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スポーツスケジューリング問題 ~1993 年 J リーグの再スケジューリング ~. 文教大学 情報学部 経営情報学科 「シミュレーション」 2000 年 11 月 24 日 東京大学 宮代 隆平. 発表の概要. 1993 年 J リーグのスケジュールを 数理的手法を用いて改善 スポーツスケジューリング問題とは? 1993 年 J リーグのスケジュールと,その問題点 数理的手法によるスケジュールの改善過程&結果. スポーツスケジューリング問題とは?. スポーツ競技(サッカー,バスケ,相撲, … )の “質の良い” スケジュールを作成する問題
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スポーツスケジューリング問題~1993年Jリーグの再スケジューリング~スポーツスケジューリング問題~1993年Jリーグの再スケジューリング~ 文教大学 情報学部 経営情報学科 「シミュレーション」 2000年11月24日 東京大学 宮代 隆平
発表の概要 • 1993年Jリーグのスケジュールを • 数理的手法を用いて改善 • スポーツスケジューリング問題とは? • 1993年Jリーグのスケジュールと,その問題点 • 数理的手法によるスケジュールの改善過程&結果
スポーツスケジューリング問題とは? • スポーツ競技(サッカー,バスケ,相撲,…)の • “質の良い” スケジュールを作成する問題 • → “良い(悪い)” スケジュールとは? • ・ 大相撲で,12日目に優勝力士が決まってしまう • → 残りは消化取組になり,観客動員数減少 • ・ ダイエー対巨人の日本シリーズ(7回戦) • ただし,1~3戦が福岡,4~7戦が東京 → 不公平
スケジュール改善の例Ⅰ • 5チームの総当りリーグ戦 • チームA,Bが優勝候補とすると…(*は休み) • 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 • A:B * C D E A:E D * C B • B:A C D E * B:D * C E A • C:E B A * D ⇒ C:* E BA D • D:* E B A C D:B A E * C • E:C D * B A E:A C D B *
スケジュールに求められる要素 • スケジュールを決定する時考慮すべき条件 • 試合の日時,競技場が使用可能か, • 移動距離,本拠地 or 遠征,天気, • TV放映,観客の満足度,チーム間の公平性, • 各チームの強さ,… • 最終目的は? • 費用削減,人気向上,興行収入増加,視聴率up,…
スポーツスケジューリングの現状 • 現在,スポーツスケジューリングは • ほとんど手作業で行われているのが現状 • 10チームの総当りリーグ戦の場合, • 最低限の見積もりとして • 9!(≒36万)通り以上のスケジュールが存在する • → スケジューリングは適当でも良い?
スポーツスケジューリングの重要性 • ・ 移動距離減少をはかった問題では • 手作業によるスケジュールと比較して5~30%減少 • ・ ある種のスポーツではスケジュールが試合結果に • 大きな影響を与える • → 悪いスケジュールでは競技自体の人気も下落 • ・ 現在はTV中継の時代(放映料,視聴率)
スケジュール改善の例Ⅱ • 5チームによる総当りリーグ戦 • ただし,コートが一つしかない • → 特定のチームが連続して試合することを避ける • 1234567891012345678910 • AAECEEBEDD ⇒ CBABABDACA • BCDDACCBBA DECDECEBED • 連戦が消失!→ 実は簡単??
スポーツスケジューリングの難しさ • 1 2 3 4 5 6 7 8 9 • A:J F G C H B E • B:I G D F E A C10チームのリーグ戦 • C:H D E A F G B6日目まで作成済み • D:G C B J I E 7日目にA - E,B - Cの • E:F J C H B D A 対戦を組みたい • F:E A I B C H • G:D B A I J C • H:C I J E A F • I:B H F G D J • J:A E H D G I
スポーツスケジューリングの難しさ • 1 2 3 4 5 6 7 8 9 • A:J F G C H B E • B:I G D F E A C10チームのリーグ戦 • C:H D E A F G B6日目まで作成済み • D:G C B J I E F7日目にA - E,B - Cの • E:F J C H B D A 対戦を組みたい • F:E A I B C H D • G:D B A I J C • H:C I J E A F • I:B H F G D J • J:A E H D G I
スポーツスケジューリングの難しさ • 1 2 3 4 5 6 7 8 9 • A:J F G C H B E • B:I G D F E A C10チームのリーグ戦 • C:H D E A F G B6日目まで作成済み • D:G C B J I E F 7日目にA - E,B - Cの • E:F J C H B D A 対戦を組みたい • F:E A I B C H D • G:D B A I J C H • H:C I J E A F G • I:B H F G D J • J:A E H D G I
