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- 北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる -. 前章ではおもに赤道波の 存在性 (等温静止大気中に波として存在可能であること、すなわち大気を強制したときに,条件によっては 鉛直に伝播可能であること )を議論した。 この講義では、内部波が成層圏に行って 何かをすること に興味がある.一方、外部波は強制したところに主に存在する。. 第3章 波の生成や シアー中の重力波について.
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-北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる- 前章ではおもに赤道波の存在性(等温静止大気中に波として存在可能であること、すなわち大気を強制したときに,条件によっては鉛直に伝播可能であること)を議論した。 この講義では、内部波が成層圏に行って何かをすることに興味がある.一方、外部波は強制したところに主に存在する。 第3章 波の生成や シアー中の重力波について 大気にはダンピングが存在するので、常に強制がないとそのうち波動はなくなってしまう。実際には常に波動が観測されるので、何か生成のメカニズムが存在するはずである。そこでこの章の一部では、この問題を議論する。また、シアーの中の波動の振る舞いについても述べておく。 対流と重力波との関係: Sato et al. ( 1994, J. G. R. ) 対流圏の対流(夏7月の日本、35N, 136Eでの観測)と成層圏擾乱が結びついているようにも見える。つながっていない時もある。対流が強いと、成層圏に影響をあたえるのだろう。 別例:台風 Kelly ( 1987, 10月)とからんだ重力波(Sato, 1993, J. Atmos. Sci. ) この図は南北風が卓越した、水平波長が600kmで鉛直波長が6kmの重力波らしい。周期は地面にたいして6時間程度の重力波(右図の9に対応)。
高分解能のGCM(分解能は100km程度)に現れた重力波(右):中緯度の重力波、左は観測で見られるもの、構造がよく似ている。ただし、生成論は未定(地衡風調節?)。Sato et al., 1999, J. Atmos. Sci.
前章で東西波数 k=1の15日程度の下部成層圏 Kelvin波の話し−>それの一番簡単な励起の問題です. 前章GMSのスペクトル図から想像されるように −> 雨の降りかたが振動している。 そこで,熱帯対流圏で熱的な強制が時間的に振動すれば,その周りに波動として伝わることが出来るであろう. 熱帯対流圏のところで以下の式のようなHeatingを考える.(Holton, 1972, J. Atmos. Sci.) 3−1:赤道ケルビン波の生成について ここで はHeatingの南北,鉛直構造を表し,K/dayの大きさ, は経度, , は与えられたHeatingの振動数である.Heating Q をフ−リエ分解する. 対流圏で局所的な関数形の熱強制を与えているので、図で対流圏は結構複雑である. ここでは,熱帯成層圏の応答を考えているので,前に述べた,観測されているKelvin波を想定して,周期は15日に決め,南北対称なHeatingの形を与える.mean zonal wind の profile もある形に仮定.線型の方程式を解いて応答をみる. 対流圏で Heat sourceを振動させると成層圏で重力波(Kelvin波)が鉛直に伝播している。 この場合波数1が卓越している.長波の分散式で(1/4H2は無視): Heatingの鉛直構造(実線) c=ω/k=2*3.14/1.3x106(15日)/(2*3.14/4x107)=30m/s m=N/c=2x10-2/30=2/3x10-3、Lz=2x3.14x3/2x103 この波の鉛直波長を見積もると約10kmとなる.図の鉛直構造の波長とそれほど大差はない.
