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わが国ベンチャー・ファイナンス研究の現状と課題 -ベンチャー・キャピタルと新規公開市場を中心に-

わが国ベンチャー・ファイナンス研究の現状と課題 -ベンチャー・キャピタルと新規公開市場を中心に-. 神戸大学大学院経営学研究科 忽那憲治 Email: kutsuna@rose.rokkodai.kobe-u.ac.jp URL: http://www.b.kobe-u.ac.jp/kutsuna/index.htm. 新規公開コストと長期パフォーマンス. 1.新規株式公開のコスト 2.直接的コストの分析視角 3.間接的コスト(アンダープライシング)の分析視角 4.新規公開制度(入札方式とブックビルディング方式)とアンダープライシング

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わが国ベンチャー・ファイナンス研究の現状と課題 -ベンチャー・キャピタルと新規公開市場を中心に-

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  1. わが国ベンチャー・ファイナンス研究の現状と課題-ベンチャー・キャピタルと新規公開市場を中心に-わが国ベンチャー・ファイナンス研究の現状と課題-ベンチャー・キャピタルと新規公開市場を中心に- 神戸大学大学院経営学研究科 忽那憲治 Email: kutsuna@rose.rokkodai.kobe-u.ac.jpURL: http://www.b.kobe-u.ac.jp/kutsuna/index.htm

  2. 新規公開コストと長期パフォーマンス 1.新規株式公開のコスト 2.直接的コストの分析視角 3.間接的コスト(アンダープライシング)の分析視角 4.新規公開制度(入札方式とブックビルディング方式)とアンダープライシング 5.新規公開時期とアンダープライシング 6.長期株価パフォーマンスの決定要因 7.長期業績パフォーマンスの決定要因

  3. 1.新規株式公開のコスト • 直接的コスト • 新規株式公開に伴って公開企業が直接負担するコスト(証券会社の引受手数料、監査手数料、印刷費等他) • 間接的コスト • 公開価格と初値の乖離 • 投資家からみれば初期収益率(Initial Return) • 企業からみればアンダープライシング(過小値付け)

  4. 直接的コスト • 『新株式発行並びに株式売出届出目論見書』 • 引受手数料率=(発行価格-引受価額)/発行価格 • 引受価額:引受人が買取引受を行う • 発行価格(公開価格):この価格で売り出しを行う • 発行価格と引受価額の差額=引受人の手取金

  5. 直接的コスト • 新規発行による手取金の額 • 払込金額の総額-発行諸費用の概算額=差引手取概算額 • 払込金額の総額は、引受価額の総額。 • 発行諸費用の概算額には引受手数料は含まれない。

  6. 間接的コスト (初期収益率とアンダープライシング) 初値(1200円) 200円のリターン 初期収益率20%(公開価格1000円で購入した投資家は、初値1200円で売却すれば200円のリターンを得られる) 200円の過小値付け アンダープライシング20%(公開価格1000円で発行した公開企業は1株1200円で資金調達できたが1000円で調達した) 公開価格(1000円)

  7. 新規公開コストに関する先行研究 • 発行方法別、発行証券別、発行規模別に分析 • Ritter (1987) • Jenkinson (1990) • Aggarwal and Rivoli (1991) • Zhao (1996)

  8. 2.直接的コストの分析視角 • 引受手数料 • アメリカは7%水準で固定:なぜ? • Chen and Ritter (2000) • 証券会社の名声と引受手数料水準との関連性 • Carrow (1999) • 日本:入札方式採用期とブックビルディング方式採用期 • 入札期は約3.1%に固定(3.1%+2円) • BB期はスプレッドは自由に決定可能

  9. 引受手数料(日本の入札方式期) • 基本的には、3.1%+2円に低位固定 • アンダーライターの視点からすれば、引受手数料によってリスクをとることは困難。 • アンダープライシングによるリスク回避。ただし、発行企業に対する価格交渉力が必要。

  10. 引受手数料とアンダープライシングとの関連性引受手数料とアンダープライシングとの関連性 • 公開価格が低く設定される可能性についてIbbotson (1975)が指摘した理由の1つ • 「引受のスプレッドがリスクを想定した費用のすべてを含まず、その結果、引受業者がこれらのリスクを最小にするため低い価格を付けなければならなくなる場合」 • わが国の入札発行採用期には、引受手数料(スプレッド)は 3%強の低い水準でほぼ固定された状況にあった。

