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東アジア諸国における インフレ・ターゲット導入の評価 -日本への示唆-

東アジア諸国における インフレ・ターゲット導入の評価 -日本への示唆-. 田口 博之 . 平成 22 年 7 月 17 日 日本国際経済学会関東支部.  * なお、本プレゼンの内容は全て執筆者個人の見解であり、財務省及び財務総合政策研究所の公式見解を示すものではない。. ●  背景 ○ インフレ・ターゲット( IT )は、 1990 年代以降、まずは先進国で導入が活発化<ニュージーランド、カナダ、イギリス、スウェーデン、オーストラリア等>   ⇒ 1970 年代後半からの高インフレ時代に、インフレ期待を収束させる政策コミットメントが必要

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東アジア諸国における インフレ・ターゲット導入の評価 -日本への示唆-

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  1. 東アジア諸国におけるインフレ・ターゲット導入の評価-日本への示唆-東アジア諸国におけるインフレ・ターゲット導入の評価-日本への示唆- 田口 博之  平成22年7月17日 日本国際経済学会関東支部  * なお、本プレゼンの内容は全て執筆者個人の見解であり、財務省及び財務総合政策研究所の公式見解を示すものではない。

  2. ● 背景 ○ インフレ・ターゲット(IT)は、1990年代以降、まずは先進国で導入が活発化<ニュージーランド、カナダ、イギリス、スウェーデン、オーストラリア等>   ⇒1970年代後半からの高インフレ時代に、インフレ期待を収束させる政策コミットメントが必要 ○ その後、ITの導入は新興市場国でも活発化<チリ、ブラジル、南アフリカ、東アジア4カ国:韓国 1998.4, インドネシア 2000.1, タイ 2000.4, フィリピン 2002.1>   ⇒ペッグ制の下で通貨危機を経験した新興市場国の多くは、変動相場制を採用 ⇒インフレ抑制のアンカーとして、ペッグ制に代わるものが必要  ○ 先進国のIT導入はほぼ肯定的評価。新興市場国の評価については、研究蓄積が少なく、評価も分かれている(ITを約10年前に導入したばかりの東アジアでの研究蓄積は希少)  ○ 新興市場国のIT導入の難しさ    -金融政策の重点がITよりも為替政策に ←ドル建ての対外債務&Fear of Floating    -小国開放経済では為替の変動自体がインフレのコントロールを困難に=pass-through    -ITへの信頼性の欠如 ←金融政策の揺らぎ(政治的圧力等)、インフレ予測の難しさ  はじめに:背景

  3. はじめに:本研究の目的 ● 本研究の目的  ○東アジア諸国に焦点を当てて、IT導入後のパフォーマンスを定量的に評価  ○具体的には以下の二つを分析   ①政策反応関数の推計=IT導入がインフレ感応的な金融政策に結びついているかどうかを検証   ②インパルス応答関数(VARモデル)の推計=IT導入によって金融政策が実際にインフレ抑制効果を発揮しているかを検証  ○以上について、IT導入4カ国(韓国、インドネシア、タイ、フィリピン)を対象に、IT導入前と導入後の期間に分けて分析。また比較のためにIT未導入のマレーシアについても分析。

  4. 先行研究(先進国を中心とする包括的研究) ○Bernanke and Mishkin (1997) -ITの利点:透明性、説明責任の明確化、政策論議の中での長期的視野への傾注等 ○Mishkin and Posen (1997) -IT先行導入3カ国(ニュージーランド・カナダ・イギリス)及びドイツ(通貨ターゲット導入)の事例を分析 -いずれの事例も、低インフレ実現、中銀の説明責任向上、金融政策への理解醸成等に貢献 ○Bernanke et al. (1999) -ITの5つの要素を提示:①インフレ数値目標の設定、②物価安定を最終ゴールとする中銀の政策コミットメント、③フォワードルッキングな政策形成、④ターゲット決定とその理由に関する説明責任、⑤ターゲット実現に関する説明責任 ○Mishkin and Schmidt-Hebbel (2007) -先進国の中でのIT採用国と非採用国のパネル分析 -分析結果:IT導入は、1)長期的な低インフレの実現、2)石油価格や為替ショックに対する価格変動の安定化、3) 金融政策の独立性・効率性の向上、4)インフレのターゲット水準への収束化に寄与 ⇒先進国のIT導入は、概ね肯定的評価が定着

