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開発における投資環境改善と 民間投資

開発における投資環境改善と 民間投資. FASID 開発援助動向研究会 第45回2005年10月14日 井川紀道 日本大学大学院グローバルビジネス研究科教授. 本日の目的. 1.前提とイントロ: (1)最近のFDIの動向 (2)開発における民間投資の役割     ーミレニアム開発目標、 NEPAD 2.検証 (1)投資環境と民間投資:投資環境が、どれだけ外国からの民間投資の妨げとなっているか。(いくつかの例示と考察)   -世銀の世界開発報告2005;投資環境改善報告( A better investment climate for everyone)

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開発における投資環境改善と 民間投資

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  1. 開発における投資環境改善と民間投資 FASID開発援助動向研究会 第45回2005年10月14日 井川紀道 日本大学大学院グローバルビジネス研究科教授

  2. 本日の目的 1.前提とイントロ: (1)最近のFDIの動向 (2)開発における民間投資の役割     ーミレニアム開発目標、NEPAD 2.検証 (1)投資環境と民間投資:投資環境が、どれだけ外国からの民間投資の妨げとなっているか。(いくつかの例示と考察)   -世銀の世界開発報告2005;投資環境改善報告(A better investment climate for everyone)   -世銀のビジネス環境2006 (Doingbusiness in 2006)   ーMIGA, ベルンユニオン(保険協会)等での経験    ①裁判所の信頼性、②汚職問題、③政策の不確実性と規制ー収用と契約違反、④契約違反に対する救済の道 (2)投資環境改善の必要性 3.投資環境改善、投資促進への対応

  3. 1(1)最近のFDI動向:WorldInvestment Report 2005UNCTAD • 途上国への外国直接投資(FDI)の堅調な回復により、2004には3年連続で減少していた世界のFDIはやや増加した。(6480億ドルで前年比2%増加) • 途上国へのFDIは40%増加で2330億ドルとなった。 • トップ3の順位は米国(959億ドル)、英国、中国(606億ドル) • 途上国へのFDIの増加はアジアへの新規投資によるところが大きい。(特に中国とインド) • FDIは途上国に対する他の民間資本フローとともにODAのフローを上回っている。 • しかしながら、FDIは限られた(handful)途上国に集中しており、ODAが他の多くの途上国にとって引き続き最も重要な資金フローになっている。 • 世界のFDIの展望は2005年も堅調(favorable)、2006年も世界経済、企業収益が堅調であれば、増加が期待される。

  4. FDI地域的特徴:World Investment Report 2005 • アジア太平洋:2004年には460億ドルの増加を見、1480億ドルと途上国地域で最大の受け取り地域。東アジアばかり(46%増)ではなく、南アジアも大幅増加(48%)-インドが70億ドルの投資受け入れ。    2004年には、同地域は直接投資の重要な出し手として注目される。(690億ドル)ー香港のみならず、地域内の多国籍企業の地域内投資が増加。(地域外投資も目立ってきており、事例としては、中国からの資源開発投資(ラ米)、インドからのアフリカ、ロシアへの資源開発投資。中国、インド企業の米国、欧州での企業買収の動きも。) • ラ米とキャリビアン:4年連続の減少の後、2004年には44%増で680億ドルに。ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、チリで全体の三分の二に。 • アフリカ:前年と同水準の180億ドルに留まる。(世界中のFDIの3%シェアを維持したまま)天然資源関連の投資は堅調。アンゴラ、エクアトリアギニア、ナイジェリア、スーダン、エジプトへの投資がほぼ半分を占める。投資は主として欧州からであり、仏、蘭、英、南ア、米からの投資で過半を占める。アフリカ内からのFDIは2004年には倍増して28億ドルになる。 • 南欧州とCIS:4年間連続の増加で2004年には350億ドルになる。

  5. (参考)フォーチュン500グローバル企業(2005年7月25日号)(参考)フォーチュン500グローバル企業(2005年7月25日号) • 日本経済の再生を含め、グローバル化のなかでの各国の生き残りと経済発展は、今後グローバル企業がどれだけ増え、発展するかにかかっている。(中国の走出去2001年、途上国での海外投資保険制度設立の動き)

  6. FDI フローの推移:WIR 2005(10億ドル)

  7. FDI堅調背景:WIR2005   2004年の途上国へのFDIの堅調の背景 • ①多くの産業分野での激しい競争圧力が新しい競争力改善策の探求を促し、成長の高い新興市場国での売り上げの増加、規模の経済、生産コストの削減を実現するための生産活動の合理化をもたらした。 • ②商品市場の高騰が原油、鉱物資源の豊かな国での投資を促した。 • ③国境を越えたM&Aにリンクした投資が増加した。

  8. (参考)投資環境改善:WIR2005 • 途上国は投資環境を投資家に対してフレンドリーにするため、新規の法律と規制を採択した。 • 2004年に102の途上国で導入された271の新規施策のうち235は、投資促進策とともにFDIの新規分野を広げるものであった。(36は外国からのFDIを不利にした。) • 20カ国で法人税が引き下げられた。 • ただし、ラ米とアフリカでは、特に資源関係では、施策の変更が外国投資を不利にした。

