテンシャル. イントロダクション. ?. 素粒子物理学とは. 物質を細分化していく と何に行き着くか? そ れ以上分けられない物質は? ⇒ 物質の究 極 の構成要素=素 粒子. 水の分子10 -7 cm.
E N D
ヒッグス粒子探索の最前線 物理学セミナー 2010年10月13日 佐藤構二
目次 • イントロダクション • ヒッグス粒子とは? ← 標準理論のヒッグス粒子 • 高エネルギー加速器実験 • CDF実験 • 実験装置、どうやって粒子を検出しているか • 最新のヒッグス粒子探索 • LHC実験 • 新しく運転を開始した最高エネルギー加速器 • ヒッグス粒子探索のポテンシャル
? 素粒子物理学とは • 物質を細分化していくと何に行き着くか? • それ以上分けられない物質は? • ⇒ 物質の究極の構成要素=素粒子 水の分子10-7cm 原子核10-12cm クォーク≤10-16cm ? 陽子10-13cm 酸素原子10-8cm
物質を構成する素粒子 • 物質は、クォークとレプトンからなる。 • クォーク、レプトンそれぞれ3世代。
物質を構成する素粒子 • 重力はまだ、素粒子に働く力としては観測されていない。
素粒子の質量 物質粒子 ゲージ粒子 • 力を媒介するゲージ粒子のうち、なぜWとZだけが重いのか??
質量とは? ビッグバン直後 現在 粒子は真空から力を受けずに飛び回る。 真空にはヒッグス場が充満している。 粒子はヒッグス場(粒子)とぶつかりながら飛ぶので抵抗を受ける。 ⇒ 質量を獲得
ヒッグス機構 ヒッグスポテンシャル • V (f) = m2f2 + lf4 ( l ビッグバン直後 m2>0 現在 m2<0 自発的対象性の破れ (真空の相転移) ヒッグスポテンシャル 真空 真空 ヒッグス場 F1, F2は複素数。
ヒッグス質量に対する理論的制限 Λ: 標準理論を超える新しい物理が出現するエネルギースケール • Λがいくつであっても、ヒッグス粒子の質量は800 GeV以内。
標準理論の成功 • 世界中さまざまな実験でいろいろな物理量が測られているが、いまのところ標準理論と矛盾する結果はない。 全部3σ以内で一致!!
標準理論の問題点 • なぜ3世代あるのか説明していない。 • 重力が入っていない。 • クォークとレプトンの質量は、標準理論では予言できないフリーパラメータである。 • Mtop/Me~O(105) • …… ⇒ ヒッグス粒子を発見し、精密に測定することで新展開・ヒントを探す。
高エネルギー加速器実験 • なぜ素粒子を高エネルギーに加速して衝突させたいか? • もし素粒子に内部構造があれば、十分にエネルギーを与えれば素粒子を壊すことができる。 (実際に陽子を衝突させるとき、これほど単純なことがおこっているわけではない...。) • 素粒子間の反応で生成された粒子、およびその粒子が崩壊を調べる。
重心系エネルギーとルミノシティ • 相対論の不変質量は • M新粒子<ECM以内の粒子なら生成される可能性あり。 • 衝突の重心系エネルギーが新粒子(ヒッグス)質量より大きくないと、 新粒子は発見できない。 • 重い新粒子探索は世界最高エネルギーの加速器で行うのが効率的。 • ルミノシティ L • 反応断面積σの単位は b (=10-24cm2,バーン) • pb (=10-12)を使うことが多い。 • 反応断面積に掛けると事象数になる量、 • したがって単位はpb-1 • ルミノシティLはデータ量を表す。 新粒子 1 2
ハドロン衝突型加速器 • レプトン衝突型と違って、ハドロン衝突型加速器では、素過程(興味ある素粒子反応)に全エネルギーを使えない。 • Spectator Partonがエネルギーを持ち去ってしまうため。 • 重心系エネルギーの10分の1くらいを使える(目安)。 • 重心系エネルギー2 TeVのTevatron ⇒200 GeVくらいまでのヒッグス粒子を探せる。 Parton distribution Spectator partons p p ヒッグス 粒子生成!