  11. 3.間接的コスト(アンダープライシング)の分析視角3.間接的コスト(アンダープライシング)の分析視角 • アンダープライシングに関する先駆的研究(1960年代後半) • Tinic (1988)の整理 • 情報の非対称性(非対称情報仮説) • Adverse Selection Models (The Winner’s Curse) • Signaling Models • Principal-Agent Models

  12. アンダープライシングに関する先駆的研究 • 1960年代後半から70年代初頭(Reilly and Hatfield (1969)、McDonald and Fisher (1972)、Logue (1973)、Ibbotson (1975)) • その後30年間の研究の蓄積→海外の多くの実証研究において高い初期収益率が観測されている(Loughran et al. (1994)、Keasey and McGuinness (1995))

  13. Tinic (1988) • 危険回避的引受業者仮説(Risk-Averse-Underwriter Hypothesis) • 買い手独占仮説(Monopsony-Power Hypothesis) • 投機的バブル仮説(Speculative-Bubble Hypothesis) • 非対称情報仮説(Asymmetric-Information Hypothesis) • 保険機能仮説(Insurance Hypothesis)

  14. わが国引受市場における寡占 • Logue (1973) :「発行者側の価格交渉力が強ければプレミアムは小さくなるが、需要独占の業界である引受業界においては、アンダーライターの強い交渉力によって価格設定が行われる」 • Jenkinson (1990):わが国証券市場における4社寡占との関連性に言及

  15. 情報の非対称性(非対称情報仮説) • 投資家間の情報の非対称性(逆選択仮説:Rock (1986)) • 公開企業と投資家間の情報の非対称性(シグナリング仮説:Allen and Faulhaber (1989), Grinblatt and Hwang (1989), Welch (1989)) • 公開企業と引受業者間の情報の非対称性(プリンシパル-エージェント仮説:Baron (1982))

  16. 非対称情報 • レモンの市場 • 逆選択(隠された情報) • モラルハザード(隠された行動):注意深い行動をとる誘因が欠落していること • シグナリング(マイケル・スペンスの教育市場のモデル) • 分離均衡と一括均衡

  17. Adverse Selection Models • Winner’s Curse Model • Informed Investors & Uninformed Investors • アンダーライターは、Uninformed Investorsを新規公開株の購入へと向かわせるために過小値付けする。 • Rock (1986), Beatty and Ritter (1986)

  18. Signaling Models • High Quality Firm & Low Quality Firm • High Quality Firmは、質が高いというシグナルを送るためにアンダープライシングを行い、その後の増資において、より高い価格での資金調達を行う。 • Allen and Faulhaber (1989), Grinblatt and Hwang (1989), Welch (1989)

  19. Principal-Agent Models • 投資家の需要に関するアンダーライターの優れた情報を用いる代償として、発行企業はアンダーライターに対して過小値付けすることを求める。 • Baron (1982), Muscarella and Vetsuypens (1989)

  20. アンダーライターの名声とアンダープライシングアンダーライターの名声とアンダープライシング • McDonald and Fisher (1972)、Logue (1973)、Neuberger and Hammond (1974)、Block and Stanley (1980)、Baron (1982)、Neuberger and LaChapelle (1983)、Beatty and Ritter (1986)、Johnson and Miller (1988)、Carter and Manaster (1990)、Carter et al. (1998) • 高い名声のアンダーライターは、名声の低いアンダーライターに比べて、アンダープライシングの程度が小さい

  21. VC投資とアンダープライシング • Barry et al. (1990)、Megginson and Weiss (1991) • 高いモニタリング能力によって、VCの投資がアンダープライシングの低下(間接的コストの低下)をもたらしていることを実証。

  22. 4.新規公開制度とアンダープライシング • 類似会社比準方式(~1989年3月) • 入札方式(1989年4月~1997年9月) • 2度の変更 • 入札方式とブックビルディング方式の選択(1997年9月~現在) • 実質的にはブックビルディング方式(全企業がBBを選択 

  23. 類似会社比準方式(1989年3月まで) • 公開価格は、日本証券業協会および証券取引所のフォーマットに基づき決定される。 • アンダーライターは類似会社数社を選び、それら企業の利益、配当、純資産をもとに公開価格を算出する。 • アンダーライターは、この算出された公開価格で株式を市場に提供する。 • 引受手数料は約3.5%に固定(3.5%+2円)