より現実的な(GCM中)Thermal Heatingの例:波数1で東に伝播する成分。経度0での時間変動、緯度10度の平均、 Manzini and Hamilton (1997, J. Atmos. Sci.) 、このモデルは湿潤対流調節で対流を起こしている GCMのHeatingを与えて、東西平均風のある線形的な応答をみてみた。GCMの結果との比較。波数1成分の時間−高度断面図、上図はGCMの結果で、下図が線形モデルの結果(線形の方が応答が大きい、自己調節(例えば壊れたりする)ができないからであろう)。基本的な応答はよく似ている。
風が振動 -->対応してOnoze振動に現れたk=1変動:Kawamoto et al. (1997,J. M. S. J.) 30mb, equator上,の時間-経度断面図(1979のデータ)、時間とともに東に伝播している。周期は15日くらい。 しかし,どうして時間的に振動する強制が大気の中に存在するのでしょうか?−>対流圏がパタパタしている−>卓越振動数はどうして決まるのだろう? Fovell et al., 1992, JASでは対流をexplicitに表現したモデル--> updraft, downdraftによる力学的なforcingによる(対流圏でwが時間的に振動)重力波生成を考えている。 Onozeも下部成層圏では のように線形的に変動するのであろう。ここで、χはオゾンのmixing ratioである。
前章 ( Takayabu, 1994, J. M. S. J )でみたように、 この図は赤道でのGMSデータのスペクトル解析と赤道波の分散式(線であらわされている)をあらわしている。すべてがのってはいないが、分散にのっている部分がある。 Wave-CISK(2種条件不安定)による生成論境界層topの上昇流に比例して熱をだし、波の位相速度を小さくすること。 のような熱力学の式を仮定して問題を解く.あとは普通の線形運動方程式を使い、線形の固有値問題を解く (Hayashi, 1970, JMSJ)。 Kelvin波等が不安定になる.3層モデルで固有値問題をとく。下の図は2つのη の鉛直分布と差分化、右図はη1=0としてη2の値を変化したとき、それにともなって固有値 c が変化することを示している。heatingをきめるηを変化させることで、位相速度cを変化させて、比較的ゆっくりした波の速度(10m/s程度)を出すことができる(Takahashi, 1987, J. M. S. J)。ある部分はこんなもので生成か? 問題点−>結局熱の鉛直分布を決めるパラメ−タ η にdep.する. 対応する固有値は √gh=c=14m/s(h=20m)の浅い波の赤道波に対応している。鉛直波長は √gh=N/m →14/1x10-2 x2x3.14->9km(鉛直波長) 半波長では5kmでかなり鉛直スケールが小さい波に対応している。 ηによっていろいろの位相速度の波を生成は可能ではあるが
前書き:高さに依存する風での伝播の問題−>流れの不安定による生成問題はあとで議論。前書き:高さに依存する風での伝播の問題−>流れの不安定による生成問題はあとで議論。 基本的な流れ(一般風?)の中の内部重力波についてここでは考察する。簡単には例えば、東西方向に平均をした東西風を考えれば最も簡単な一般風とみなせる。それは実際には時間変動をしている(例えば太陽放射が時間的に変っていたり、非線形のため)がここではその事は考えない。 3—2:シアー流中の重力波 するとその東西風は高さと南北方向の関数である。しかもそれは地衡風バランスと静力学平衡のバランスから、温度も高さと南北方向の関数でもある。 ここでは簡単のために東西風が高さのみの関数と仮定する。さらに温度場は話しの簡単化のために等温大気と仮定する。すなわち速度場として、前章の拡張として以下の形を仮定する。 (1) 1月 7月 この様な基本状態に prime のついた摂動(それを内部重力波とする)がつけ加わり、その摂動の振幅が小さいと仮定して以前と同様にして線形方程式を導く。長波で東西・鉛直の2次元運動の仮定をおく。 以下の話しに必要なため、運動量と熱力学の式に線形の小さな damping を入れておく。 1:特異点( critical level と呼ばれる)の処理のため 2:実際はいつもdampingが存在−これを簡単に一次近似で表す. 3:Newton冷却は現実的であろう. すると (2) 西風 東風 東風 西風 (3) (4) (5) 北半球 (6)
ここで prime の記号は省略した。前章との違いは東西方向の運動方程式において基本流による移流の項、及び基本流の鉛直シアーの項がつけ加わったこと、熱力学の方程式に基本流による温位の水平移流の項がつけ加わったことである。さらに東西方向の運動方程式と熱力学の方程式に線形の damping がつけ加わっている。 運動方程式での linear damping をRayleigh friction( a をRayleigh friction coefficient )、熱力学での linear damping をNewtonian cooling と呼ぶ。運動方程式の中の線形減衰は物理的におかしいが(運動量がその場で消えてなくなる?)簡単なので(微分の階数が上がらないので)よく使われる。物理的には運動量は拡散するので例えば (7) と思えばよいであろう。ここで は鉛直方向の、渦による(一般に考えている擾乱のスケールよりずっと小さい)拡散係数で、m は波の鉛直波数を示す。 Newtonian coolingについては成層圏ではいい近似で成り立っている。