  9. 1(2)開発における民間投資役割:開発機関における民間投資重視1(2)開発における民間投資役割:開発機関における民間投資重視 日本: • 持続的成長に向けた努力を支援。(経済活動上重要となる経済社会基盤の整備、政策立案、制度整備や人づくりなどの経済分野への支援を通じて貿易・投資を促進。民間セクターの育成および技術移転の促進と通じ経済成長を支援することを重視)(2004年度ODA白書から) 国際機関: • 世界銀行ーMDGに絡み成長、民間投資、投資環境重視 • IFC設立ー1956年に民間企業に対する出資、融資を柱とする独立の機関が世界銀行グループ(WBG)内に創設された。 • MIGA設立ー1988年に民間企業、銀行に対する投資保険を提供する機関がWBG内に設立された。 • EBRD設立ー1991年にロシア、東欧の諸国が民主的な環境のなかで民間部門の育成を図ることを支援するために設立された。 • ADBー早くから民間部門局を設け民間部門の支援を重視。 • IDBー1989年にIIC(Inter-American investment Corporation)が,1993年にMIF(Multilateral Investment Fund)が設立され、さらに1994年にIDB内に民間部門局が設置されて民間部門支援を実施。

  10. (参考)MIGA(Multilateral Investment Guarantee Agency) • 1988年に途上国への直接投資促進のために世界銀行グループ内に法的には独立した機関を設立した。 • 背景は1970年代、1980年代の途上国への直接投資の低迷。(年間200億ドル台で推移) • 政治リスクが除かれれば、生産的投資が途上国に向かうとの認識。 • マルティの保険機関の設立が必要。 • 資本金は約20億ドル(当初10億ドル)。株主は160の加盟国政府(日本は第二の株主)。総裁は世銀総裁。職員130名。(50カ国) • 主要業務は  ー企業、金融機関の新興市場国での事業に対して政治リスクを対象とした投資保険を提供。  ー投資紛争の解決(投資家と途上国政府の間に入って斡旋(Mediation)をする。)  ー途上国の政府・政府機関、IPA(Investment Promotion Agency)に対して投資促進のための技術支援を提供。

  11. 世界銀行と投資環境 1.1995年に就任したウォルフェンソン総裁 • 当初はどちらかというと、社会セクター、保健衛生(HIVを含む)を重視 • その後MDGへのコミットが高い成長重視を鮮明化させる(人口増を加味すれば7%成長が必要との認識ーカバジ前AfDB総裁、イグレシアス前IDB総裁はかねてから、貧困削減のための高い成長を総会演説等で強調) • スターン氏が世銀チーフエコノミストになり、世銀自体が民間投資、投資環境重視を主要な柱にする。(年一回のWBGの幹部リトリートStrategic Forumでの柱に) 2.最近の動き • 2004年度からビジネス環境報告を作成(WBとIFC) • 2005年の世界開発報告(世銀のflagship publication)は投資環境改善報告 3.2005年就任のウォルフォウィッツ新総裁 • 9月の総会演説では、経済成長とともに、民間セクター、法律を重視し、ビジネス環境報告に言及して、投資環境の改善を訴える。

  12. 経済成長と貧困削減(投資環境改善報告から)経済成長と貧困削減(投資環境改善報告から) • 経済成長は貧困削減と密接に関係している。 • グラフでは一人あたりのGDPの成長率(GDP per capita growth rate)と貧困削減(Poverty reduction)   との関係が密接

  13. (参考)9月の世銀総会での新総裁のスピーチから(参考)9月の世銀総会での新総裁のスピーチから • ウォルフォウィッツ世界銀行総裁年次総会スピーチ(05年9月)から: • 「開発に対する考え方の変遷:ーーー開発と貧困には、経済成長の持続的推進が不可欠であることが分かっています。---持続的な開発とは、労働力や資本だけではなく、リーダーシップと説明責任、シビルソサエティと女性、民間セクター、そして法律によって変わってくるものだからです。」 • 「民間セクター:ーーーIFCと世銀が、投資を育む環境作りとして行っている重大な貢献の一つとして、世界155カ国の状況を評価した「ビジネス環境の現状報告書」があります。アフリカでは、---事業の登記費があまりに高いため、大半の企業家たちは地下経済で事業を経営せざるを得ない状況ーーー途上国にとって、この報告書は、どの分野で更なる改革が必要かを見極める際の重要な手段となっています。」 • 「法律:---法律が施行され、権利が保護され、契約が守られると分かっていれば、人々も未来に投資しようという気になります。ビジネスマンがこう語ったことがあります。賄賂が問題なのではありません。役人が法規を思いのままに解釈する余地がなくなるようのぞんでいるだけです。」 • 「インフラストラクチャー:ここ数ヶ月間に、ーーー耳にした話のなかで最も多かったものの一つは、世銀がインフラ投資における役割を復活させる必要があるということでした。ナイジェリアの企業のように、その90%が小型発電機に頼っているようでは、貧困に終止符を打つことなど出来ません。」 • 「アフリカ:ナイジェリアでは政府要人が汚職で拘束され、南アフリカでは、副大統領が顧問の収賄の責任を問われて解任されました。---MDBsとて経済成長なくしては達成できないことを覚えておく必要があります。---持続的成長なくして、本当の意味での貧困削減は不可能です。ただし、経済成長だけでも不十分です。ーーー」

