エージェント技術の 電力システムへの応用

1. TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッションTC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション エージェント技術の電力システムへの応用 （広島工業大学） 　永　田　　武

2. エージェント技術の電力システムへの応用 目　次 １．はじめに ２．電力システムへの応用事例 ３．エージェントコントロール ４．エージェントシミュレーション ５．まとめ TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

3. エージェント技術の電力システムへの応用 1．はじめに • 電力システムとエージェント • 1980年代　電力設備自動化が精力的に進められた（地域的に分散した計算間を電力会社の専用回線で結合し，業務の効率化と電力供給の信頼性向上） • 1990年代　エージェント指向の考え方の発生 　　　・オブジェクト指向の自然な発展形　 　　　・インターネット・イントラネットの爆発的な普及によるネットワークコンピューテイングの重要性の認識の高まり　 　　　・情報処理技術に対する要求の高度化が起因 エージェントという用語は使用されることはなかった TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

4. エージェント技術の電力システムへの応用 1．はじめに • 電力システムとエージェント • 1995年　電力自由化元年 　　　電気事業法の改正（1995.4改正　30年ぶりの改正）　発電事業への新規参入の拡大（IPPの登場）　特定電気事業の創設（小売供給の認可）　 • 2003年　日本卸電力取引所（JEPX: Japan Electric Power Exchange ） スポット市場と先渡定型市場 スポット市場：　 　　　　　　 ・翌日の電気の取引を行う市場　 　　　　　　 ・30分毎の取引　 　　　　　　 ・シングルプライスオークション方式 　　　　　　 　　　（価格と量の組合せを入札し，売手と買手の 　　　　　　　　　　　　　条件が合致する交点で落札する） 2010.8.1の取引量　MWh http://www.jepx.org/ TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

5. エージェント技術の電力システムへの応用 1．はじめに • 電力システムとエージェント • 電力システムの複雑さの変化 　　　これまでは，大規模化（電力需要の増大に対応） 　　　今後は，異質な要素が電力システムへ組み込まれる 複雑さへの対応 マルチエージェント技術への期待の高まり 知覚 Sensors Agent 環 境 知的機構 行動 Actuators TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

6. エージェント技術の電力システムへの応用 1．はじめに • 電力システム関連のエージェント技術の研究 • 最初の書籍　1995年 • 木下，菅原：エージェント指向コンピューティング • Bound & Gauser: Readings in Distributed Artificial Intelligence • 最初の論文　1998年 • ｴｰｼﾞｪﾝﾄﾓﾃﾞﾙによる協調動作型保護ｼｽﾃﾑのｺﾝｾﾌﾟﾄ（電学論）　 • Intelligent Agent for Negotiation in Market Games Part 1/ Part 2 (IEEE Transaction Power Systems) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

7. エージェント技術の電力システムへの応用 ２．電力システムへの応用事例 文献調査 調査対象：　電気学会論文誌　/ IEEEE Transaction （）海外論文 TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

8. エージェント技術の電力システムへの応用 ２．電力システムへの応用事例 電力システムへのマルチエージェントの適用方法 ① エージェントコントロール ② エージェントシミュレーション TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

9. エージェント技術の電力システムへの応用 Bus Agent BusAgent Bus Agent Bus Agent ３．エージェントコントロール 事例１　地方供給系統事故復旧 母線エージェントの相互作用 Facilitator Agent 永田武，渡部英宜，大野益見，井場信彦：「電力系統事故復旧問へのマルチエージェント技術の適用」，電学論，121-B, 2, pp. 179-185 (2001) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

10. エージェント技術の電力システムへの応用 ３．エージェントコントロール 事例１　地方供給系統事故復旧 永田武，渡部英宜，大野益見，井場信彦：「電力系統事故復旧問へのマルチエージェント技術の適用」，電学論，121-B, 2, pp. 179-185 (2001) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

11. エージェント技術の電力システムへの応用 ３．エージェントコントロール 事例２　基幹系統事故復旧 光を失ったニューヨーク　 ２階層システム 2003 8.14 New York Canada System Disturbance LMA: Local Area Management Agent RMA: Remote Area Management Agent GAG: Generator Agent LAG: Load Agent 永田武，田原佳樹，国狭大介，藤田秀樹：「マルチエージェントによる自律分散型基幹系統事故復旧方式」，電学論，126-C, 2, pp. 187-193 (2006) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

12. エージェント技術の電力システムへの応用 ３．エージェントコントロール 事例２　基幹系統事故復旧 発電機（４タイプ） LocalLoad1(150MW) 負荷（４タイプ） Remote Load２(300MW) GA1 GA2 GA3 GA4 GA5 RB1 RB2 RB3 RB4 エージェントの総数　 　　　　　　　～約５０ 2 1 3 A1 A2 A3 A4 GA6 GA7 GA8 6 RA1 RA2 RA3 RA4 RemoteLoad1(300MW) B1 B2 B3 B4 LocalLoad２(150MW) RC1 RC2 RC3 RC4 4 GA9 GA10 GA11 GA12 7 5 RemoteLoad3(300MW) 永田武，田原佳樹，国狭大介，藤田秀樹：「マルチエージェントによる自律分散型基幹系統事故復旧方式」，電学論，126-C, 2, pp. 187-193 (2006) C1 C2 C3 C4 LocalLoad3(300MW) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

