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日本自動車業界の 戦略的コストマネジメント. 甲南大学 経営学部 経営学科 10051423 森 直彦. 第一章 まえがき. 第二章 日本自動車業界の 現状と課題 . 日本自動車業界の現状. 国際的な再編によって、経営のリストラ、事業の再構築が進む。 メーカー間で高収益と低収益の二極分化が着実に進む。 業績の悪化した企業が生き残りの道として企業グループの中に入るケースが増えている。 生き残りをかけて、事業ドメインや戦略に明らかな差がついている。. <再編前> トヨタ自動車 本田技研工業 日産自動車 マツダ 富士重工業 三菱自動車工業. スズキ
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日本自動車業界の戦略的コストマネジメント 甲南大学 経営学部 経営学科 10051423 森 直彦
日本自動車業界の現状 • 国際的な再編によって、経営のリストラ、事業の再構築が進む。 • メーカー間で高収益と低収益の二極分化が着実に進む。 • 業績の悪化した企業が生き残りの道として企業グループの中に入るケースが増えている。 • 生き残りをかけて、事業ドメインや戦略に明らかな差がついている。
<再編前> トヨタ自動車 本田技研工業 日産自動車 マツダ 富士重工業 三菱自動車工業 スズキ いすゞ自動車 日野自動車 日産ディーゼル ダイハツ工業 日本の完成車メーカー
自動車業界の課題とは • 地球環境ニーズに適応した次世代エコカーの開発能力と投資負担力。 • グローバル活動に伴ってものづくりの効率性をいかに維持、向上できるか。 • 開発や戦略を遂行するのに十分な収益力(キャッシュフロー)をもっているか。 ⇒これらを克服するために各社はどのようなコストマネジメントを行っているのか。
外資の傘下に入る日本自動車メーカー 日産自動車 ・80年代、元社長石原俊の国際戦略の失敗やバブルにおける戦略ミスにより、その後米国市場で赤字を出し続ける。 ・1999年ムーディーズが長期債の格付けを最下位のBa1に引き下げる。 ・自力再建を断念し、98年ルノーが日産株を36.8%取得し、事実上の経営権を握る。
外資の傘下に入る日本自動車メーカー マツダ ・70年代ロータリーエンジンに膨大な資金を投資するも、第一次石油危機で深刻な経営危機にあう。 ・1979年にフォードがマツダに25%出資し提携。 ・その後世界的な日本小型車ブームに乗り経営は上向くが、バブルの後は販売力の弱さや販売戦略の未熟さが露呈し赤字に転落。 ・アジア戦略を進めたいフォードが出資比率を33.4%に引き上げ、マツダの事実上の経営権を握る。
外資の傘下に入る日本自動車メーカー 三菱重工業 ・バブル期にRVというニッチ市場を開拓し、業界第三位に上るも、長期戦略の欠如を露呈し、ホンダに市場を奪われる。 ・その後米国工場のセクハラ問題や、人事、リコール等の不祥事によりイメージダウンは避けられず業績低下に拍車がかかる。 ・1999年、ボルボが三菱の株式の3.3%、2000年にダイムラークライスラーが34%を取得する。 ・その後2001年、ボルボの持つ三菱株をダイムラーが買い取る。
外資の傘下に入る日本自動車メーカー いすゞ自動車・富士重工業・スズキ自動車 ・いすゞは大型トラックとディーゼルエンジン、 スズキは小型車、富士は水平対抗エンジンと四輪駆動車に代表されるニッチメーカーであり、規模は小さい。今後単独で生き残るのは 困難と見られ、世界戦略を進めたいGMと資本提携し生き残りを図る。
日本メーカーの魅力とは何か? • 日本は自動車メーカーが多くその中に新規参入するより、既存メーカーと手を組むほうがより市場に参入しやすい。 • 11社の競争は激しく、競争から脱落寸前のメーカーにアプローチしやすい。 • 欧米メーカーの最大の弱点であるアジア圏に拠点を築くために日本メーカーの手を借りたい。 • 燃料電池などの将来に向けた環境対策技術において日本メーカーは先行している。