  5. 先行研究(新興市場国を対象とした研究) ⇒研究蓄積が相対的に少なく、またIT導入の困難性から評価が分かれている <IT導入に条件付で肯定的評価をしているもの>  ○Mishkin (2000) and (2004)   -ITは新興市場国にとってはより複雑であるが、正しく運営されれば経済安定化に寄与   -チリやブラジルの事例から、ITの成功には、中銀の努力に加えて、財政赤字解消や金融セクターの規制・監督が不可欠  ○Lin (2009)   -13のIT導入新興市場国の分析から、ITは低インフレ・物価安定に寄与。但し、そのパフォーマンスは財政、為替、導入時の状況等にも依存 <IT運営に対する助言・提言を行っているもの>  ○Fraga et al. (2003)   -ブラジルの事例から、市場とのコミュニケーション・透明性・適切なターゲットバンドの設定等を助言  ○Ito and Hayashi (2004)   -IT導入4カ国(韓国、インドネシア、タイ、フィリピン)を比較分析し、IT導入を評価   -二つの提言:①新興市場国は、先進国よりも、ターゲット中心を若干高めに、またレンジを若干広めに設定すること、②小国開放経済の場合は、ITと変動相場制(BBC)の両立を図ること<ターゲットは期待の安定に寄与し、レンジは柔軟性を許容する> <IT導入に否定的な評価をしているもの>  ○ Eichengreen(2002)   -新興市場国のIT導入は、①小国開放経済、②ドル債務、③政府の信頼性欠如から困難

  6. 東アジアの実証研究と本研究の貢献 <東アジアの実証研究>  ⇒ ITを約10年前に導入したばかりで、実証的な研究蓄積は極めて希少  ○Kim & Park (2006)   -韓国について、政策反応関数により金融政策ルールがGDPギャップとともにインフレ感応的であることを、またVARモデルにより金融政策ショックによるコアインフレへの有意な影響を検証。  ○Siregar et al. (2008)   -インドネシア・タイについて政策反応関数により金融政策ルールがインフレ感応的であることを検証(インドネシアは安定期・変動期を通じて、タイは安定期のみでインフレ感応的) <本研究の貢献=東アジアを対象に包括的に研究>  ⇒ IT導入4カ国全てについて、 IT導入前後に期間を分けて、政策反応関数及びインパスル応答関数(VARモデル)を、同一手法で包括的に推計。  ⇒ さらにIT未導入のマレーシアについても、比較検討のために推計:仮にIT導入国でインフレ抑制のパフォーマンスが示された場合、それがIT導入によるものか、グローバルトレンドによるものかに一定の示唆を与える

  7. 実証分析:使用データ&推計期間 <使用データ> ○ IFS(IMF)の四半期データ   金利: ”Money Market Rate ” in line 60b   物価: ”Consumer Prices” in line 64 (2005=100)   生産: ”Industrial (Manufacturing) Production” in line 66 (2005=100) ○対象国: 韓国, インドネシア, タイ, フィリピン,マレーシア <推計期間>  ○IT導入前期間とIT導入後期間に分割(詳細は別紙) ○IT導入前期間:  対象5カ国全てドルペッグ採用時(1985Q1)~1997-98アジア通貨危機発生前 ○IT導入後期間: IT導入時(韓国:危機終了時、マレーシア:ドルペッグ採用時)~2009Q4 ○ドルペッグ制、通貨危機期間の区分は、Reinhart et al. (2009)による。 

