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第 12 章 確からしさの判断

市川伸一・伊東祐司(編) 『 認知心理学を知る<第3版> 』 おうふう. 第 12 章 確からしさの判断. 執筆者:市川 伸一 授業者:寺尾 敦 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp Twitter: @ aterao. 人間の論理的思考は 何に基づくのか?. 可能性1:論理形式的なルール 論 理学での ルール. 課題内容に関係なく ,特定の論理構造の問題には,同じルールが適用される.人間は合理的に思考できる. 可能性2 : 個別 の問題ごと に考える 可能性 3:ある程度抽象化された文脈,目的に応じて決められたルール

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第 12 章 確からしさの判断

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  1. 市川伸一・伊東祐司(編)『認知心理学を知る<第3版>』おうふう市川伸一・伊東祐司(編)『認知心理学を知る<第3版>』おうふう 第12章確からしさの判断 執筆者:市川 伸一 授業者:寺尾 敦 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp Twitter: @aterao 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  2. 人間の論理的思考は何に基づくのか? • 可能性1:論理形式的なルール • 論理学でのルール.課題内容に関係なく,特定の論理構造の問題には,同じルールが適用される.人間は合理的に思考できる. • 可能性2:個別の問題ごとに考える • 可能性3:ある程度抽象化された文脈,目的に応じて決められたルール • 目的・文脈の例:許可を与える,違反者を探す 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  3. この章で学ぶこと • 日常,われわれはそれなりにうまく,確からしさの判断を行っている. • しかし,その判断は確率論的に正しいルールに基づいたものではない. • 簡単に判断を行うことができ,多くの場合にはその判断が正しい思考ルールである,ヒューリスティックを用いている. • これにより,時に深刻な,一貫した誤り(バイアス)が生じる. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  4. リンダ問題 • リンダは31歳で独身,ものをはっきり言うタイプで,頭が良い.大学では哲学を専攻した.学生として,差別問題や社会主義の問題に強い関心を持ち,反核デモにも参加した.以下の選択肢を,可能性が高い(probable)と思う順に並べよ.(次のスライド) 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  5. 1.日常的状況での確からしさの判断 • 日常にわれわれが行っている確からしさの判断は,確率的に正しいのか? 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  6. リンダ問題(選択肢) • リンダは小学校の教師である • 書店で働いており,ヨガのクラスを取っている • 女性解放運動に熱心である • 精神医学のソーシャルワーカーである • 女性投票者同盟のメンバーである • 銀行の現金出納係である • 保険のセールスマンである • 銀行の現金出納係であり,女性解放運動に熱心である 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  7. 病院問題 • ある町には,2つの病院がある.大病院では毎日約45人,小病院では約15人の赤ん坊が生まれる.当然ながら,約50%の赤ん坊が男児である.しかし,正確には男児の出生率は日によって異なっており,50%より高い日もあれば低い日もある.ところで,1年のうちで,60%以上が男児であったという日の数は,大病院と小病院ではどちらが多いだろうか.(大病院?小病院?どちらも同じ?) 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  8. 連言錯誤:事象 A と B の連言(A and B)の確率が,単独事象より高く評価されることがある.(リンダ問題) • 標本の大きさの無視:比率だけを考え,分母の大きさを無視してしまう.(病院問題) 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  9. 代表性 • 代表性(representativeness):もっとも典型的な事象との類似度 • 標本と母集団,事例とカテゴリ,行為と行為者,あるいはより一般には,結果とモデルの間の一致の程度である(Tversky & Kahneman, 1983) • 代表性ヒューリスティック:人間は,確率判断を求められたとき,代表性により判断する. • 代表性の高い典型的な事例は,必ずしも高頻度(高確率)ではない.例:ハリウッドの女優にとって,「4回以上の離婚歴がある」は,「民主党に投票する」よりも代表的. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  10. 病院問題での代表性ヒューリスティック • 男児の出生率50%という事象は,代表性が高い. • この代表性判断には,標本の大きさは入っていない. • リンダ問題での代表性ヒューリスティック • リンダは,それぞれのクラス(小学校教師,銀行員,女性解放運動に熱心な銀行員,・・・)の典型的なメンバーにどれくらい似ているか? • 代表性に基づいて,P(T&F) > P(T) と判断される. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  11. huristics-and-biases アプローチ • Amos Tverskyと Daniel Kanemanによる主張(Tversky & Kahneman, 1974) • Many decisions are based on beliefs concerning the likelihood of uncertain events such as the outcome of an election, the guilt of a defendant, or the future value of the dollar. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  12. … people rely on a limited number of heuristic principles which reduce the complex tasks of assessing probabilities and predicting values to simpler judgment operations. • In general, these heuristics are quite useful, but sometimes they lead to severe and systematic errors. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  13. 2.ベイズ的な確率推定問題の難しさ • 条件つき確率:事象 Bが生じたという条件のもとで,事象 Aが生じる確率.P(A|B) • 結果(B)から原因(A)を推測するということがしばしば行われる. • ありうる原因それぞれについて,その結果が生じる確率がわかっていれば,ベイズの定理を用いて P(A|B) を計算できる. • 人間はこれをうまく計算できる? 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  14. タクシー問題 • ある街のタクシーの85%は緑で,15%は青である.あるときタクシーによるひき逃げ事件が起きた.そこに目撃者が現れて,「青のタクシーがひいた」と証言した.この証人がどれくらい正確かを,同じような状況下でテストしたところ,80%の場合は正しく色を識別できるが,20%の場合は実際と逆の色を言ってしまうことがわかった.さて,証言どおり,青タクシーが犯人である確率はどれだけか. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  15. 事前確率(目撃情報がない時点での確率)の,緑85%,青15%を考慮する必要がある事前確率(目撃情報がない時点での確率)の,緑85%,青15%を考慮する必要がある • それぞれのタクシーが事故を起こす確率はすべて等しいとする • しかし,ひとはこれを考慮しない.(基準率無視[base-rate fallacy]) • 人間はベイズの定理のような形式的ルールをうまく使えない. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  16. 代表性ヒューリスティックは,よい仮説を好む.代表性ヒューリスティックは,よい仮説を好む. • フェミニストの銀行員(リンダ問題での仮説) • 青タクシーがひいたとしたら,「青タクシーがひいた」という証言は代表性が高い. • アンカリングと調整:基準点をひとつ決めて,そこから多少の調整をするというヒューリスティック.タクシー問題の誤答(80%)は,この現れかもしれない. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  17. 3.確率判断の研究のインパクト • 1960年代ごろまでは,人間の直感的な確率判断はほぼ正しいと考えられてきた. • 一般的に言えば,人間の思考は(数学的な意味で)合理的だと考えられてきた. • しかし,人間の確率判断はしばしば不正確で,非合理的であった. • Tverskyと Kahnemanは,誤った確率推論は個別的に生じるのではなく,ヒューリスティックによって体系的に生じると主張した. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  18. 4.直感は改造できるか • 例題:ある病気の患者は全人口の2%である.この病気にかかっているかどうかを調べるために,ある試薬を与える.この試薬はこの病気にとても敏感で,これにかかっている人の95%に反応があらわれる.ただし,この病気にかかっていない人の10%にも,反応があらわれてしまう.この試薬によって反応があらわれた人が,本当にこの病気にかかっている確率はいくらか? 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  19. ルーレット図(Ichikawa, 1989) P{病気}=0.02 円の全面積 =1 P{病気でない}=0.98 は,実際はもっと小さい領域 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  20. P{病気 and 陽性} P{病気}*P{陽性|病気} =0.02×0.95 P{病気|陽性} = P{病気でないand 陽性} P{not 病気}*P{陽性|not 病気} =0.98×0.10 + 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  21. ベイスの定理 ルーレット図は タクシー問題でも使える 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  22. メンタルモデルとして利用可能な道具を工夫すれば,人間の直感を改造できるかもしれない.メンタルモデルとして利用可能な道具を工夫すれば,人間の直感を改造できるかもしれない. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

  23. 11章・12章のまとめ • 人間の論理的思考,確率的思考は,論理的,確率的に正しいものではない. • しかし,その状況ごとにばらばらな思考をしているのでもない. • ある程度抽象化された目的や文脈のもとで,特定のルール・方略に基づいて思考している. • そうした思考の結果は,論理的・数学的結果と一致するかもしれないが,大きく異なることもある. 室蘭工業大学 集中講義「認知心理学」

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