  14. 世界銀行:「ビジネスの環境2006:雇用創出」(作成の意義)世界銀行:「ビジネスの環境2006:雇用創出」(作成の意義) • 前年までのビジネス環境指標であった、企業、雇用・解雇、契約遵守、資産登録、融資確保、投資家保護、撤収に加え、本年は、事業免許、対外貿易、納税の3指標を加えた。(各国専門家35000人以上が協力して、方法論的観点から支援・検証を行った。) • 世界はじめての試みとして、ビジネス関連の主な規制・改革の観点から世界155カ国についてランク付けを行った。 • 「各国の政策立案者が自国の規制状況を他国に比べて評価し、世界のベストプラクティスから学び、改革の優先順序を特定するのに役立つ。--ー「20カ国以上において改革を促し支援するためのベンチマークとなっている。」」

  15. 世界銀行:「ビジネスの環境2006:雇用創出」(主要な指摘)世界銀行:「ビジネスの環境2006:雇用創出」(主要な指摘) • 「アフリカ諸国は企業に課す規制上の制約が最も厳しく、昨年についてみると改革の歩みが一番遅かった。一方、東欧ではどの国もひとつ残らず、ビジネス環境の少なくともひとつの面では進歩を見せ、セルビア、モンテネグロやグルジアなどは実施した改革の大半において世界ランキングのトップを占めた。」 • 「モザンピークの企業は新たな事業の登録に14件の手続きを踏まねばならず、153日が必要になる。ラオスでの新規事業は手続きに198日要する。グアテマラでは、簡単な訴訟に1495日がかかる。シエラレオネでは、事業税を全額納付しようとすると、企業の売り上げ総利益の164%になってしまう。」 • 「アフリカでは多くの国が新規事業や雇用創出を切実に必要としており、企業にとって魅力的な投資環境を整備している他の国々からさらに遅れをとる危険がある。」(クライン副総裁) • 「ただし、ルワンダは昨年、改革で大きな進歩をみせたし、モーリシャスもいくつかの分野で改革を進め、現在では、南アと並んで、企業への配慮がもっともなされる国となった。」

  16. 世界銀行:投資環境改善報告(概要) • World Development Report 2005,A Better Environment for Everyoneの概要。 • 53カ国において26000社からのサーベイに基づく調査。経済開発の関係者だけではなくビジネスパーソンにとっても貴重な情報と報告。 • 世界銀行が自ら途上国の投資環境指数を算定して発表しているだけではなく、同種の指標を発表している12の機関のWEBを紹介。

  17. 世界銀行:投資環境改善報告(基本認識) • 投資環境の改善は、途上国において、貧困削減(世界の人口の半分は1日2ドル以下で生活し、11億人は1日1ドル以下で生活)、雇用創設のために、そして世界平和のために必要不可欠。 • グッドニュースは多くの政府が彼らの政策が投資環境の改善に不可欠であるとの認識を持ち改革を行ってきたことだが、成果は遅遅たるもので、不ぞろいである。 • 政府の多くは依然として企業に不必要なコストをかけさせ、大きな不透明感とリスクを発生させ、競争の障壁をつくりだしている。 • 第1に報告では、地域社会、地場資本、外国資本、大企業、中小企業のすべての当事者にとってよい投資環境の改善の重要性を強調。 • 第2にコストの削減だけではなく、不透明感、リスク、競争に対する障壁の撤廃にむけての努力を主張。 • 第3に公式な政策をこえて、政策と実施の落差に焦点を充て、政府が公の信頼と合法性を得るべく汚職や他の利害追及を改善するよう力説。 • 最後に報告では、広範なアジェンダを政府が取り組む戦略をリビューし、すべての問題を一気に取り組むよりも、企業に信頼感を取り戻させるに足りる重要な制約から取り除き、改善のプロセスを継続するというアプローチを採る。

  18. 世界銀行:投資環境改善報告(投資環境制約)世界銀行:投資環境改善報告(投資環境制約) 投資環境の制約の企業評価。(深刻さの順) 1政策の不確実性 2マクロ経済の不安定 3税率 4汚職、 5ファイナンスのコストとアクセス、 6犯罪、 7規制と税務行政、 8技能、 9裁判所を司法制度、 10電力、 11労働規制、 12交通、 13電力、 13内陸へのアクセス、 14電信

  19. 大きな、深刻な制約と回答割合%(賄賂割合のみ売上に占める比率)大きな、深刻な制約と回答割合%(賄賂割合のみ売上に占める比率)

  20. 投資環境改善報告(売り上げに占めるコスト)投資環境改善報告(売り上げに占めるコスト) • グラフの上から 1契約実行の際の困難 2規制 3汚職 4犯罪 5信頼できないインフラ タンザニアとアルジェリアでは25%以上を占める。 ブラジルでも約15%、中国でも約13%。

  21.  投資環境 マクロ経済環境 政治的安定 司法・裁判制度の信頼性 企業統治・汚職 労働市場 資本市場 基礎インフラ  商業リスク 市場リスク 信用リスク 流動性リスク 業務リスク 法的、訴訟リスク 非商業リスク  伝統的政治リスク 非政治リスク(台風、ハリケーン、地震、感染症)  2(1)投資環境と民間投資投資環境とリスク