最近から近未来の最高エネルギー加速器 Tevatron ppbar 1.8-1.96 TeV Fermilab USA ILC e+e- 0.5-1 TeV ? ? SLC e+e- 91 GeV SLAC USA トップクォーク発見 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 W/Zボソン発見 SppS ppbar 630 GeV CERN Switzerland LEP e+e- 91-209 GeV CERN Switzerland LHC pp 7-14 TeV CERN Switzerland
加速器エネルギーを日常生活と照らしあわせてみる加速器エネルギーを日常生活と照らしあわせてみる • 現在の加速器:~1 TeVのエネルギースケールで実験。 • Tevatronのビームエネルギー = 1TeV • 飛んでいる蚊のおよその運動エネルギー = 1.60 nJ = 1 TeV ※ ⇒ 素粒子1個に蚊の運動エネルギーを集約している。すごいこと! • 宇宙年齢1013秒ころに起きていた物理現象を実験している。 • 大統一理論のエネルギースケール(GUTスケール) = 1016GeV • 激しい労働をしない男性の1日の摂取カロリーの推奨値 = 2000 kCal※ = 2.6×1016GeV • プランク・スケール = 1019GeV ※wikipediaより
Tevatron加速器 • シカゴ郊外のフェルミ国立研究所。 • 2008年まで世界最高エネルギー、現在は世界2位。 • 陽子・反陽子衝突。 • Run I (1992-1996) • Ep,pbar=900 GeV • √s = 1.8 TeV • 積分ビーム輝度 ~110 pb-1 • Run II (2001-現在) • Ep,pbar=980 GeV • √ s = 1.96 TeV • Two multi-purpose detectors • CDF, DØ 2km
Tevatronチェーン 反陽子 陽子 MAIN INJECTOR DØ p,pbar:150GeV ANTIPROTON SOURCE p:8GeV TEVATRON p,pbar:980GeV BOOSTER p:8GeV CDF LINAC H-:400MeV PROTON COCK CROFT-WALTON H-:750keV NEUTRINO MESON
週間ルミノシティ • (バックグラウンド事象を減らすために事象選別するため、このイベント数がそのまま解析で使えるわけではない。) • 1日ごとに新しいビームに入れ替える。 • 1週あたり ~50 pb-1データがたまる。 • トップクォーク(7 pb) ⇒ 週に350個 • ヒッグス(~1 pb) ⇒ 週に~50個
いままでに取得したデータ量 • Delivered ~9.5 fb-1. • Acquired ~8.0 fb-1. 現在 2001年 RunII開始 1 fb = 0.001 pb 1 fb-1 = 1000 pb-1
CDF実験 • Tevatron加速器の陽子・衝反陽子突点にCDF検出器を置いて素粒子反応のデータを取っている。 大きさ 10×10×10m 重量 3000トン
CDFコラボレーション • 世界中14カ国から、600人の研究者が参加。
素粒子反応の再構成 • 終状態をみて、何が起こったかを調べる • ヒッグスやW/Zなどは、できたらすぐに崩壊してしまう。 • 終状態の粒子: 安定,もしくは長寿命な粒子 • e±, ν, γ, p, n, μ±, π±,K±, KL 例) 終状態にミューオンが二つある場合 Z→ μ μ μ1 ? p p μ2 エネルギー・運動量保存則を使って親粒子の質量を計算
ミューオン検出器 ハドロンカロリメータ 電磁カロリメータ ソレノイド電磁石 Time of Flight ドリフトチェンバー シリコン飛跡検出器 衝突点 粒子の同定,電荷・運動量の測定 最小電離作用のみ 横方向消失エネルギー 電磁シャワー ハドロンシャワー ジェット
シリコン飛跡検出器 シリコンマイクロストリップセンサ 荷電粒子の通過した 位置を数十ミクロン間隔 で埋め込まれた電極により測定 シリコンマイクロストリップセンサを層状に配置することで、粒子の飛跡を高精度に再構成できる。
中央飛跡検出器(ドリフトチェンバー) 荷電粒子が通ると充満されているガスが電離してワイヤーに信号を残す
カロリメータ プラスチックシンチレータ 光電子増倍管 • 電磁カロリメータ • 鉛/シンチレータ • ハドロンカロリメータ • 鉄/シンチレータ 荷電粒子の通過に伴いシンチレータが出す微弱な光を光電子増倍管で電気信号として読み出す。 電磁シャワー ジェット e p