とにかく a を一定として以下議論を進めよう。またRayleigh frictionとNewtonian coolingの係数が同じというのもおかしいのですが(変えるとおもしろいことも起こる、cf. Andrew and McIntyre ( 1976, J. Atmos. Sci. ); Takahashi and Uryu ( 1981, J. M. S. J. )。 ここでこれまでと同様に (8) の形を仮定する。ここで c は波の東西方向の位相速度であり、ω= c k である。damping の効果は (9) のように複素数の位相速度を導入して使い分ければよい。(8) を使うと以下のような方程式が導かれる。 (10) non-Hydroの場合は { } の中に −k2 がつく。 この式と前章で求めた式とを比較してみると中括弧の第2項の部分がつけ加わっている。もちろん第一項の u0 は高さの関数である。上式は解析的には解けないので、普通は数値的に解くことになる。 u0が高さの一次関数のときは、解は合流型の超幾何関数で表される(例えば Rosenthal and Lindzen, 1983 参照)。鉛直に伝播するとき、どんな風に振舞うかがここでの問題である。
ここで b は無次元のパラメータで ある。いま波の位相速度 c が u0より速いとしよう。 解き方の1例である: あとの評価(振幅の2次のorder)のときに使うであろうから 適当な物理数学の教科書を見てみる。寺沢寛一編の’自然科学者のための数学概論(応用編)’を眺めてみよう。するとまず基本場 u0(z) は緩やかに変化していることが必要とかいてある。ということで 3—3:WKB近似 u0(z) c z このとき上向きに伝わる波を考える。前章の群速度の議論を思い出して とおけそうである。そうすると(10) は以下のようになる。 (11) の形の解を選ぶことにする。 ここで u0が一定ならば前章と同じになる。しかしいまは u0が高さの関数となる。前章とのつながりから さらにWKB近似解を求めるために、教科書に従って無次元のパラメータを導入して(11)を以下のようにかくことにする。 (12) 上式を(12)に代入すると (13)
となる。b2 のみの項から第0近似を取り出せば だから(前と同様、以下 m は正を選ぶことにする) となる。次の order に高めるにはbが大きいとして を(13)に代入して、 (14) b2の項は前と同じ。b 項として (15) 上式に0次の項を代入すると だから (16) 最終的に b=1 とおいて (17) が求めるWKB近似解である。A は境界条件から求められる。m1/2 のように振幅が変化する事は大事である. 臨界層(u0=c) 大 w は小、 一方 u は大になる 赤道波にたいしては、Lindzen, 1971, JASを参照のこと、式の変形がめんどうくさい.
Eckermann and Preusse, 1999, Science 重力波の分散式から、山でc=0とおき鉛直波長をみつもる。上図からU=20m/sの風で、数百kmの長波として(アンデスで長いであろう) 衛星をつかった山岳波の観測について: 程度 測った鉛直波長 theory CRISTAの観測、 1994年の11月
熱力学の式から 程度の温度にはなる(対流圏のN2を使ってある) 前図をみると30km で急速に波の振幅が小さくなっている?擾乱の風速は 山岳波のbreaking? 山岳波の PE(これはモデル結果)、観測と類似のシグナルが見える。 観測による温度振幅の分布
(10) 3—4:臨界層( Critical Level ) での線形重力波の振舞い ここでちょっと寄り道(閑話休題、ちょっと数学的な話し、重要なので少しは述べないと)をします。それは特異点の話しです。線形の critical level の話しは何とか理解出来るから。非線形の話しはまあ数学の得意な人に任せましょう。数学が好きでそういうことをやってみたい人に例えば Kelly and Maslowe (1970)など 方程式 (10) まで戻りましょう。基本流と重力波の位相速度が同じになったらどうなるかという話しです。この問題をはじめて解いたのは Booker and Bretherton ( 1967, J. Fluid )です。ここではあとの話しに必要なさわりのみ。 ここではCritical level を z=0 におきます。 一定の風 話しをわかり易くするために基本流の設定をしておきます。 c があってもいいとしておきます。 z < 0 で位相速度 c は基本流より速く動き、z > 0で基本流の方が速く動いているとします。すなわち z<0 で波は相対的に東に、z > 0で波は西に伝播しているとします(左図のような状況)。ここで z = 0 の近傍のみを議論する。このとき基本流は 高さの1次関数の基本風 U=c -> 山 上のような状況を考えます。 t<0 の時 w=0 t>0 w=a coskx z=山のところで と書かれる。ここでいまの場合 du0 / dz > 0 である。すると、z=0 近傍において(10)式は次のようになる。 こんな問題をきちんと解く。高さの1次関数なら第1種のmodified Bessel functionで表現できる。 時間的にどんな変化をするか? —> Laplace変換なんかして、詳しいことはBooker and Brethertonを見てください。