  22. ベルンユニオンの用法 1.戦争・内乱・テロ 2.外貨交換・送金不能 3.収用(国有化、資産の没収、忍び寄る収用ー   一連の措置で事業が破綻) 4.契約違反(政府、政府機関、国営企業が契約を違反ー価格、供給義務、引き取り義務 政府干渉の意図の有無 1政府の意図せざる干渉   戦争、内乱   外貨交換・送金不能 2.政府の意図した干渉   収用、契約違反 3.通貨・経済危機誘発型干渉   収用、契約違反 2(1)投資環境と民間投資(参考)伝統的政治リスクの分類

  23. 2(1)投資環境と民間投資リスクに見合う収益が必要2(1)投資環境と民間投資リスクに見合う収益が必要 海外投資には、通常の商業リスクのほか、国内投資にはないさまざまな政治リスクがある。(Multilateral Business Finance, Eiteman ほかより) 1.企業特有のリスク ・為替リスク、商業リスク ・企業統治リスク(政府とグローバル企業との目的を巡る衝突)ー収用、契約違反 2.国特有のリスク ・戦争、内乱、 ・送金リスク ・文化、制度リスク(所有形態、HR、宗教、汚職、知的所有権、保護主義) 3.グローバルなリスク ・テロ、 ・反グローバリズム ・環境問題 一般に国内投資よりも、リスクに見合う高い収益が必要とされる。(期待損失は利益でカバーされる必要性)

  24. 2(1)投資環境と民間投資リスク管理強化必要2(1)投資環境と民間投資リスク管理強化必要 ・リスク評価の強化  →投資環境、政治リスクに対する評価能力を高める必要  →投資環境、政治リスクの変化に敏感に、正確に反応(予想)する評価体制を確立する必要 ・リスク管理体制の強化  →リスクを採らないためのリスク管理から企業価値極大化のリスク管理に移行する必要性(収益とリスク(資本の対するコスト)をバランスして判断する体制)    →戦略リスクを含む統合リスク管理の必要性ーー投資しないリスクも視野)

  25. 2(1)投資環境と民間投資リスク管理強化の手段2(1)投資環境と民間投資リスク管理強化の手段 • リスクマネジメントの主要な手段には以下が含まれる。  1)リスクコントロールはリスクの高い活動の水準を下げる、あるいは、リスクの高い活動を所与として、損失に対する事前の警戒を高める。 2)ロスファイナンスは、リスク保持(自己保険)、保険、ヘッジ、その他のリスク転嫁が含まれる。 3)部内リスク削減はポートフォリオ多様化とキャッシュフロー期待値を改善する情報への投資 • 企業はリスクを極小化するか、第三者に移転するか、自社管理するかである。

  26. 2(1)投資環境と民間投資リスクは不確実性2(1)投資環境と民間投資リスクは不確実性    リスクとは、二つの意味で使われる。(以下はRisk Management and Insurance:Harringtonから )  • ①結果が不確実である(situations where outcomes are uncertain) 。あるいは、期待値の周辺での変動(variability in outcomes around the expected value)。   例)ドル建の輸出のリスクは高い。1年後のドルの期待値は107円だが、117円にも、97円にも成り得る。 • ②期待値そのもの。或いは、損失の期待値(the expected value of losses)。   例)東海地方は地震のリスクが高い。発生の期待値(可能性、確率)が他の地方よりも高い。    期待値(平均)が同じでも、結果が不確実(分散が大きい)になると、最近の資本効率モデルでは、期待損失を上回る非期待損失が大きくなり、そのための備え(エコノミックキャピタルー株主資本)を大きく必要がある。そうした不確実性の高いプロジェクトは期待収益が高くても見送られるかもしれない。

  27. 2(1)投資環境と民間投資グローバル戦略とリスク管理2(1)投資環境と民間投資グローバル戦略とリスク管理 • 日本経済の失われた10年は、日本企業のリスク管理の不備(トータルリスク管理、津森) • 企業にとっての最大のリスクは、企業が存立できなくなること • 株主価値を向上させる経営体制、コーポレートガバナンスの確立、内部統制の確立が必要 • 全社員の共有できる企業理念の存在 • 以上がトータルリスク管理の原点 • 確かに、グローバル戦略の策定、実施はリスク管理の高度化を必要とする。 (→トータルリスク管理)

  28. 2(1)①裁判所の信頼度(世界銀行:投資環境改善報告)2(1)①裁判所の信頼度(世界銀行:投資環境改善報告) • 多くの途上国の企業は裁判所が所有権を守ってくれることに対して信頼を寄せていない。