  8. 政策反応関数の推計 ○forward-looking型とbackward-looking型に分けて推計 ⇒新興市場国のインフレ予測の困難性等(Eichengreen;2002)  -Clarida et al. (1998):日・独・米でforward-looking型を検証  -Kim & Park (2006):韓国でforward-looking型を検証  -Siregar et al. (2008):インドネシア・タイでbackward-looking型を検証 ○推計モデル: forward-looking型:  it = θ0 +θ1it-1 +θ2Et∆pt+4 +θ3Etgapt+4 backward-looking型:it = θ0 +θ1it-1 +θ2∆pt.t-4 +θ3gapt i: 金利、p:物価、gap:産出ギャップ(HPフィルターとの乖離)、 Et∆pt+4:t期におけるt+4期までのインフレ期待、 ∆pt.t-4:t-4期からt期までのインフレ率    ⇒θ2(1-θ1):長期のインフレ反応係数 ⇒IT導入で有意に係数が拡大するかを検証   ⇒θ3(1-θ1):長期の産出ギャップ反応係数 ○推計手法  -自己ラグ等の内生性の問題をクリアするためGMM推計(含む過剰識別検定)を行う

  9.  インパルス応答関数の推計 ○VARモデルの推計 - Christiano et al. (1996), Kim & Park (2006)のモデルを参照  - IP(生産)、CPI(物価)、MMR(金利)の3変数で推計   *マネーサプライを除外 ←政策反応関数と整合的とする等  - 定数項を含む  - ラグ・パターンは赤池基準による ○インパルス応答関数 - 政策(MMR)ショックがCPIに与える影響を20四半期トレイス  - 95%のエラーバンドを設定

  10. 推計結果

  11. 結果の総括・解釈 ○韓国:forward-lookingなインフレ反応ルール(IT導入とリンク)⇒ インフレ抑制的な政策効果あり ○インドネシア・タイ: backward-lookingなインフレ反応ルール(IT導入とリンク)⇒ 政策効果なし       *政策ルールの相違=民間主体の期待・行動の相違=政策効果の相違        (backward-looking⇒インフレ予測、ひいてはITへの信頼性欠如) ○フィリピン:インフレ反応ルールなし(IT導入とリンクなし)⇒政策効果なし       *1999年12月よりドルペッグに回帰=金融政策の自律性喪失(米国金利に感応的) ○マレーシア:インフレ反応ルールなし(IT未導入)⇒政策効果なし