スポーツスケジューリングの難しさ • 1 2 3 4 5 6 7 8 9 • A:J F G C H B E • B:I G D F E A C10チームのリーグ戦 • C:H D E A F G B6日目まで作成済み • D:G C B J I E F 7日目にA - E,B - Cの • E:F J C H B D A 対戦を組みたい • F:E A I B C H D • G:D B A I J C H • H:C I J E A F G • I:B H F G D J J ← 既に対戦済! • J:A E H D G I I
スポーツスケジューリングの難しさ • 1 2 3 4 5 6 7 8 9 • A:J F G C H B E • B:I G D F E A ↓ 7日目にA - Eの対戦 • C:H D E A F G I↓ • D:G C B J I E Cの相手は I のみ • E:F J C H B D (B ー Cは不可能) • F:E A I B C H • G:D B A I J C 人間の目で判断するのは • H:C I J E A F 非常に難しい! • I:B H F G D J • J:A E H D G I
手作業での問題点 • 手作業では… • ・ 全てのスケジュールを考慮するのは無理! • ・ 本当に最適?公平? • ・ この条件下でスケジュールが作成可能? • ・ 作成時間,各方面との調整,…(Jリーグは半年程度) • ・ 予定していた日に競技場が使えなくなった! • → 数理的手法の必要性
数理的手法の必要性 • 数理的手法を用いれば… • ・ 制約を満たすスケジュールが短時間で作成可能 • ・ 公平性,最適性が明らか • ・ 最適化問題としてモデル化することにより, • 条件の変化にも容易に対応可能 • → 1993年Jリーグのスケジュールへ
1993年Jリーグの概略 • Jリーグ開幕の年,サッカーブーム • 10チームによる二重総当りリーグ戦(後述) • 第1節は土曜日,以降水曜日,土曜日,…(全18節) • 5月15日(土)~7月14日(水) • チーム略号 K:鹿島アントラーズ,V:ヴェルディ川崎, • M:横浜マリノス,E:清水エスパルス,J:ジェフ市原, • S:サンフレッチェ広島,F:横浜フリューゲルス,G:ガンバ大阪, • N:名古屋グランパス, R:浦和レッズ
1993年スケジュールのミラーリング • 1993年Jリーグのスケジュールにおいて, • ミラーリングの対応関係は • (1,11),(2,10),(3,18),(4,12),(5,13), • (6,14),(7,15),(8,16),(9,17) • → 理由は不明だが,最小対戦間隔は • 十分に開いている(中7節)
1993年スケジュールの分析 • 本拠地での試合をh(ホーム) • 遠征先での試合をa(アウェイ)と表記 • 10チームの二重総当りリーグ戦ではh,aが9回ずつ • ・ 各チームとも土曜日に4または5個のh • (土曜日は観客動員数が水曜日の1.3倍) • ・ 各チームとも前半(第1~9節)までに4または5個のh • → この二点に関しては公平
1993年スケジュールの問題点 • 一般にaの連続は嫌われる • → スケジュール中,チームKの第9,10,11節のみ • aが3連続!(他チームにはない) • 公平性? • また,土曜日のスケジュールのみを抜き出すと… • → 観客にとって親切でない!
1993年スケジュールの問題点 • ・ チームKのみ,3連続aがある • ・ 土曜日(水曜日)のみを考えると, • いくつかのチームに関して • 本拠地での試合間隔が開きすぎ • ・ 他にも様々な問題点 • (本拠地が同一のMとFを考慮していない,…) • → 数理的手法を用いて改善を試みる!
全列挙法 • 全列挙して,最適なスケジュールを選択? • → 10チームの二重総当りリーグ戦 • 最低限のスケジュール総数は18!(≒6400兆) • 1秒間に1億個のスケジュールが作れる • 仮想計算機で 2年 • ただ計算機を用いてもダメ! • → 当時論文で提案されていた方法を改良して使用
数理的手法の参考文献 • 参考文献 • G. L. Nemhauser and M. A. Trick, • “Scheduling a Major College Basketball Conference,” • Operations Research, 46(1998), 1‐8. • 実際に,米の大学バスケ対抗戦(9チーム)の • スケジューリングを行った論文 • → 数理的手法の説明
パターン • パターンセットの横一行だけを取り出した文字列 • aaa,aah,aha,ahh,haa,hah,hha,hhh • それぞれのチームはこの文字列通り移動する • パターン → パターンセット → スケジュール → 最適解 • ↑ ↑ ↑ • 制約条件 制約条件 制約条件
パターンセット → スケジュール • 一般に,1つのパターンセットからは… • ・ 多数のスケジュールが生成される • ・ スケジュールが全く生成できない → 不可能な例 • 1 2 3 4 5 (6チーム) • a h h a h • a h a a h 与えられたパターンセットに, • a h a h h各チームを割り当てることが可能? • h a a h a (=スケジュールを生成) • h a h h a → 整数計画問題として定式化 • h a h a a
整数計画問題としての定式化 • 1 2 3 • α:h a h= 1: α→γが2日目に対戦する • β:h a a = 0: α→γが2日目に対戦しない • γ:a h h 対戦可能な変数のみを定義 • δ:a h a 全ての変数は0 - 1整数変数 • 基本的な制約条件 • (βとγが必ず1回対戦) • (αは3日目に必ず1試合行う)