  29. ①裁判所の信頼度(1)ブラジルの事例(収用)①裁判所の信頼度(1)ブラジルの事例(収用) • カナダの投資家がブラジルのCeara州で行った事業が、1996年に州当局により、新たな工業用積み出し港(同国で5番目に大きい)の建設のため収用された。 • 投資家は補償金額についての公平な市場価格を巡って争っていた。 • 下級裁判所では、投資家に有利な判決がだされたが、州当局は、直ちに上告した。 • 上級裁判所で、再び投資家に有利な判決がだされたが、州当局は最高裁に持ち込むとしている。 • 既に、4年経過しているが、最高裁判所の判決には3-5年かかる模様。(投資家は高齢である。) • 教訓: • アフリカの紛争国でなくとも、投資の多いブラジルで問題は発生する。 • 収用の可能性を予見出来なかった。 • 州当局が補償に消極的であった。 • 裁判の長期化が予想外であった。

  30. ①裁判所の信頼度(2)スリランカの事例(契約違反)①裁判所の信頼度(2)スリランカの事例(契約違反) • ジブラルタルのI法人が1990年にスリランカの国営セメント会社と契約を結んだが、同セメント会社は契約を破棄。さらに、保証ボンドを引き出した。 • I法人は同セメント会社を相手取り、契約違反と不当なボンドの没収(wrongful calling of its bonds)の仲裁プロセス(arbitral action)に入り、損害に対する裁決(award)を得た。 • しかし、国営セメント会社は支払いを拒否。また、地方裁判所は支払いの強制執行に応じることを拒否。 • 教訓: • 合弁相手との投資紛争が、裁判プロセスで救済されず。

  31. ①裁判の信頼度(3)中央アジアでの電力事業事例①裁判の信頼度(3)中央アジアでの電力事業事例 • スぺインの有力電力会社は、2000年に中央アジアにおいて電力不足と8時間にも及ぶ停電を解消するため、世銀の電力セクターの改革の一環として、配電会社を政府から購入した。狙いは、技術力と料金回収を含め経営力の乏しい赤字会社を最新の技術により、収益性のある事業に転換されることであった。 • ところが、当初の政府との契約が、憲法に抵触するとの最高裁判所の判決がだされ、契約が破棄されそうになった。 • その後、世銀、EBRD等からの説得で最高裁判所の判決が凍結されたが、それを覆す正式な決定がなされまでに膨大な時間を要した。 • 裏では、電力の利権を求めるマフィアの存在があったとの指摘がある。

  32. ①裁判所の信頼度(4)インドネシアで社債発行が無効①裁判所の信頼度(4)インドネシアで社債発行が無効 • インドネシアのAsia Pulp & Paper(APP)の子会社が1995年に米国の証券取引委員会(SEC)に登録して、オフショアで発行してMorganStanley社によって引き受けられた担保付の社債550百万ドルが、KualaTungkalの地方裁判所で無効とされた。(2週間後に別口の350百万ドルも無効とされた。)。 • 判決では、SPCを使った社債発行は国内法に照らし違法であり無効であり、社債償還の必要はないとされた • APPは中国、インドネシアを舞台とする世界有数のパルプ会社だが、2001年に140億ドルの債務がデフォルトになり、その再建計画が論議されている。 • リストラ案を不満とする有担保付社債権者が、担保の実行を申し立てたのに対して、APP側が、社債発行スキームが違法として債務否認の提訴を行ったもの。 • ユドヨノ大統領が、SECに登録され、国際的に発行された社債を上級裁判所でどう取り扱うか注目されている。

  33. ①裁判所の信頼性(5)インドネシアでの生命保険①裁判所の信頼性(5)インドネシアでの生命保険 • 2004年4月、ジャカルタ中央商業裁判所は、元従業員への賞与などの不払いを債務不履行ととらえ、プルーデンシャル生命保険(英国)の破産を認定した。 • 同社は直ちに最高裁判所に上告。「元従業員は社内規則に違反した活動を繰返しており、契約の打ち切りは不当な行為ではない。また、同社の財務状況は良好であり、破産認定は不当。」と主張。 • 英国大使館も強く抗議。現地の従業員も抗議のデモを行った。 • 最高裁判所は、上告を認め、元従業員の主張を退けた。 • 同国の破産法(No4/1998)はアジア危機に際して、企業を破産させる手続きが不備であったことから、IMFの圧力により、現地の債務者が外国の債権者に返済の支払いを行う道を開いた。ところが、たとえ当該企業が健全であっても、一債権者対する支払いが滞れば破産しうるという不備があった。(銀行と証券会社の破産については、大蔵省の承認が必要とされているが、保険会社は、その網目からはずれている。) • さきには、2002年にカナダの保険会社の現地法人MunilifeIndonesiaが配当の支払いが滞っているとの理由で破産宣告を受けていた。この時も最高裁判所は、商業裁判所の破産宣告を覆していた。(Munilifeは判事を汚職で訴え、三人が休職となった。) • 破産法の不備は、投資環境を著しく損なうとして、修正の動きがある。

  34. ②汚職問題(1)規制強化ーOECDと日本 • OECDは1997年12月に加盟国を中心に36か国(OECD加盟国30か国と非加盟国6か国ーアルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、チリ、エストニア、スロバ二ア)が国際的な商取引の公正を守るため、「国際公務員への贈賄防止条約ーOECDConvention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transaction」を締結した。なお、同条約は、1970年代から、外国政府高官への贈賄に対して厳しい姿勢で取り組んできた米国が提唱していたもの。 • 日本でこれを受けて改正された不正競争防止法の第11条第1項は、「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用してその他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申し込み若しくは約束をしてはならない。」としており、これに該当する者に対しては、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(第14条)に、法人に対しては1億円以下の罰金刑に(第15条)に処するとされている。