y z x ミュー粒子検出器 シンチレータ ドリフトチェンバー
大きさ 10×10×10m 重量 3000トン
b l+ g q 100% t W+ n 15% 85% q t q g W- 100% q’ b トップクォーク質量の精密測定 CDFとD0両実験でさまざまな解析を行い、解析結果を足し合わせて世界平均を測定している: トップクォーク質量測定 レプトン+ジェットチャンネルの例: Mtop = 172.0 +/-1.5 GeV/c2 Mtop = 173.3 ± 1.1 GeV/c2 Template based measurement in Lepton+Jets channel (4.8 fb-1)
Wボソン質量の精密測定 • 不変質量でなくMT(不変質量からPzの項を落とした量)を再構成し、Wの質量を測定する。 Tevatronの結果とCERNのLEP実験の結果を足し合わせて世界平均を測定している: MW = 80399 ± 23 MeV/c2 200 pb-1 MW = 80413 ± 48 MeV/c2
トップ・Wボソン質量の精密測定によるヒッグス質量への制限トップ・Wボソン質量の精密測定によるヒッグス質量への制限 輻射補正の計算により、ヒッグス質量とトップ・Wボソンの質量には関係がある。 フィットから: mH < 158 GeV @ 95% CL (mH = 89.0 +35/-26 GeV) Mtop = 173.3 ± 1.1 GeV/c2 MW = 80.399 ± 0,023 GeV/c
トップ・Wボソン質量の精密測定によるヒッグス質量への制限トップ・Wボソン質量の精密測定によるヒッグス質量への制限 輻射補正の計算により、ヒッグス質量とトップ・Wボソンの質量には関係がある。 • 2003年の時点では: • Mtop = 178.0 4.3 GeV/c2 • MW =80410 32 MeV/c2 Mhiggs < 260 GeV/c2 (95% C.L.) Tevatron Run IIの結果が得られたことによる進展 フィットから: mH < 158 GeV @ 95% CL (mH = 89.0 +35/-26 GeV) Mtop = 173.3 ± 1.1 GeV/c2 MW = 80.399 ± 0,023 GeV/c2
2000年9月 新聞記事 2000年にCERN研究所(ジュネーブ)LEP実験で質量115GeV/c2のヒッグス粒子の候補事象が見えた(95%信頼度)。同時に114GeV/c2以下のヒッグス粒子は存在しないことを示した。 フェルミ研究所テバトロン加速器を用いた陽子・反陽子衝突実験で現在ヒッグス粒子探索中。 LEP実験の直接探索結果: MH<114.4 GeV の質量領域を棄却(95% C.L)
Tevatronでのヒッグス粒子の性質 bb WW MH<135 GeVでは、 MH>135 GeVでは、 W/Z が探しやすい探索モードである。
WH→lνbb解析 ニューラルネットによる イベント選別: バックグラウンドを減らすため、さまざまなb-タガーを使用。 ニューラルネットによるイベント選別。 M(b,b) ヒッグス信号が見つからない ⇒ 生成断面積にリミットを付ける:
H→WW→lνlν解析 散乱振幅の理論計算、ニューラルネットによるイベント選別。 ニューラルネットによる イベント選別: スピンの違いは崩壊粒子の角度分布に現れる Spin 0 H ➞ WW Spin 1 γ/Z ➞ WW ヒッグス信号が見つからない ⇒ 生成断面積にリミットを付ける: レプトン間の角度
CDFの現在の探索結果 有利な探索チャンネルだけでなく、様々な探索モードで徹底的にヒッグス粒子を探している。
Tevatronの現在の探索結果 CDFとD0のすべての探索モードの結果を足し合わせた: 1.45×SM @ MH=115 GeV/c2 ヒッグス粒子の質量は、158<MH<175 GeV/c2の範囲ではない(95%C.L.)
Tevatronの今後 発見に必要なルミノシティの予想値: 2014年末 100<MH<180 GeVの質量領域で ”>3σ Evidence” 2011年末 MH<200 GeVの全質量領域で2.4σ Tevatronは2014年までの実験延長を模索している(LHCとの兼ね合い)。
LHC加速器 • Large Hadron Collider • 陽子・陽子衝突 • 重心系エネルギー14TeV • 直径約8km • 4つの実験 • ATLAS・CMSpp衝突での ヒッグスや超対象性粒子の探索 • LHCb B物理 • ALICE 重イオン物理
ATLAS検出器 • LHCの陽子・陽子衝突点のまわりに置かれる検出器。
ATLASコラボレーション 38カ国、174研究機関から3000人が参加