トヨタ自動車 ・トヨタは世界自動車生産台数は505万台であり、世界第三位。うち海外生産は184万台。 グループのダイハツ工業を加えると589万台となり、世界シェア10%を超える。 ・ハイブリッド車を世界に先駆けて市販。燃料電池の実用化も進めており、技術開発力においても世界最高に位置する。
本田技研工業 ・ホンダは世界自動車生産台数は264万台で、 世界第七位。うち海外生産台数は132万台。中でも北米市場はホンダのドル箱となっている。 ・トヨタのような幅の広さはないが、技術・品質で他と差別化を図ろうとする焦点を絞った商品開発により市場の拡大を狙う。 ・規模は大きくないがグローバル展開力と独立心の強さから単独で生き残りの道を進む。
生産台数とプラットフォームの関係 • プラットフォームとは? プラットフォームとは、車の骨格になるエンジンなどを取り付ける枠組みをかたちづくっている「車台」のこと。 プラットフォームの統合化は、膨大な数と種類がある部品やシステムの共有化が可能となるので、コスト削減に絶大な効果がある 。
ホンダとトヨタのプラットフォーム戦略 プラットフォームあたり生産台数 世界自動車メーカーの中でトヨタ、ホンダが上位に位置したのはこのプラットフォーム生産効率によるところが大きい。 • プラットフォームとは? シャシー、車台とも呼ばれ、車のボディーやエンジンなどが乗る前のメインフレームのこと。 自動車業界においてプラットフォームの共通化はコスト削減に結びつくとともに生産効率も高まるため、非常に重要な概念になる。
ホンダのプラットフォーム戦略 • サイズ別にプラットフォームを持ち、少ないプラットフォームで数の多いモデルを作り出す。 • 世界中で生産されているアコード、シビッククラスの車が大きな数量効果をもたらしている。いま世界の自動車メーカーがやるべきことをすでに先行して実行するスピードこそ、本田が世界に対抗できる要因である。
トヨタのプラットフォーム戦略 • トヨタは世界で最も優れたプラットフォーム戦略を立てており、90年代後半からビッツ兄弟車、カローラ姉妹車により、2001年にはプラットフォーム一台あたりモデル数は2.5を超えている。 • 用途別にプラットフォームを持ち、 用途別に多くのラインナップをそろえる事が できる
トヨタ式プラットフォーム ボディタイプ サイズ
日産の再生 ・当時、1974年国内シェア38%をピークに 1999年には国内シェア19%、国外4.9%まで落ち込む。 ・1998年には自動車事業での実質有利子負債 残高2兆1000億円 ・一般管理部門など細かな部分で経費削減に 努めるが、コスト削減策の多くは周辺分野 →本質的な問題解決ではない。
日産の再生 ・ルノーとの提携により、COO(最高経営執行s者)としてルノーよりカルロス・ゴーン氏を迎え 日産リバイバルプラン(NRP)を進める。 ・コスト削減のための優先順位を明確にし、 計画を中央集権化、また、実施に関しては明確な責任系統を確立する。
NRPの作成 • クロスファンクショナルチーム(CFT)を設立し、マネジメント上層部からでなく、現状を改善したいと考える人材を集める。 • CFTとマネジメントは適度なバランスをとり、コミュニケーションを増やす。 →ゴーン氏のCOO就任2週間後には10のCFTを作り、共通の目標として 「事業の発展・収益改善・コスト削減」を目標とする計画を提案すること。とした。
日産リバイバルプラン ・<コミットメント>(必達目標) 1.2001年3月31日までに連結当期利益の 黒字化を達成。 2.2003年3月31日までに連結売上高営業利 益率4.5%以上を達成 3.2003年3月31日までに自動車事業の連結 実質有利子負債1兆4000億円を7000億円 に削減。