整数計画問題の例 • x121+x141+x321+x341+x212+x242+x312+x342+x213+x233+x413+x433=6, • x121+x212+x213=1, x312=1, x141+x413=1, • x321+x233=1, x242=1, x341+x342+x433=1, 1 2 3 • x121+x141=1, x212+x312=1, x213+x413=1, 1:a h h • x121+x321=1, x212+x242=1, x213+x233=1, 2:h a a • x321+x341=1, x312+x342=1, x233+x433=1, 3:a a h • x141+x341=1, x242+x342=1, x413+x433=1, 4:h h a • ∀x∈{0, 1}. (x の添え字はa,h,日の順)
整数計画問題について • 定式化した整数計画問題(今回の場合,225変数)は • ソフトウェアに解かせる • 問題に解がある = パターンセットにチーム割当可能 • 問題が不能 = パターンセットにチーム割当不可能 • 制約条件が少ないと時間がかかり,また多数の解 • 制約条件が多すぎると矛盾することが多い
スケジュールの作成 • 元のスケジュールより良いものを作りたい! • 問題点の復習 • ・ チームKのみ,3連続aがある • ・ 土曜日を考えると,いくつかのチームに関し • 本拠地での試合間隔が開きすぎ • ・ 他にも様々な問題点 • (本拠地が同一のMとFを考慮していない,…)
前提条件 • ・ 元のスケジュールより劣ったものは作らない(目標) • ・ (変則的な)ミラーリングは同じとする • ・ 開幕戦(第1節)と最終戦(第18節,第3節に対応)は • 元のスケジュールと全く同じにする • → スケジュール作成の実験開始
パターン生成 • 1993年はチーム数が10→ パターンの長さは9 • aaaaaaaaa,aaaaaaaah,…,hhhhhhhhh(512個) • ・ 3連続a,3連続hはだめ • ・ 土曜日には4または5個のh • ・ 前半戦に4または5個のh • ・ 土曜(水曜)だけ注目したとき,3連続a(h)はだめ • → 24個のパターンが残った
24個の許容パターン • aahhaahha, aahhahhaa, ahaahaahh, • ahaahahha, ahaahhaah, ahaahhaha, • ahaahahha, ahaahhaah, ahaahhaha, • ahahhahha, ahahhaaha, ahahhaahh, • haahaahha, haahahhah, hahaahaah, • hahaahhaa, hahaahhah, hahhaahaa, • hahhaahah, hahhaahha, hahhahaah, • hahhahhaa, hhaahaahh, hhaahhaah
パターンからパターンセットへ • 24個のパターンを10個組み合わせて, • パターンセットを作る → 24C10≒200万 • その中で,任意の日についてaとhが等しい必要有り • aah • ahh→ 200万個中,1382個が合格 • hah(計算時間5分) • hha • ↑対戦不可能!
思考錯誤 • パターンセット1382個は候補が多すぎる! • 「第1,2節,第17,18節にaaを禁止」 • (旧スケジュールは合計2チーム) • パターンセットがただ1個に!! • しかし,スケジュール割当て不可能であった… • → (やり直し)
パターンセットを減らす • パターンセット1382個のうち, • 実際に(1つ以上の)スケジュールを生成できるもの? • 整数計画問題に定式化して判定(1382問) • → 208個が合格(計算時間約30分) • 1つのパターンセットからは, • 多数のスケジュールが生成可能.(まだまだ多い)
条件の適用 • 「第1,2節,第17,18節のaaをできるだけ避ける」 • (旧スケジュールは合計2チーム) • この条件を適用すると…,パターンセットが7個に! • 参考文献ではこの段階で17個 → 24時間 • 計算時間の見積り 24*10*7/17 = 100時間 • まだパターンセットが多い!(ここでしばらく挫折)
新たな制約条件の導入 • チームMとチームFは本拠地が同一 • ☆同時にホームゲームは戦えない! • 正反対のパターンが必要 • (例) • チームM:ahaahhaah • チームF:hahhaahha • → さらに,MとFが対戦する日を考える
M-F条件の導入 • チームM:ahaahhaah • チームF:hahhaahha • チームM,Fが上のパターンである時, • MとFが戦えるのは?(本拠地は同一) • → 本拠地が3連続しないことを考えると • チームM:ahaahhaFh 対戦可能なのは • チームF:hahhaahMa ← ここだけ!
パターンセットの決定 • ・ M-F条件 • ・ 第1節と第18節を旧スケジュールと同一にする • 以上の条件を考慮した結果, • パターンセットは(運良く)1個に! • さらに,いくつかの試合が固定された • → ここまでの状況
さらなる工夫 • 前頁のパターンセットを整数計画問題として, • 全ての解(=スケジュール)を求めると… • → 時間がかかりすぎていつ終わるか不明 • チームR,J,S,Gの割り当ては4通り • → 割り当てたスケジュールを解く! • (子問題に分割)