  24. 入札方式(1989年4月~1997年9月) • 発行企業は、公開株式の一定部分を入札によって直接提供する。 • アンダーライターが入札の価格帯を設定する。ただし、下限価格は前述の算出式に基づいて決定される。 • 公開価格は、入札落札加重平均価格に設定される。 • 引受手数料は約3.1%に固定(3.1%+2円)

  25. 入札方式における2度の変更 • 1992年4月:入札の上限価格が廃止。下限価格は算出式に基づく価格の85%に引き下げ。 • 1992年12月:アンダーライターの公開価格決定において一定に自由裁量が認められる。落札加重平均価格からの割引が可能となる。 • 1995年1月から97年9月までに入札発行方式によって新規公開した企業321社のディスカウント率を、ディスカウント率={(落札加重平均価格-公開価格)/落札加重平均価格}*100として算出すれば、平均7.10%(標準偏差4.43%、最小値0%、最大値18.06%)

  26. ブックビルディング方式(1997年9月~現在)ブックビルディング方式(1997年9月~現在) • 世界レベルでもっとも標準的な価格決定方式: Sherman (2000) • アンダーライターが、投資家の需要を探りながら(ロードショーなど)、公開企業との間の交渉によって公開価格を決定する。 • アンダーライターの引受手数料(スプレッド):自由に決定可能

  27. 「市場実験」の効果に関する実証分析 • 入札方式への移行を対象(日本) • Pettway and Kaneko (1996) ; Hebner and Hiraki (1993); Kerins, Kutsuna and Smith (2003) • ブックビルディング方式への移行を対象(日本) • Kaneko and Pettway (2001); Kutsuna and Smith (2002); Kutsuna, Smith and Smith (2003) • 海外市場の試み • ギリシャ:Kazantzis and Thomas (1996) • フランス:Darrien and Womack (2000)

  28. ブックビルディング方式は高コスト?

  29. 入札方式期とブックビルディング方式期の公開企業の属性比較入札方式期とブックビルディング方式期の公開企業の属性比較 • Kutsuna and Smith (2002) • 設立後年数と従業員数の比較 • 入札方式期においては、設立後間もない小規模企業の参入を排除? • ブックビルディング方式の導入により参入が可能

  30. ブックビルディング方式の効果 • Kutsuna and Smith (2002) • ブックビルディング方式は、大規模で成熟した公開企業にとってコスト的にメリットがある。 • 小規模な公開企業にとって入札方式はコスト的にメリットがあったが、質の高いベンチャー企業を市場から排除した。→入札方式期に比べて高コストではあるが、ブックビルディング方式は新規公開市場から排除されていた質の高い企業の公開を可能にした。

  31. 5.新規公開時期とアンダープライシング • Hot IssueとCold Issue • Ibbotson and Jaffe (1975) • Ritter (1984) • 株価指数の推移状況 • 初期収益率の推移状況

  32. 6.長期株価パフォーマンス • 先駆的研究 • VC投資の役割との関連性 • アンダーライターの役割との関連性 • 新規公開企業の属性との関連性 • 実証研究(米英以外) • 実証研究(日本

  33. 先駆的研究(1) • Ritter (1991) • 1975-84年のアメリカの新規公開企業をサンプルとして、公開後3年間の長期株価パフォーマンスを分析。 • 株価パフォーマンスがナスダック指数他いくつかのベンチマークと比較して相対的に悪いこと(long-run underperformance)を指摘。 • その原因として、投資家が設立後間もない成長初期段階の企業の収益について楽観視しすぎていたこと、公開企業もこうした機会の窓(Windows of Opportunity)に便乗したことを指摘。

  34. 先駆的研究(2) • Loughran and Ritter (1995) • 1970年から1990年までの期間に新規公開もしくは増資をした企業のその後5年間の長期株価パフォーマンスを分析。 • 新規株式公開企業では5%、増資企業では7%のリターンしか投資家にもたらしていないことを指摘。 • こうした現象を「株式発行のパズル(New Issue Puzzle)」と呼んでいる。

