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・前回授業に関する質問 ・格付け の低い(引き下げられた)企業は、資金調達 コ スト 高→経営悪化、の悪循環に陥るのでは? ・格付けは、どれ程頻繁に見直されるのか? ・格付けの対象は、その企業の株式ではなく、債務(のデフォルト・リスク) ○格付引下げと企業の経営危機 日産自動車の格付け推移(ムーディーズ) Baa1(98 年前半 )→ Baa3(98.11.) →Ba1(99.3. ダイムラークライスラーとの提携交渉失敗 ) 99.3. ルノーと資本提携 (6430 億円の出資 ) ゴーンによる大胆なリストラ
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・前回授業に関する質問 ・格付けの低い(引き下げられた)企業は、資金調達コ スト高→経営悪化、の悪循環に陥るのでは? ・格付けは、どれ程頻繁に見直されるのか? ・格付けの対象は、その企業の株式ではなく、債務(のデフォルト・リスク) ○格付引下げと企業の経営危機 • 日産自動車の格付け推移(ムーディーズ) • Baa1(98年前半)→ Baa3(98.11.) →Ba1(99.3.ダイムラークライスラーとの提携交渉失敗) • 99.3. ルノーと資本提携(6430億円の出資) • ゴーンによる大胆なリストラ →Baa3(01.12.)→・・・→A3 (08.5.) → Baa2:(09.2.)→Baa1(11.7.)→ A3(12.7. 13.6.現在)
格付引上げの理由 • 2001.12: Ba1→Baa3 • ルノーとの資本提携による資本面の強化 • ゴーン氏による大胆なリストラの成果 • 2011.7:Baa2→Baa1 • 事業の収益性の向上 • バランスシート上のcash positionの改善 • 世界市場での地位の向上 • 2012.7:Baa1→A3 • 世界の主要市場でのマーケット・シェアの拡大(北米、アジア、欧州、日本) • 収益性向上・財務体質の強化
第1章:金融仲介○金融システムの比較:市場型と銀行型第1章:金融仲介○金融システムの比較:市場型と銀行型 • ④コーポレート・ガバナンス機能 • 相対型:銀行による企業経営の規律付け • 銀行が貸出先の企業を監視 • 市場型:市場による規律付け • 株式市場・社債市場からの圧力 • 格付け会社による信用力・リスクの評価 • 運用会社による株主議決権の行使 • 経営に対して積極的に物言う株主・ファンド(アクティビスト) • 企業が買収される危険性 • ⑤取引のタイムスパンと事後的対応能力 • 相対型:長期継続的取引関係・Relationship重視 • 市場型:1回毎の取引の経済合理性を追求・Transaction重視 • 短期的市場圧力による企業淘汰の可能性
○ストラクチャード・ファイナンスSF格付 • 従来の格付対象:事業会社、金融機関、公的機関 • 1980年代の証券化の発展に伴い証券化を対象とする格付(SF格付)が始まる • 金融危機直前、世界の主要格付会社の収益の5割以上がSF格付によるもの • SF格付の特徴 • 証券化の対象資産のキャッシュフローの分析 • 公社債格付に比べて数理モデル・計量分析に大きく依存 • 特別目的会社SPC・サービサー等の証券化の仕組の安定性の分析 • 超過スプレッド:投資家への利払いが滞らないように、証券化対象資産からの金利収入の一部を証券化SPCに蓄えておくこと
・米国の証券化商品発行額は、金融危機(2008年)以降急落・米国の証券化商品発行額は、金融危機(2008年)以降急落
○証券化の仕組 サービサー 債権譲渡 ローン元利金 の回収・管理 (不足主体) 債務者 住宅ローン 負債・資本 住宅ローン A B S (余剰主体) 投資家 (資産担保証券) 証券市場 住宅 ローン 借入証書 銀行・ノン バンク オリジ ネーター SPC(特別 目的会社) ・Special Purpose Company ・Asset Backed Security
○格付会社の収入 ・格付会社:純粋民間会社 • 19世紀中頃米国で格付け始まる~1960年代: • 投資家からの情報提供料の受け取り(投資家側のニーズから格付会社が登場) • 米国:1960年代末~: • 投資家への情報提供料プラス • 背景:格付けの普及 • →格付けを取得しないと投資家が債券を買ってくれない。高い格付けを取得すれば低金利で債券の発行が可能。 • →発行体にとって格付け取得が必要 • 格付会社における格付料のウェイト増大 • Cf. ソブリン格付けにおいて先進国は格付会社に格付けを依頼しておらず(勝手格付け、非依頼格付)、格付料も払っていない。
・ ・Deb, P. & Murphy, G. ‘Credit Rating Agency : An Alternative Model’ p.3
○格付けの信頼性と利益相反 • 格付け対象の企業との癒着が生じないか、中立性は確保されるのか? • 同一人・組織が二つの相反する利害に同時に関わりを持つ状況で、一方の利益を図ることで他方の利益を侵害する(恐れがある)こと • 格付会社は、投資家と債券発行者と両方にサービスを提供し、両方の利害に関わっており、利益相反の危険性がある。 • 利益相反の可能性が存在する中で、格付会社による格付けの中立性・品質を保証する制度が存在するか? • ⇒存在しない