  35. ②汚職問題(2)規制強化ー米国のFCPA • 海外不正行為防止法Foreign Corrupt Practices Act(FCPA)は、米企業が取引を獲得・維持、また、不適切に有利な立場を確保するため、外国公務員や政党に対して金銭等を提供することを違法とする。 • 1970年代半ばにウォーターゲート事件を契機にした米証券取引委員会(SEC)の調査で、400の米企業が3億ドルを超える疑わしき、または不法な支払いを外国公務員等に対して行っている実態が判明したことに対応したもの。 • 違反に対しては、重い罰刑が課され、個人には最高で10万ドルの罰金または5年以下の懲役、法人には最高200万ドルの罰金が課される。(収賄で得た2倍の罰金が課され限度を超えるときがある。) • その他、政府との取引の禁止、輸出ライセンスの不適格化の可能性、SECによる証券取引の停止、さらに、民事訴訟で競争相手からの不利益をうけたことに対する訴訟を受ける可能性がある。 • エンロンを含め最近の一連の企業スキャンダルを受け、米政府はFCPAの執行を一層強化しているといわれる。 • 司法省(Department of Justice)とSECがFCPAを所管している。

  36. ②汚職問題(2)規制強化ーFCPA 留意点 • 米国のFCPAについては、適用範囲が広いので、米国企業だけではなく日本、アジアの企業が対象になり得る。 • 適用対象は、 • 1)SECの監督・規制下に置かれている上場企業、 • 2)(以下domestic concernsといわれる)米国人、米国居住者、ならびに主たる事務所を米国に置く法人等、米国法に基づき設立された企業。 • 3)直接の贈賄のほか、企業のために従事した海外のエージェントの行為も対象。 • 4)米国企業の海外関連企業の贈賄行為も対象。 • 上記3と4については米国本社が許可した場合のみならず、認識(Knowing)していた場合、認識していたと思われる場合(Having reason to know、conscious disregard, willful blindness)でも責任が問われる。 • 適用例外は、外国公務員等による経常的な職務遂行行為(routine government action)を確保するための行為(ビザの発給、証明書発行等)

  37. ②汚職問題(2)規制強化ー適用事例 • 2003年8月AESウガンダのナイル川にあるBujagali水力発電事業(250MWの530百万ドルの事業)から撤退を表明。事業の遅れや当初になかったリスクの増大による経済的採算性の悪化が原因。既に投資した75百万ドルが損失となった。 • 同プロジェクトは1990年代にAESが落札。世銀はグループをあげて支援をきめていたが、採算性や環境問題に対する懸念からNGPグループが反対していた。この問題は独立のパネルにより回答がでたが、あらたに生じた贈賄問題により、司法省がFCPAの嫌疑でAESを調査し始めて以来、世銀の支援実施は2002年半ばから、差し止められていた。 • 贈賄の金額は10000米ドル。AESが雇った下請けが関係の政府高官に渡したという嫌疑であった。(AESは直接手をくだしていなかったが、Knowingではないことを立証する必要があった。)

  38. ②汚職問題(3)国際ビジネスの姿勢 1.International business attitudes toward corruption, John Bray, Control Risk, in Global Corruption Report 2004, Transparency International(2002年実施:対象50社 250インタビュー) • ①競争者が賄賂を提供したためビジネスを失ったケース:(過去12ヶ月) • 香港:56%;シンガポーロ:52%;オランダ24%;ドイツ:24%;米国18%;英国16% • ②国際ビジネスが母国政府からの圧力でビジネス上の便益を受けたか。                                        企業      皆無  時折  定期的  常に  不明          • 米国企業:7.6% 48.4% 25.2% 6.0% 12.4% • その他の • OECD企業: 9.2% 54.8%25.6% 2.0% 8.4% • 「OECD等の贈賄禁止の動きに対しては、直接の贈賄をさけて、中間人を使う動きが論争の種、微妙な問題となっている。」 • 「半数の回答は将来も同じ程度の汚職は続くと信じている。 オランダ企業が42%が汚職は減っていくと楽観的に考えているのに対して、香港企業は48%が現状維持、42%はさらに増えるとみていて悲観的。」 2.(参考)ハーバードビジネスレビュー2005年3月号(ダイアモンド7月号)に「旧共産主義国での新規事業に役人への賄賂は必要なのか。」のケーススタディが掲載されている。

  39. ②汚職問題(4)Corruption Perceptions Index • Corruption Perceptions Index(CPI汚職感覚指数)はTransparency Internationalによって発表された各国の公務員と政治家の汚職(個人の利益のための公務の乱用と定義)の程度をランク付けするために算出された指標である。 • 信用性のある専門的サーベイのデータを集計してだしたものであり、ビジネスと専門家の意見が集結されている。(世銀、コロンビア大学、EIU等18の機関のサーベイを活用。) • 2004年のCPIでは146か国を対象。うち106か国は5以下の点である。(10が満点) • フィンランド:9.7(最高);シンガポール:9.3;米国:7.5;   日本:6.9;台湾:5.6;マレーシア:5.0;ブラジル:3.9; タイ:3.6;中国:3.4;フィリピンとベトナム:2.6; インドネシア:2.0;バングラデッシュ:1.5(最低);