  35. 先駆的研究(3) • Levis (1993) • 1980年から1988年までの期間にロンドン証券取引所に新規公開した企業を対象に3年間の長期パフォーマンスを分析。 • Ritter等によって指摘されたパズル現象がアメリカに限られたものではなく、イギリスにおいても同様にみられることを指摘。

  36. VC投資の役割との関連性 • Brav and Gompers (1997):アメリカ • VC投資先企業はVC非投資先企業を上回るパフォーマンスを示し、新規公開企業の低パフォーマンスは小規模なVC非投資先企業によってもたらされていると指摘。 • Espenlaub, Garrett, and Mun (1999):イギリス • アメリカを対象としたBrav and Gompers (1997)の分析結果と同様、両者の間に正の関連がみられることを実証的に明らかにした。

  37. アンダーライターの役割との関連性 • Carter, Dark, and Singh (1998) • アンダーライターと長期株価パフォーマンスとの関連性を分析し、長期パフォーマンスの悪化は、名声のあるアンダーライターによって引き受けられた新規公開においてはそれほど深刻ではないとの実証結果を提示。

  38. 新規公開企業の属性との関連性 • Brav, Geczy, and Gompers (2000) • 1975年から92年の新規公開企業と増資企業の長期株価パフォーマンスを分析。 • 低パフォーマンスが時価/簿価比率の低い小規模企業に集中している実態を明らかにした。 • 新規公開企業はこうした小規模企業が大半であり、これらの性格を反映しているのでは?

  39. 実証研究(米英以外の市場) • Aggarwal, Leal, and Hernandez (1993) • ブラジル、チリ、メキシコといった中南米の新規公開企業を対象 • Firth (1997) • ニュージーランドを対象 • Ljungqvist (1997) • ドイツを対象 • 米英同様にアンダーパフォーマンスが観察

  40. 実証研究(日本市場)(1) • Hwang and Jayaraman (1995) • 1975-89年の間に東京証券取引所に新規上場した企業182社を対象 • アメリカ企業を分析対象としてオーバーリアクション仮説を主張したRitter [1991]とは大きく異なる実証結果を提示 • 長期パフォーマンスが、ベンチマークとするインデックスによって大きく影響される点については同様の結果 • 長期パフォーマンスが業種によって大きく異なること、公開直後に初値がついた企業と公開後しばらくの期間初値がつかなかった企業の間で極めて大きなパフォーマンスの違いがあることを指摘

  41. 実証研究(日本市場)(2) • Cai and Wei (1997) • 1971-92年の東京証券取引所への新規上場企業180社の長期株価パフォーマンスを公開後1年、3年、5年の3期間について分析 • 長期パフォーマンスの測定が、採用するベンチマークによって大きく影響されるという先行研究の結果を受けて、8つのベンチマークを用いて分析。1年後と3年後の2つの期間に関しては8つすべてのベンチマークで、5年後に関しては8つのうち6つのベンチマークでアンダーパフォーマンスが観測

  42. 実証研究(日本市場)(3) • Hamao, Packer, and Ritter (2000) • 1989年から1995年までの新規店頭公開企業を対象に、VCタイプと長期株価パフォーマンスとの関連性を分析 • 海外および独立系のVCを除いては、VC投資先企業の長期株価パフォーマンスがVC非投資先企業に比べて良好であるとは言えないとの実証結果を提示

  43. 実証研究(日本市場)(4) (出所)忽那 (2001).

  44. 決定要因(1) • 公開所用年数(-) • 新規公開までの所要年数が長い企業ほど株価パフォーマンスが悪い。 • 公開株数の発行済株式数に占める比率(-) • 発行済株式の大きさに比して公開株式数の大きな発行においては、株価パフォーマンスが悪い。 • 公開前後における筆頭株主の保有比率の変化(-) • 筆頭株主保有比率の公開後の減少幅が小さいほど(筆頭株主による持分放出の程度が小さく、公開後も相対的に筆頭株主が高い保有比率を維持している企業ほど)、株価パフォーマンスが悪い。

  45. 決定要因(2) • VC投資 • 統計的に有意ではないが、係数の符号はいずれにおいてもマイナス • VC投資先企業のパフォーマンスがVC非投資先企業よりも悪い傾向にある。 • アンダーライターとの関連性 • 野村証券ダミーと大和証券ダミーの係数がプラス • 日興証券ダミーと山一証券ダミーの係数がマイナス

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