日産リバイバルプラン <主要リストラ策> 4.2003年3月31日までに総労働力の14%にあたる2万1000人を削減。 5.2002年3月31日までに、車両組立工場3ヶ所とパワートレイン工場2ヶ所を閉鎖し、国内余剰生産能力の30%を削減。車両プラットフォームの数を現行の24から15に削減。 6.2002年3月31日までに購買コストの20%を削減し、サプライヤー数を現行の1145社から600社以下に削減。 7. ノンコア・ビジネス系列会社の株式および資産の売却。
NRPの内容 過剰生産能力の削減 ・日産の社内製造コストの50%が固定費 1999年度国内車両生産能力は最低240万台。 実際生産台数は128万台→稼働率約50% ・CFTの提案により車両組立工場3ヶ所とパワートレイン工場2ヶ所の閉鎖を決め、 2002年までに稼働率80%を目指す。 固定費の削減でコスト競争力を強化する。
NRPの内容 高コスト体質の解消 ・部品購買コストが他社と比べて遥かに高かった。 →サプライヤーの数が多すぎたため。数を絞ることによって一社あたりの購買量を増やし、単価を下げる。 ・サプライヤーをリストアップし、今後どれだけコストを改善できるか一社ごとに検討する。 ・長期の視点では、サプライヤーも日産が再建することにより生き残りを図ることができる。 ・2002年までに購買コスト20%削減を目標とする。
NRPの成果 • 3つのコミットメントは全て当初の目標より一年前倒しで達成された。 • 連結当期利益は1年目で達成され、税引き後純利益は3,311億円となり、2001年度には過去最高の3,723億円を記録。 • 連結売上高営業利益率は1年目に4.75%に達し、2001年度には7.9%となる。 • 自動車事業の連結実質有利子負債は2001年度末に4,317億円にまで削減された。
プラン180 • NRPの成功により、再生のためのスタートラインに立ったと考え、続けてプラン180を作成。 • 重点を成長、収益性、負債削減に置く。 • 「1」はグローバルで販売台数の100万台増し。 「8」は営業利益率8%の達成。 「0」は自動車事業実質有利子負債ゼロを意味する
ルノー・日産提携による購買の効果 • 2001年両社はシナジー効果実現の一環として、ルノーニッサンパーチェシングオーガニゼーション (RNPO)を設立。 • 購買分野における品質、コスト、デリバリーに関して最も高い競争力を獲得すること、及び、サプライヤーに関連する事項を世界規模でマネジメントすることを目的とする。 • 共同購買の規模(金額)を、2002年に年間約150億USドルから210億USドルへと引き上げることを決定した。
部品メーカーの現状 • 今後新しい技術開発の進む自動車業界において、部品メーカーに求められる技術力、開発力はより高次元のものになる。高い技術を持つメーカーは系列を越えて必要とされる。 • 多くの部品メーカーは特定完成車メーカーの系列下にあるために、その完成車メーカーの動向も部品メーカーには死活問題になる。 • 完成車メーカーの購買コスト削減の動きによって体力のない部品メーカーは淘汰される。
部品メーカーと完成車メーカーの関係 • 製品自体が汎用性を持たないうえ、完成車メーカーの徹底的な値下げ要求により、部品メーカーには量産効果によるコスト削減が最も重要。 • 完成車メーカーとの関係を強化することにより、単独受注を狙う。 →完成車メーカーにとっては、単価を下げられ、計画的な安定供給が望めるメリットはあるが、リスクも高い。
モジュール化の流れ • モジュール化とは? 複数の部品をあらかじめ一体化しておき、生産ラインでこれを組み立てる、という方式。モジュール化を極限まで進めると、完成車メーカーのコスト削減と組み立て削減効果は著しい。
モジュール化で進む系列崩壊の流れ • モジュール部品を組み立てるのは部品メーカーでありその役割は大きくなるが、完成車メーカーの力が失われ、生産ノウハウの流出や技術の空洞化が懸念される。 • 品質の内容確認が不可能であり、原価構造が不明確なため、完成車メーカーは価格の引き下げ効果が望めない。 →全てを把握する1次部品メーカーが力を付け、系列外と交渉する可能性もある。