  40. ②汚職問題(5)世界銀行の取り組み • 1990年代の半ばから、世銀は汚職が途上国の経済、社会開発を阻む最大の要因として捉え、100の途上国で600のプログラムを実施してきた。 • 目標としているところは、  ①説明能力のある政治システム  ②市民社会参加の強化  ③競争的民間セクターの形成  ④権力を抑制できる仕組み  ⑤公的部門のマネジメントの改善

  41. ③政策の不確実性、規制ー収用(契約違反):(1)傾向と概要③政策の不確実性、規制ー収用(契約違反):(1)傾向と概要 • 直接的収用は1970年代、80年代によくみられたが、1990年代になると激減し、これに代わって忍び寄る収用が増加してきた。 • 直接収用の場合に公的目的で、充分な補償が支払われる場合には、収用とは言いがたい。たとえば、飛行場建設のための用地の収用、買収がこれにあたる。しかしながら、公共性が不明瞭であったり、補償が客観的基準に基づかず、不十分である場合には、投資に対する収用リスクとなる。 • 忍び寄る収用の典型例は事業の提供する財、サービスに対する料金を巡り規制当局との間で問題が生じ、当初の契約が守れなくなり事業の採算が採れなくなることである。 • 政府が、公共に利益のために、経済活動を規制する目的で通常採用する措置を無差別的に採った場合には、収用とは言わない。(税金、関税、価格統制等)

  42. ③政策の不確実性、規制ー収用(2)古典的事例エチオピア国有化③政策の不確実性、規制ー収用(2)古典的事例エチオピア国有化 • 1975年にエチオピアのMengistu政府は、土地、商業用建物、余剰家屋、産業をエチオピア人民の共有財産にする宣言を発した。同宣言は外国人、エチオピア人を差別することなく適用された。 • ところが、同宣言では補償は公平(Fair)に行われるとされたが、どう算定されるかの規定はなかった。 • 1991年に政権を握った暫定政府は、1995年に事態の解決を図るべく民営化機構に権限を与えた。この間イタリアと米国の投資家には、2国間で解決する道が開かれた。(400件が解決) • その後、いくつかの補償が支払われたが、約50件(仏、ドイツ、ギリシャ、ノルウェイ、英国の投資)が未解決のままに残された。問題の未解決はエチオピアが外国からの投資を誘致する能力を著しく損なった。 • 2000年10月以来MIGAが斡旋仲介(Mediation)に入り、4年がかりで、その大半が和解した。2004年度には、フランスとドイツはエチオピアとの間で、二国間投資協定を締結した。

  43. ③政策の不確実性、規制ー収用(3)インドネシア経済危機と収用③政策の不確実性、規制ー収用(3)インドネシア経済危機と収用 • スハルト政権前には、オランダ所有の事業が多数収用されたが、1966年にスハルトが政権をとって以来、こうした事業は旧所有者に戻されており、収用は跡を絶っていた。 • ところが、1997のインドネシアの経済危機の際には、5-7%の経済成長を前提として計画された27件の電力事業が、大統領令により中止を余儀なくされた。 • 正当な対価なく中止された事業は、収用されたとみなされた。

  44. (参考)インドネシアの電力セクターエンロン投資事例(投資初期段階)(参考)インドネシアの電力セクターエンロン投資事例(投資初期段階) • (事業概要)1996年当時Enronの100%子会社のEnron Java Corporation (EJPC)は現地の2法人とともに、総額500百万ドル、出資125百万ドル(EJPCの出資は63百万ドル)、借り入れ375百万ドルの500MWのガス火力発電所をジャワ島にBOO(Build Own Operate)ベースで建設する事業に取掛った。(2年半で建設予定) • インドネシアは今後10年に電力拡張のために115億ドルの民間投資が必要とされていた。電力需要は14-17%で増加すると見込まれていた。 • (顚末)EJPCは約15百万ドルを投下したところで、大統領令がだされ、建設は凍結された

  45. (参考)インドネシアの電力セクターパイトンⅠ投資事例(参考)インドネシアの電力セクターパイトンⅠ投資事例 • (事業背景)ジャワ島東部のパイトン地区にて、パイトンエナジー社が615MW2基の火力発電所を建設、所有、運営し、30年に渡りPLN電力公社に売電。総コストは25億ドル。 • 出資960百万ドルーミッションエナジー45%、三井物産37%、GEキャピタル13%の出資。 • 融資1514百万ドルーJBIC協融825百万ドル、米輸銀協融1514百万ドル、OPIC193百万ドル。 • (顚末)経済危機を契機に完成の遅れ。PLNによる不払いが発生。2003年にリストラ合意。