ここで基本流の二階微分の項は落とした。z=0 の近傍では中括弧の第一項が大きいのでその項のみを残すと方程式は以下のようになる。 (18) この方程式はオイラー型の方程式(の特別な形)ということで、 (19) とおいてみる。これを(18)に代入して、 (20) <—不安定は別章 ここで重要な無次元量 Richardson 数(Ri と書く)は以下のように定義される。(21) なぜ重要かというとRi < 1 / 4 のとき流れが不安定となり大気の中に擾乱が発生する(可能性があると書いた方が正確か)からである。不安定のための必要条件が積分定理から導かれるが、ここでは述べない。積分定理の基本論文は Miles (1961)とHoward(1961)である。興味のある方はお読み下さい。応用数学の世界です。 とにかくRi を導入すると、(19)の解は (22) 今 z が非常に大きい所で一定の風が吹いているとする(図参照)。 ここでおおざっぱに Ri を評価しておく。N2 は成層圏で 4x10-4程度(第2章の図参照)。shear は50kmで100ms—1とすると、Ri = 100 になる。このように擾乱のない状況ではRi は1/4 に比べて非常に大きい。そこでそのような仮定をしておく。すると解は (23) そして基本流に対しての波の位相速度の関係(基本流が位相速度より速い)が z >0 近傍と同じとする。そのとき波の鉛直波長に比べスケール・ハイトが非常に大きいならば、 m>0 に選んでいるから、 となる。書き直すと ここで である。これからの議論はRi が十分に大きいときのみに限る —>(波が吸収するはなし) だから の形が上向きの波であることがわかる。 これを、Critical level近傍の波につなげる。 Critical level
別の見方:波のエネルギーfluxとしてみる別の見方:波のエネルギーfluxとしてみる z軸をマイナスの方へ移動させるとき、位相の変化は−iπ(図) である。なぜなら、du0 / dz > 0 なので(分岐点はz=0の上になる)、 z の実軸は分岐点のしたを動く。だからz < 0 で また u0-c>0だからpとwは正の相関を持つ -> pwはエネルギーのむきを表すから、これは上向きの波である。 を選ぶべきであるので、解 (23) は z < 0 で 今は風に対して西に動く。 (critical levelの近くで m〜N/zなので、 wがWKB的とすれば、m 1/2に逆比例だからwはz 1/2に比例して小さくなる ) となる。ここで critical level の上下で振幅の因子が exp(πμ) だけ異なることに注意(この差はかなり大きい)。Critical level の下の振幅と比較してCritical level の上の振幅はほとんどゼロになる。さらなる詳しい議論は原論文を読んで頂くとして(例えば時間的にどんなふうに変化するか?)ここでは先に進むことにする。参考として図にCritical level 近傍の鉛直流の振舞い、および実験室で得られたCritical level における波の吸収(Critical level の上で波がなくなっている)の写真をのせておこう(図)。 波の形は exp (ikx −ikct+imz) だから(27)において z > 0 の解として (24) を選ぶのが都合がいい。z>0のとき増加する位相の変化の仕方が同じである。 z 次にこの解をどのように z < 0 につなげばよいか? z = 0 が Branch Point になっています。うまくこれを処理するために大気はいつも粘性等があるためにdamping が存在することをつかう。そのためにわざわざ (2), (5) でlinear dampingなるものを導入していたのでした。これを導入することにより、z = 0 の Branch Point をすこしずらすことを考えます。(9)の複素数の位相速度を導入すると、Critical point は Critical Level 近傍の重力波(W、鉛直流)の振舞い。松野、島崎(1981)より。 を満足しますから、分岐点が以下のようになる(虚軸の正の方になる)。 (25) z軸
図は実験室でのCritical Level 近傍の重力波の振舞い。Thorpe(1981) , 引用は Gillの教科書(1982)より。 計算例: 線形の範囲で:吸収とover-reflection (Riが1/4以上では波の吸収、1/4以下では不安定と絡んでover-reflection(過剰反射)が起こる ) 数値的な方法を使ってCritical level の近くの解を数値的に求めてみた。2つの基本状態を以下のように仮定する。 高度 1つはz=0(地面)から20kmまでは20msー1の風、次に20kmから40kmまでは風はゆっくり減少して40kmで−20msー1になる(このときRi = 100 )、40kmから50kmまでは−20msー1とする。もう一つの風のプロフィールはz=0から20kmまでは20msー1の風、次にすぐ次の差分点なる20.1kmから50kmまでは−20msー1とする(補足図参照、数値計算の差分間隔は100mである)。だからこのとき Critical level でRi = 0.0025 である。山の高さは100m、山の波長は200kmと仮定して計算をした。そのときのx=0の場所の鉛直流の高さ分布を示したのが次ページの図aとbである。前者は波が吸収されている。前図と同じ構造をしている。一方後者はCritical level から波が放射している。 図a:Critical level absorption の例。横軸は高度、縦軸はwの振幅を表す;波が臨界層で吸収されている。 図b:K-Hタイプの風のときの波の振舞い。縦軸が高度、風のshearが大きい時、波は成長している。