しかし、格付けの信頼確保につながるメカニズムが全く存在しない訳ではないしかし、格付けの信頼確保につながるメカニズムが全く存在しない訳ではない • 甘い格付け →格付けが高い企業でもデフォルトが多発 →投資家がその格付会社の格付けを信用しない(その格付会社の評判が悪くなる) →その格付会社から高い格付けを取得しても、低い金利で債券が発行できない →債券発行企業がその格付会社に格付けを依頼しなくなる • 投資家は格付会社のこれまでの実績から、その格付けの信頼性を判断する • しかし、こうした評判のメカニズムだけでは不十分であることが、サブプライム金融危機で示された。 • 危機後には金融規制が強化され、格付会社の情報開示を強化→評判のメカニズムがより働きやすい情報環境を作る
○サブプライム金融危機と格付の信頼性 ・ABSCDO(再証券化商品)の格下げ状況 ・民間RMBSの格下げ状況 09.08.07現在 発行当初AAA(05-07): 格下げ率:63% BB以下への格下げ:52% IMF, Global Financial Stability Report, Oct.2009, p.93,88 ・すべての証券化商品で大量・大幅な格下げが生じた訳ではない:格下率(Moody’s) RMBS:住宅ローン担保証券、CMBS:商業不動産ローン担保証券
・ABSCDO:再証券化商品 • ・ サブプライム住宅ローンの証券化RMBS(住宅ローン担保証券) • ・RMBSを再度証券化した CDO(債務担保証券):ABSCDO IMF. Global Financial Stability Report April 2008 p.60
サブプライムRMBSの格付の問題点 • 当初の推定損失率が低過ぎた←データに基づく • サブプライムローンの推定損失率の度重なる改定(S&P)→大量の大幅格下げ • 当初(06年):6~7% → 12 ~14%(07年7月) → 19% (08年1月) • データの信頼性 • サブプライム住宅ローンは新しい商品であるため、データ期間が短い • データの期間は住宅価格上昇の時期であり、損失率が小さい • 2006~07年には虚偽の情報に基づく貸出(オリジネーターのモラルハザード)が横行
格付会社と証券化商品格付け • 世界の大手格付会社の収入の5割以上は証券化商品の格付けからであった • 証券化商品格付け(SF格付け)では、格付依頼が少数の大手の金融機関からに限定 • →格付け依頼側の力が相対的に強い • 企業格付けでは外部から債務償還能力を評価 • 証券化商品が投資家に売却できる形で、何とか案件を成立させようという誘因が格付会社に働く( )
○格付会社規制 • 格付会社への規制の導入 • 米国:2006年格付機関改革法(SECによる監督)、2010年ドッド・フランク法 • 日本:2009年金融商品取引法改正(金融庁による監督) • EU:2009年格付機関規制法 • 登録制導入、情報公開の強化、金融規制(e.g. 銀行の自己資本比率規制)上利用する格付は登録格付会社のものでなかればならない • Cf. リスク・アセット方式の自己資本比率規制 • 規制・監督当局による格付内容への介入は禁止
金融危機後の規制強化:米国の例 • 利益相反の防止: • 顧客対応部門と格付付与部門との分離の徹底、格付会社によるアレンジャーへの提案行為禁止 • 格付アナリストに対するローテーション制度の導入(欧州と日本) • 欧州:連続4年(日本は5年)が上限で、2年間のインターバル • 証券化格付上利用された情報(原資産の性質・パフォーマンス、証券化の法的ストラクチャー等)の他の登録格付会社への提供 • 格付けのパフォーマンス・手続き・手法の情報開示: • 格付けの種類(事業会社、金融機関、証券化、政府)毎に、1年、3年、10年の格付パフォーマンス統計(格付の推移、デフォルト率)の作成・公表 • 証券化の原資産情報の検証やオリジネーターの質の評価についての情報開示
投資家支払いモデルへの回帰は可能か? • 格付会社の収入が激減し、精密な分析に必要な人員・経費を確保できなくなり、格付けの精度が低下する危険性がある • Cf. 米国のEagan Jones社は投資家支払いモデルの格付会社:規模は小さい、主要企業約1000社を格付け • 「投資家支払いモデル+第三者機関が発行体から格付料を集め格付会社に配分する」等のアイデアあり
第2章参考文献 • 格付投資情報センター『格付けQ&A』日経新聞社.第2章 2001年 • 格付投資情報センター「ソブリン格付けの考え方」 • 黒沢義孝『格付けの経済学』PHP新書 1999年 • 江川由紀雄『サブプライム問題の教訓:証券化と格付けの精神』商事法務 2007年 • 江川由紀雄「証券化商品の大量格下げが示した統計モデルの限界」『金融財政事情』08年2月25日号 • 福田徹「証券化商品に対する格付けを考える」『証券レビュー』48巻1号08年1月 • 小立敬「日米欧の新たな格付機関規制の方向性」『野村資本市場クォータリー』2009 Winter • 淵田康之『グローバル金融新秩序』日本経済新聞社 第Ⅳ章.2009年