13. エージェント技術の電力システムへの応用 ４．エージェントシミュレーション 事例１　価格形成過程の分析 • 「発電エージェント」と「需要エージェント」 • 行動価値関数 Q(s,a) Ｑ値　 ：状態 ：行動 ：エピソード ：学習速度パラメータ ：反復 での報酬 • エージェントの入札モデル　 網掛け部分の変化幅がそれぞれのエージェントの入札戦略 下村貴裕，最所祐一，藤井康正，山地憲治：「マルチエージェントモデルを用いた電力市場における価格形成過程の分析」，電学論，124-B, 2, pp. 281-290 (2004) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

14. エージェント技術の電力システムへの応用 ４．エージェントシミュレーション 事例１　価格形成過程の分析 • プラント種別　 • 　　自流式水力・原子力・石炭火力・LNG火力・石油火力　 • 解析内容　 ① プラント別シェアに対する市場価格（プラント種別のエージェント数が市場価格に及ぼす影響） ② 供給信頼性と価格決定の制度設計（需給逼迫ケース） 下村貴裕，最所祐一，藤井康正，山地憲治：「マルチエージェントモデルを用いた電力市場における価格形成過程の分析」，電学論，124-B, 2, pp. 281-290 (2004) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

15. エージェント技術の電力システムへの応用 ４．エージェントシミュレーション 事例２　分散EMSによるエネルギー取引手法の評価 • 電力と熱エネルギーの両者を考慮し，運用計画により消費エネルギー削減を目指す • 電力および熱の売買が自由な特別区域を想定 • 「生産者エージェント」と「消費者エージェント」 • 生産者エージェント：　消費者エージェントに電力 • と熱エネルギーの販売 • 消費者エージェント：　エネルギーを調達 八切好司，宮本俊幸，熊谷貞俊，森一之，北村聖一，山本隆也：「分散EMSにおけるエネルギー取引決定手法の評価」，電学論，128-C, 5, pp. 804-810 (2008) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

16. エージェント技術の電力システムへの応用 ４．エージェントシミュレーション 事例２　分散EMSによるエネルギー取引手法の評価 • 各エージェントは，与えられたエネルギー需要やCO2排出量の制約のもとで自己の利益を最大化するようにエネルギー運用計画（機器運転計画とエネルギー売買計画）を決定 • 仮想市場を用いて組織内の資源配分を行う「市場指向プログラミング(MOP: Market Oriented Programming)」を適用 八切好司，宮本俊幸，熊谷貞俊，森一之，北村聖一，山本隆也：「分散EMSにおけるエネルギー取引決定手法の評価」，電学論，128-C, 5, pp. 804-810 (2008) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

17. エージェント技術の電力システムへの応用 ４．エージェントシミュレーション 事例２　分散EMSによるエネルギー取引手法の評価 特別区域内のエージェントの例 ガスタービンと ガスボイラを設置 ガスタービンと ガスボイラを設置 ガスボイラのみを持ち発電能力を持たない 八切好司，宮本俊幸，熊谷貞俊，森一之，北村聖一，山本隆也：「分散EMSにおけるエネルギー取引決定手法の評価」，電学論，128-C, 5, pp. 804-810 (2008) TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

18. エージェント技術の電力システムへの応用 ５．まとめ • 電力システムへのエージェント技術の応用について述べた。 • 「エージェントコントロール」と「エージェントシミュレーション」の２つの流れがある。 • エージェントコントロール（実世界を対象）とエージェントシミュレーション（新しい電力システムの分析・評価）の重要性は今後益々期待されると考えられる。 TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション

19. TC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッションTC7　実世界とエージェントシミュレーション技術委員会企画セッション エージェント技術の電力システムへの応用 （広島工業大学） 　永　田　　武

20. エージェント技術の電力システムへの応用 • 日本のスマートグリッドの完成予想図 水素 ローカル 大規模集中型電源 ウインド ファーム 大規模分散型電源 メガソーラ 水力発電所 原子力発電所 火力発電所 小規模発電機 ガスタービン ガスエンジン 大規模ネットワーク 負荷機器 電力 ヒート ポンプ 電力 熱 電力 蓄電機器 電力 小規模ネットワーク マイクログリッド H2 電力 電力 電気自動車 H2 貯湯槽 可逆式 燃料電池 電力 電力 電力 蓄熱機器 負荷機器 風力発電 太陽光発電 出展：横山明彦：スマートグリッド（電気新聞ﾌブックス）

21. エージェント技術の電力システムへの応用 1990 2000 2000 • 電力システムアプリケーションにみる人工知の変遷 制御用計算機（ﾍﾞﾝﾀﾞｰ仕様） 論理生成 ES: エキスパートシステム 1980 1990 NN: ﾆｭｰﾗﾙﾈｯﾄﾜｰｸ 汎用ﾜｰｸｽﾃｰｼｮﾝ FZ: ﾌｧｼﾞｰ GA: 遺伝的ｱﾘｺﾞﾘｽﾞﾑ AI TS: ﾀﾌﾞｻｰﾁ 1995 BI MAS: ﾏﾙﾁｴｰｼﾞｪﾝﾄｼｽﾃﾑ 創発 知識発見 ﾈｯﾄﾜｰｸ科学 PSO: 粒子群最適化 ﾈｯﾄﾜｰｸの利用を前提 ｵｰﾌﾟﾝ自律分散ｼｽﾃﾑ ？ IA: 免疫ｱﾙｺﾞﾘｽﾞﾑ 2010 DM: ﾃﾞｰﾀﾏｲﾆﾝｸﾞ