  12. 日本のデフレとインフレ/プライス・ターゲッティング日本のデフレとインフレ/プライス・ターゲッティング ○日本のデフレ問題:均衡所得より左側の世界(P4参照)で、AD曲線下方シフトを如何に食い止め、上方シフトさせるか ⇒ 金融政策の量的緩和効果(時間軸効果、ポートフォリオ・リバランス効果、金融システム不安抑制効果等)、財政政策の効果の議論に加えて、デフレ・ゼロ金利下のITの議論あり。 ●Krugman(1998):日本で4%程度(15年間)のインフレ・ターゲティング 提案⇒実質金利低下効果   ●Ito(1999):日本でのインフレ・ターゲティング導入(説明責任、独立性、期待形成)を提言、 Ito & Mishkin(2004):IT+非伝統的金融政策、Ito(2004):日銀のIT不採用の理由を検討 ●Bernanke (2003): ①プライスレベル・ターゲティング(P20)、②BOJバランスシート⇒ボンドコンバージョン(=日銀の金利リスク軽減)、③財政金融政策協調⇒政府債務のmonetization=inflation tax ●Eggertsson & Woodford (2003):クルーグマン・モデルの動学化により、ゼロ金利下の最適金融政策(損失最小化)としてプライスレベル・ターゲティング(⇒management of expectation)を論証 ●Berg & Jonung (1999):デフレ化のプライスレベル・ターゲティング-スウェーデン(1931-37)の経験(P21) ●Mehrotra (2009):構造VAR+レジーム・スウィッチイング・モデルにより、日本のゼロ金利下における実質金利低下のプラス効果を検証⇒プライスレベル・ターゲティングによる期待形成の重要性を示唆 Reference: Bernanke, B.S. 2003. “Some Thoughts on Monetary Policy in Japan”, 「金融経済研究」第20巻2003年10月. Eggertsson, G.B. and M. Woodford. 2003. “The Zero Bound on Interest Rates and Optimal Monetary Policy”, Brookings Papers on Economic Activity, 1:2003. Ito, T. 1999. “Introducing Inflation Targeting in Japan”, Financial Times, October 19. Ito, T. 2004. “Inflation Targeting and Japan: Why Has the Bank of Japan not Adopted inflation Targeting?” NBER Working Paper 10818, September 2004. Krugman, P.R. 1998. “It's Baaack: Japan's Slump and the Return of the Liquidity Trap”, Brookings Papers on Economic Activity, Vol. 1998, No. 2, pp. 137-205. Nishkin, F.S. and T. Ito. 2004. “Two Decades of Japanese Monetary Policy and the Deflation Problem”. NBER Working Paper 10878, October 2004. Mehrotra, A. 2009. “The case for price level or inflation targeting –What happened to monetary policy effectiveness during the Japanese disinflation?” Japan and the World Economy 21 (2009):280-291. Berg, C. and L. Jonung. 1999. “Pioneering price level targeting: The Swedish experience 1931-1937”, Journal of Monetary Economics 43 (1999): 525-551.

  13. プライスレベル・ターゲッティングのイメージプライスレベル・ターゲッティングのイメージ 物価水準 通常のフェーズ レフレ・フェーズ 正常時の物価トレンド:1% プライスレベル・ギャップ:5% インフレ・ターゲティング プライスレベル・ターゲティング ○デフレのマイナス効果のリカバリー ○デフレ脱却の期待形成が容易に 実績 目標達成のインセンティブ欠如    ⇒インフレ・ターゲティングの失敗 時間 1998 2003

  14. スウェーデンの経験:デフレ化のプライスレベル・ターゲッティングスウェーデンの経験:デフレ化のプライスレベル・ターゲッティング ○背景 -1920年代末からの世界恐慌下におけるデフレ、金本位制からの離脱⇒アンカーの必要性 -Wicksell, Cassel, Heckscher,Davidson等の経済学者の影響力 ○ターゲティングの内容 ・1931・プログラム:金本位制中止・「クローナ購買力はあらゆる手段で維持されるべき」 ・1932-33・プログラム:変動相場制維持(※)・物価水準安定・低金利維持・中銀独立性確保等 -ターゲティング:the starting point (Sep. 1931)…should be “the domestic price level and the needs of Sweden’s economy” -指標:中銀が週毎に発表するCPIとともに、WPI等他の指標も考慮(the cost of livingを重視、予測機能・能力なし) -金融政策の手段:公定歩合が中心(金利はゼロではなく操作の余地あり)、マネーサプライは考慮外 -中銀独立性:目標は国会・政府決定、手段は中銀の裁量 goal dependence & instrument independence(法的変更なし) ※1933.7英ポンドペッグ採用⇒英国の物価上昇の影響がリフレに貢献 ○評価(毎年評価by中銀、1933・1937評価by政府) -1933評価:中銀に対して目標未達成の批判  ⇒積極的対応と財政政策との連携を要求←ケインズの影響 -1937評価:物価動向を評価(特にWPIは恐慌前の水準に)  ⇒財政政策との連携、経済安定・完全雇用の目標強調  →Ohlin等Stockholm School台頭、ターゲティングは事実上終焉へ ●Heckscherによるconfidence(=期待)役割強調

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