  46. ③政策の不確実性、規制ー収用(4)アルゼンチン経済危機と収用③政策の不確実性、規制ー収用(4)アルゼンチン経済危機と収用   (経済危機のよって顕在化したリスク) • モラトリアムの継続によりア政府の持つ対外民間債務については、元利払いのすべてが凍結となった。日本では、3万人の投資家がアルゼンチン国債を購入していて、損害を被った。(デフォルトリスク) • また、外国の銀行がアルゼンチンの民間事業に外貨で貸し付けた銀行融資についても、元利の外貨建て返済を国外に送金するには、中央銀行の承認が必要となり、送金が事実上できなくなった。(送金リスク) • ドルとの固定相場制の放棄のあとは、ペソは30%切り下げられ、2重為替相場制が採用されたが、長持ちせず、変動相場に移行したペソはその後1ドル=4ペソまで下落した。(大幅な為替リスク) • さらに、外貨取引のペソ化により、外貨を借り入れていたペソ建収入に依存した事業(有料道路など)の採算がとれなくなった。(ペソ化による一種の収用リスク) • 経済の混乱と金融システムの崩壊、度重なる政権交代、IMFとの交渉の遅延から2002年は10.9%のマイナス成長となった。(市場リスク)

  47. ③政策の不確実性、規制ー収用(5)電力料金:ケニアでの地熱発電③政策の不確実性、規制ー収用(5)電力料金:ケニアでの地熱発電 • イスラエルにベースを持つ電力会社Oは、2000年以降ケニアにおけて、二つのフェイズから成る地熱発電事業に乗り出した。 • ケニアの電力事情は最悪で、電力は人口の10%にしか行き渡らず、また、70%を水力発電に依存するため、旱魃の影響をもろに受けていた。地熱発電は、クリーンなエネルギーであり、水力発電への依存度の低下、外貨の節約などのポジティブな経済効果が期待された。 • ところが、その第1フェイズで、2003年に料金改定問題は発生した。その件は解決をみたが、同年末に、今度は、第1フェイズと第2フェイズの双方について料金改定問題がケニア政府から出された。 • 一方、ケニア政府は同社に対して第2フェイズを2005年末までに完成するよう迫っている。

  48. ③政策の不確実性、規制ー収用(6)電力料金:中国電力事業③政策の不確実性、規制ー収用(6)電力料金:中国電力事業 • (事実概要)1995年から96年にかけて米国の電力メーカーコスタル(テキサスのヒューストンに本店)は中国の江蘇州に4つの発電事業からなる100%出資の電力会社を設立した。 • 市側の電力会社が引き取る電力料金は、コストに合理的な利益を上乗せできる仕組み(コストプラス)になっていた。 • 1998年から1999年9月にかけて発表された中央政府の総合的電力料金政策は、料金体系の根本的に見直しであり、市当局レベルでの電力決定の権限を剥奪するものであった。 • また、料金決定方式をコストプラスから、一律料金に改めるものであり、コスタルの収益は自助努力ではコントロールできないものになった。 • 中央政府の総合的電力料金政策の結果を受けて、江蘇州では、同州の電力会社と計画経済委員会が、コスタルや他の電力事業者に対して、売電契約(power purchase and settlement agreements)と電力料金を再交渉するよう通知を発出した。 • 北京の中央政府は、問題解決を願ったが、権限が及ばないという問題に直面した。

  49. 中国江蘇州での電力事業での料金改定問題(続き)中国江蘇州での電力事業での料金改定問題(続き) • (MIGAの関与)当初江蘇州の当局は、こうした措置は中央政府の政策の結果もたらされたものであるというスタンスをとっていた。 • その後に判明したことは、中央政府(大蔵省とMOFTEC)はできるだけ問題の解決を望んだことであった。ただし、直接の権限関係はなかった。 • また、料金問題は、中央政府の総合的電力料金政策の影響を受けるとはいえ、地方当局は日々の行政に大きな権限を持っており、本件はローカルな問題であるということであった。 • さらに、コスタルは粘り強く、辛抱強く交渉に望むとともに、交渉において、弾力的な対応をした。 • (その後の顚末) • その後、コスタルは江蘇州電力会社とのあいだで、当初の予定の利益率を若干下回る利益を年年の利益配分において受け取ること等を柱とした内容の覚書を交そうとし、難交渉の末に2002年5月に合意が成立した。 • (経済要因) 1997年の経済の落ち込みにより、電力需要の減退が問題解決を難しくしていたが、2000年代になり、江蘇州の経済成長と電力需要が大きく伸び始め、問題の解決をより容易にした面がある。

  50. ③政策の不確実性、規制ー(7)契約違反:トーゴの事例③政策の不確実性、規制ー(7)契約違反:トーゴの事例 • 世界で有数の綿製品製造業会社の会長とベルギーの銀行が、2001年にトーゴにおいて、約10億円を投資(出資と融資)して、同国で6番目の綿花栽培事業にのりだした。綿花製造の免許を受けた現地事業SOCOSAが進める同プロジェクトは同国北部の最大の農業加工業Agribusinessであり、自由貿易地域法Free Trade Zone Actのもとで輸出される綿花は5年間で60百万ドルの外貨を獲得するとされていた。また、同地域の雇用創設、労働者の職業訓練面でも、大きな効果が期待されていた。 • ところが、2004年になると、綿花の供給をおこなっていた国営企業は、綿花供給を約束していた3万5千トンから1万5千トンに引き下げてきたため、同事業は、採算がとれなくなった。

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